ポルシェと共同開発したV6ツインターボを積む“4ドアクーペ”のRSモデルに試乗。ライバルとは少々異なるRSモデルらしい仕立てとは?
RSモデル25周年を飾る“4ドアクーペ”
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アウディの4ドアクーペ、A5スポーツバックをベースとした初のRSモデルが、RS5スポーツバックだ。
RSモデルとは、R8をはじめアウディのレースカーやスポーツモデル開発拠点であるアウディスポーツGmbHが手掛ける高性能シリーズのこと。メルセデス・ベンツにとってのAMG、BMWにとってのMに該当するものだ。そして、RS5スポーツバックは1994年に初めてのRSモデルが誕生して以来、25周年を迎えるタイミングで上陸した記念すべきモデルだった(国内発売は2019年8月末)。
本来であればもう少し早いタイミングでの導入が予定されていたが、欧州では2018年後半から排出ガス試験が、「WLTP(乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法)」へと移行が進む中、ドイツメーカー各社は対応にとても苦戦していた。アウディもその例にもれず、製造、販売スケジュールに影響が及び、日本への導入も遅れてしまったようだ。
パワートレインの基本構成はひとあし先に日本に導入されたRS5クーペと同一のものだ。ポルシェと共同開発したという2.9リッターV6ツインターボエンジンを搭載(ポルシェではチューニングをかえてマカンターボなどに搭載される)する。最高出力は450ps、最大トルクは600Nmを発揮する。8速ティプトロニックトランスミッションと駆動方式はもちろんクワトロフルタイム4WDシステムだ。
エクステリアでは、鮮やかなグリーンメタリックが目をひく。全幅はベースモデル比で15mm拡大し、アウディ・クワトロをモチーフにしたブリスターフェンダーが特徴だ。インテリアはブラック基調で、ファインナッパレザーを用いた専用のスポーツシートなど、派手な演出がされているというよりは、上質で高級な雰囲気を漂わせている。もちろんインフォテインメントシステムも最新のもので、メーターパネル内に設置された12.3インチのTFT液晶ディスプレイに様々な情報を表示できるアウディバーチャルコックピットを装備する。また、衝突被害軽減セーフティシステムをはじめ、ADAS(先進運転支援システム)を搭載している。このあたりはもはやスポーツモデルでも必須アイテムだ。
コンフォートモードならクーペよりマイルド
スターターボタンを押すとV6エンジンは、重厚な音を放ちながら始動する。車両重量は2ドアクーペ比で50kg増というが、600Nmものトルクを1900回転から発揮するため重さをものともせず加速する。逆に重さが功を奏しているのか、ドライブモードをコンフォートにしておけばクーペよりも乗り心地がマイルドに感じられたほどだ。対角線上に位置するショックアブソーバーを油圧パイプで連結し、ピッチングとローリングの動きをコントロールするDRC(ダイナミック・ライド・コントロール)付きスポーツサスペンションまで備えており、スポーティに走りたいときは、ダイナミックかオートモードを選んでおくといい。個人的には後者のほうがしっくりときた。
駆動力配分はフロント40、リア60を基本に、必要に応じてフロント最大70%、リアには最大85%を配分する。さらにリア・アクスルには左右の駆動力配分を最適化するスポーツディファレンシャルを標準装備する。これによってコーナリング時にしっかりと前荷重をかけてやれば、ぐいっとノーズが向きをかえ、アンダーステア知らずで、気持ちのよいオンザレール感覚が味わえる。
目指すはプレミアムスポーツ
RS5スポーツバックのライバルを挙げるとするならば、メルセデスAMG C63や新型登場が間近のBMW M3、それにアルファロメオ・ジュリア・クアドリフォリオなどといった顔ぶれになるだろう。そうした中でRS5スポーツバックの個性は、ボディ形状がこのなかで唯一の5ドアのハッチバックということだ。
1994年にデビューしたアウディ初のRSモデルであったRS2は、ポルシェと共同開発されたアバント(ワゴン)だった。その後、RS4アバント、RS6アバントと、アウディのRSモデルといえば、押し出しの強いデザインというよりは、分かる人には分かるという通好みの控えめ路線で、クワトロがもたらす安心感と多気筒エンジンがもたらす速さ、そして何より高いユーティリティ性を備えていることで評価を高めてきた。
それはRS5スポーツバックにも言えることだ。バリバリと音をがなりたてたり、周囲を威圧したりするようなデザインではない。そしてサーキット志向のハードなセッティングでもない。目指すのはスーパースポーツではなく、プレミアムスポーツ。RS5スポーツバックは、RSモデルの本流をいくGT、グランドツアラーなのだ。
文・藤野太一 写真・柳田由人、アウディ ジャパン 編集・iconic
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