今夏、伝統の“マカオGP”に参戦するチームの一覧がFIAによって発表された。車両がF3車両からフォーミュラ・リージョナル車両となる今大会(11月14日~17日開催)には、日本勢からTOM'SとTGM Grand Prixがエントリーしている。
両チームは共に2台のマシンを走らせる予定だが、ドライバーは未発表だ。
■マカオGPでのF3レース開催が“完全不可能”だった理由とは? 今季からフォーミュラ・リージョナルへ移行。日本からの参戦も
トムスと言えば、マカオのツーリングカーレースを2度制し“マカオの虎”と呼ばれた舘信秀氏が興したチームということもあり、マカオGPは重要なレースである。過去には5度の優勝を記録。車両がFIA F3車両となった2019年以降は参戦しておらず久々の復帰となるが、2008年の国本京佑以来となる優勝を目指す。
トムスの山田淳テクニカルディレクター(TD)は、motorsport.comに対して次のように語った。
「我々は1991年から2018年までマカオに参戦しました。舘さんはそこで歴史に名を残しているので、チームにとっても重要な大会です」
「2019年からは、その時点でFIA F3に出ていないと参戦できないような形となり、日本から参戦するのは難しい状況になっていました」
「『これでマカオ(参戦)もおしまいかな』と考えていました。ただ、フォーミュラ・リージョナルへ変更されるということで復帰のチャンスがあると思っていましたが、ちょうどFIAから招待いただいたんです」
山田TDはトムスのマカオ復帰にワクワクしていると語る一方で、タトゥースの車両を使わないといけない点は課題だと語る。というのも、トムスはフォーミュラ・リージョナルの日本選手権に参戦しているが、そこで使われているのは童夢製の車両。ヨーロッパ選手権などで使われるF3 T-318を走らせるのは初めてなのだ。
「まず大変なのは、トムスがタトゥースのマシンを走らせたことがないということです。童夢のマシンとは全く違いますし、タイヤもピレリを使わないといけません」
「そして何より難しいのは、我々が機材を持っていけないという点です。全てレンタルしないといけません。マカオの前の週に鈴鹿でスーパーフォーミュラがあるので、機材をコンテナに積む(輸送する)ことができないんです」
また山田TD曰く、トムスからマカオを戦うドライバーは既に決まっているという。具体的な名前は明かされなかったが、ふたりとも日本人でトヨタの育成プログラムの一環として送り込まれるようだ。
トムスがマカオに参戦することは、日本人ドライバーが海外で注目を集めるチャンスになるだけではなく、トムスが優秀な外国人ドライバーをスカウトするチャンスにもなるだろう。
トムスでスーパーGT、スーパーフォーミュラのチャンピオンに輝いたニック・キャシディは、2014年のマカオGPでの活躍をきっかけにトムスにスカウトされたことで知られる。サッシャ・フェネストラズも、マカオでKONDO RACINGの近藤真彦監督の目に留まったことで、日本で活躍する道がひらけた。
「マカオはヨーロッパと日本のモータースポーツの架け橋になる重要な場所でしたが、そういった役割も復活すると思います」と山田TD。
「我々にとっても、色々なドライバーの走りを見て『こいつはいいね』などと評価するチャンスです」
「しばらくの間、こういったことはできませんでしたからね。こういった繋がりが復活するのは素晴らしいことです」
一方、レーシングチームのメンテナンスなどを請け負うセルブスジャパンを母体とするTGM Grand Prixは、マカオ初参戦。こちらも現状ドライバーは発表されておらず、9月末の記事執筆時点ではドライバーが決定されていなかった。
フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップには“Sutekina Racing Team”の名義で参戦しているセルブス。同社代表の池田和広氏は、TGM Grand Prix名義でマカオにエントリーすることになった経緯を次のように語った。
「我々はFIAから招待状を受け取ったのですが、チーム名については明記されていなかったんです(笑)」
「TGM Grand Prixとしてエントリーできるかどうかを尋ねたところ、エントリーフィーさえ払えばチーム名はなんでもいいと言われました。ですからTGM Grand Prixとして参戦することを決めました」
「というのも、Sutekina Racingの名前は海外のファンに知られていません。国際レースですし、スーパーフォーミュラとリンクさせた方がいいと考えました」
「もちろん招待を受けるのは義務ではありませんでしたが、FIAが特別に招待してくれたわけですから、やってみようと思いました。費用はかかりますが、今はその費用を払えるドライバーを探しています」
「日本のチームですから、ひとりは日本人ドライバーがいた方がいいですよね。ただジェントルマンドライバーではなく、勝てる可能性のあるドライバーと契約したいです」
近年のマカオGPでは、F2などで経験豊富なドライバーが“ステップダウン”して参戦するのがトレンドになりつつあったが、今年はハイパワーなシングルシーターカテゴリーで経験のあるドライバーの出場を規制する規則ができたことで、注目度の高いドライバーの起用が難しくなったという。
これにより、現在TGMからスーパーフォーミュラを戦うJujuもその対象外となる。
「スーパーフォーミュラやF2で3戦以上レースに出たドライバーは起用できないと言われました。ですから、例えばJuju選手を起用することはできません」と池田代表は言う。
「我々は優勝を目指しますが、予算を持って来れるドライバーも必要です。速くて資金があって……多くの注目を集められるドライバーが必要です」
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