電気自動車のスペックには「定格出力」なるものが記載されている
2022年、日本独自の規格である軽自動車に新しいEV(電気自動車)が誕生したことで、日本のモータリゼーションにおいてEVの普及が本格的に進み始めています。そのモデルこそ、日産 サクラ/三菱 eKクロスEVです。
【画像10点】日本で買える電動バイクを写真で解説「BMWも電動なら普通自動二輪免許で乗れる!」
軽自動車ですから最高出力は自主規制値の47kW(64馬力)となっていますが、最大トルクは195Nm(19.8kgm)と2.0Lエンジン並み。こうしたトルクフルな点が電動パワートレインの特徴で、鋭い加速や余裕のある乗り味を生み出しているわけです。
ところで、サクラやeKクロスEVのカタログ(主要諸元)を見ていると、定格出力20kW(=27馬力)というスペックが記載されていることに気付きます。
エンジン車では見たことがない定格出力という項目は何を示しているのでしょうか、そこにはどんな意味があるのでしょうか。
定格出力とは「安定して出せるパワー」を示している
シンプルにいえば定格出力とは「安全な運転状態において安定して出すことのできるパワー」のことです。
逆にいえば、最高出力とは瞬間的に出せるパワーの最大値であって、最高出力を発生している状態というのは、モーターに無理を強いていることになります。
このように聞くと、「エンジンであれば最高出力を出し続けられるのにモーターはダメだなぁ」と思うかもしれません。ですが、通常の量産車レベルではエンジンの最高出力を出し続けるのはかなり困難なことです。負荷をかけた状態でアクセルを全開にしていると、最悪エンジンがオーバーヒートしてしまうのは想像できるかと思います。
モーターはエンジンより劣っているというわけではありません。モーターをエンジンになぞらえるならば、オーバーヒートなどしないレベルで出し続けられるパワーの参考数値が定格出力と言えるでしょう。
電動バイクではクラス分けや運転免許の違いに関わってくる重要な数字
さて、電動バイクのスペックにおいても定格出力は記されています。
未来的なルックスが印象的なBMWの電動スクーター、CE 04の諸元表には最高出力31kW(42馬力)、最大トルク62Nmと記されています。そして、定格出力は15kW(20馬力)となっています。
二輪において定格出力というのは、じつはモーターの性能を見る以上に重要な数値です。エンジン車であればエンジン排気量によって原付や軽二輪といったクラス分けができますが、電動バイクには排気量という数値は存在しません。
そこで電動バイクにおいてはモーターの定格出力によって区分を決めることになっています。道路運送車両法施行規則では以下の3種類にクラス分けされています。
0.6kW以下:原付一種
0.6kW超1.0kW以下:原付二種
1.0kW超:軽二輪
現時点ではどんなにパワフルなモーターを積んでいても、電動バイクというのは軽二輪扱いになります。つまり車検不要ということなのです。
ただし、どんな高出力の電動バイクでも普通自動二輪免許があれば乗れるというわけではありませんから注意が必要です。
運転免許区分に関わる道路交通法施行規則では、以下に示しているように定格出力によって4つのクラスに分けています。
0.6kW以下:原動機付自転車免許
0.6kW超1.0kW以下:小型限定普通二輪免許(通称・小型二輪免許)
1.0kW超20kW以下:普通自動二輪免許
20kW超:大型自動二輪免許
エンジン車では50cc、125cc、400ccという3つの数字を覚えておくことで、排気量によって必要な免許の種類を判断することができますが、同じく電動バイクでは0.6kW、1.0kW、20kWという定格出力の数値を覚えておいてください。
冒頭でも記したように定格出力というのは安定して出せるパワーのため最高出力よりは小さく、目に留まりづらいかもしれません。エンジン車では見かけない項目のため見落としがちですが、運転するための免許の基準となる数値ですから、しっかりチェックしておくことが重要です。
レポート●山本晋也 写真●日産/ヤマハ/ホンダ/BMW/川崎泰輝
電動バイクの区分例
■ヤマハ Eビーノ(原付一種)
「充電させて……」の某バラエティ番組でおなじみとなったヤマハ Eビーノ。定格出力は0.58kWで原付一種。最高出力は1.2kW(=1.6馬力)、価格は31万4600円。
■ホンダ PCXエレクトリック(原付二種)
2018年から法人向けにリース販売されたほか、一般ユーザー向けの実証実験も行われた「PCXエレクトリック」。定格出力は0.98kWで原付二種。最高出力は4.2kW(=5.8馬力)。2022年5月に生産終了となった。
■ホンダ ベンリィe:シリーズ(原付一種/二種)
2020年から法人向けに販売が始まったホンダの「ベンリィe:」シリーズ。写真はフロントバスケットやナックルガード、大型キャリヤを装備した「プロ」。
モーターの出力を定格出力0.58kWとした原付一種版「ベンリィe:I」と、定格出力0.98kWの原付二種版「ベンリィe:II」の2モデルを展開するが、モーター出力の制御を変えているだけでe:I、e:IIとも基本構造は同様。
価格はベンリィe:I/e:IIが36万3000円、e:Iプロ/e:IIプロが37万4000円。
■BMW CE 04(軽二輪:普通自動二輪免許)
2022年4月から日本での販売が始まったBMWの電動スクーター「CE 04」。バッテリーやモーターを低く、車体中央付近に積むというパッケージを活かしつつ、個性的なデザインを確立している。定格出力15kW(20馬力)で軽二輪となる。最高出力は31kW(42馬力)、価格は195万円~。
■ゼロモーターサイクルズ SR/S(軽二輪だが要大型二輪免許)
アメリカのカルフォルニア州に本拠を置く電動バイクブランド・ゼロモーターサイクルズが送り出す電動スポーツモデル「SR/S」。定格出力40kW(54馬力)で道路運送車両法施行規則上は上記のように軽二輪だが、運転には大型自動二輪免許が必要となる。最高出力は82kW(111馬力)で、価格は294万9800円~。
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みんなのコメント
もっとも上り坂に苦労するBEVは無いと思うが。
ちなみに高速でべた踏みをずっと続けるのは電ピが悪くなるのでやめとけって、目的地に早く着きたかったらゆっくり行くのがBEVw