ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、ルノー/アルピーヌが成功できずにいる理由を分析した。
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低迷アルピーヌF1、技術部門の主要メンバー離脱を正式発表。新たに“3本柱アプローチ”による体制をスタート
ルノーが2016年にワークスチームとしてF1に復帰した時、当時のチーム代表シリル・アビテブールは、「単に参加するためではなく、勝つために戻ってきた」と述べた。当時のグループCEOカルロス・ゴーンは、2018年にトップ3に入り、2020年には世界選手権を目指して戦うという計画を示した。
その後、ルノーF1チームは2021年にアルピーヌに名称を変更して活動を続けている。9年間でチーム代表が数回代わるなかで、チームが記録した勝利は1回のみ。コンストラクターズ選手権においては、2018年と2022年の4位が最高で、いずれもチャンピオンとの差は大きかった。そして2024年F1が序盤2戦を終えた段階で、アルピーヌはランキング最下位でに沈み、おそらくマシンは10チームのなかで最も遅い。
■大手自動車メーカーがF1活動で犯してきた過ち
ルノー/アルピーヌは何を間違ったのか。実はとてもシンプルな話だ。ルノーの経営陣は、課題を過小評価し、焦りすぎた。それは今までF1で戦った多くの自動車メーカーが犯してきた間違いだ。
大手自動車メーカーは、しばしば、F1で戦うことを「簡単」だと考える。市販車の製造や販売において高い能力を持ち、資金が豊富にある彼らは、自分たちはF1でも勝てると思い込んでしまうのだ。しかしF1は自動車会社が活動する業界とは全く異なる世界であり、多くの点ではるかに要求が厳しい。自動車会社が市販車のミラーのデザインを決定するまでにかかる時間で、F1チームはシーズンの半分を消化し、マシンを3、4回アップデートし、4つの大陸で10回のグランプリを戦っている。
F1で成功を収めるためには迅速な決断が必要だ。しかし大手自動車会社にはそれができない。取締役会での会議、管理スタッフ、労働組合といった存在が、F1での成功を妨げる。
ルノーチームは、3つの時代にわたってF1に参戦してきた。1977年から1985年(世界選手権での最高順位は1983年の2位)、2002年から2011年(世界選手権での最高順位は2005年と2006年の1位)、そして2016年から現在(世界選手権での最高順位は2018年と2022年の4位)だ。
2002年からの時代に最も成功したのは偶然ではない。この時、グループの経営陣は、チームを管理する自由をチームマネージャーのフラビオ・ブリアトーレに与えたのだ。ブリアトーレはその立場を効果的に利用してチームを運営した──“賢く”なりすぎて、スキャンダラスなクラッシュゲート事件を起こすまでの間だが(しかし、それはまた別の話だ)。
ルノーF1の歴史が示すのは、自動車会社がF1で成功で収めるのは、自分たちのチームを強力なボスに任せて、グループ経営陣はあまり干渉しない場合に限られる、ということだ。メルセデスが長い間成功してきた秘訣もそれだった。トト・ウォルフは、シュツットガルトの取締役会から距離を置きながら、英国のチームで指揮を執っている。
しかしほとんどの自動車会社は、F1ワークスチームにおいてごくわずかな成功しか収めることができない。2000年代以降、トヨタ、ホンダ、BMW、ジャガーは、F1に数十億ドルを費やしながら、優勝を達成できたのはホンダとBMWだけだった。なぜ莫大な予算を投じたにもかかわらず、成功できないのか。それは、取締役会がF1を理解しておらず、性急に干渉してきたからだ。
■経営陣が焦りを募らせ、負のスパイラルに陥ったルノー/アルピーヌ
ルノーの場合も、期待どおりの成功を収めることができないなかで、チームのボスが、アビテブール、フレデリック・バスール、マルチン・ブコウスキー、ローラン・ロッシなど、頻繁に変更された。こういった背景を考えると、ルノー/アルピーヌがいまだに成功できずにいるのは不思議なことではない。F1について学び、そのための体制を構築するには時間がかかる。2022年には経験豊富なオットマー・サフナウアーが新代表に就任したが、ルノー内で焦りが非常に高まっており、サフナウアーはわずか1年で解雇される結果になった。F1で33年のキャリアを持ち、尊敬を集めるアラン・パーメインも辞任、チームの衰退が加速し始めた。
F1キャリア26年のチーフテクニカルオフィサー、パット・フライはウイリアムズに移籍。その後も、レーシングディレクターを務めたダビデ・ブリビオ、テクニカルディレクターのマット・ハーマン、空力責任者ディルク・デ・ビア、テクニカルアドバイザーのボブ・ベルが離脱、その他にもさほど名前が知られていない技術者たちが大勢チームを去った。
現在チームを率いるのは、ブルーノ・ファミンだ。昨年サフナウアーが解任された際に、ファミンはまず暫定チーム代表に任命された。それ自体、絶望的な解決策だ。ファミンに能力の問題があるわけではないが、暫定的な代表という立場では、F1で重要な、迅速な決断を下すことができない。今シーズンに入り、ファミンが正式な代表となった。グループ経営陣はより良い解決策を模索していたようだが、うまくいかなかったのだろう。従って、ファミンへの信頼はそれほど大きいものではない。しかしF1では絶対的な自信(自己信頼を含む)があることが、決定的な要素になる。
多くの優秀な人材を失ったことを考えると、アルピーヌが2024年シーズンを悲惨な形でスタートしたのは驚くことではない。トップに戻るまでの道のりは長く険しい。ルノー経営陣は焦りを募らせており、ファミンが十分な時間を与えられる保証はない。
もしかすると、ルノーがF1から一時退くべき時が近づきつつあるのかもしれない。
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みんなのコメント
地獄の沙汰も金次第、打開策は トップチームで実力はあるのだが、名はない 若い技術者の中で、部所の環境に 不満を持つ者を探し、安く雇うしかないが
今は CFD等、数字で 仕事が判明するから、名のある者しか そこには居なく、安い子はいない
なので駄目なチームを 自分の力で、と 腕試しの若者なら と言いたい所だが、一人でF1は造れない
そうゆう人材をかき集めても それを指揮する、リーダーが優れていなければならず
それには 当然お金と、時間が必要w