走り出してすぐ、ある言葉が頭から離れなくなった
キーを受け取り、オプション設定の「デコラティブカーボンパネル」というスポーティなインテリアが与えられた「RS 5クーペ」に乗り込んだ。エンジンスタートボタンを押すと450馬力、最大トルク600Nmの 2.9ℓ、V6ツインターボエンジンが力強い鼓動と共に目覚める。アウディにとって「RS(レーシングスポーツ)」といえば、スポーティなS(スポーツ)シリーズの走行性を、さらに高めたハイパフォーマンスモデルのことであり、“アウディの走りを象徴するモデル”だ。
高性能765ccエンジンでアグレッシブな走りを堪能できるトライアンフの究極のストリートファイター「Street Triple R Low」
ところが、である。鼓動感を感じさせながら目覚めたエンジンではあるが、周囲を威圧するような咆吼ではない。そのアイドリングは悪魔でも控えめで、ひょっとするとベーシックなA5クーペシリーズとさしたる違いがないほど静々と回る。これ見よがしではない、そんな表情に、独特の品性を感じた。
そして走り出しから5分もすると、その感覚が決して間違いではないことが分かった。同時に、ある言葉、いや曲名かも知れないが、「優しい悪魔」というフレーズが頭に浮かび、離れなくなった。1970年代のトップアイドル、キャンディーズの代表曲(曲名は“やさしい悪魔”)にして、彼女たちの清楚なイメージを一変させた大ヒット作だ。
作詞は喜多條忠、作曲が吉田拓郎、そしてキャンディーズと来れば、おじさん達に取って、たまらない組み合わせだろうが、それほど深く考えて“やさしい悪魔”という言葉が浮かんだのではない。ましてや、楽曲の詩の中にRS5クーペとの共通項があるわけでもなく、あくまでもこのモデルの個性を、端的に分かりやすく表現できる言葉として自然に出てきたのだ。
とにかく時間が経過すればするほど、その感覚は強くなっていく。走りのパフォーマンスだけではなく、佇まいもキャビンの仕立ても、聞こえてくるエンジンサウンドも、何もかもがアウディならではなのエレガンスを伴って迫ってくるのだ。いったいその感覚とはどんなものなのか?
イメージを大切にしながら、大変身する方法
これだけのスペックを与えられ、さらに軽量にしてボディサイズもすぐに理解できる。アクセルを踏み込めば痛快で刺激たっぷりの走りは思いのままなのだ。ドライバーには高いスキルが求められる訳で、かなりハードなコントロールが求められるかとも思った。だが、その気になって見たところで、すべての動きが実にソフトで、感触が心地よく、こちらの臣を軽くかわされる感じである。強烈なのだが、それを刺激的にではなく、角の取れた優しさで、なんとも柔らかく伝えてくれる。この感覚の絶妙なる変換こそがアウディの味つけであり、実に心地よく、エレガントなのである。そして能ある鷹の、ツメの隠し方にも「こんな方法があったんだ」と思い知る瞬間でもあった。
気が付けばそれなりのペースでワインディングを走っていることにハッとする。ブレーキペダルを踏み込み、自制する。その減速も強烈ではあるが、ストレスをほとんど感じさせることなく、柔らかいながらも強烈に効いてくれる。結果として、なんたる速さ、なんたる優しさ、そしてなんたる安心といった要素が塩梅よく調和している。
さらにスペックを確認すれば、0~100km/hの加速は3.9秒。サスペンションだって相当に締め上げられ、そのままサーキットで十分に通用するほどの仕様のはずだが、表向きの表情は優しさに溢れていた。魔性を秘めたしとやかさと、そこはかとなく漂う色気。これはクーペというモデルとって不可欠とも言える要素。アウディがRS5クーペでそれを実に上手く表現していると感じながら、ここでキャンディーズとのある共通項に気が付いた。
「やさしい悪魔」がリリースされた時期といえば、ピンク・レディの快進撃が始まっていた頃である。直球勝負のライバルに対して、キャンディーズサイドは、それまでのイメージを大切にしながら「キャンディーズ大人化計画」を展開し、そして第1弾の「やさしい悪魔」を送り出したのだ。当然のようにピンク・レディと同じ方法論がキャンディーズには似合わないことを知った上での、新曲のリリース。そのイメージを崩すことなく行われた差別化は、新たな成功を収める事になったわけである。アウディのもつクレバーでエレガントなイメージを保ったまま、相当に刺激的な走りを実現したRS5クーペは、なかなかのもの。スポーツカーの新たなアイドル像と言える。
クレバーなアウディのイメージを大切にしたクーペスタイル。細部を見ればただ者ではないことが分かるが、あくまでも佇まいはエレガント。
奇をてらうこともなく、シンプルなラインで仕上げたクーペスタイルには上品な色気が漂う。
カーボン素材を使いながらスポーティな雰囲気に仕上げられたキャビン。工作精度が高さが分かる作り込みだ。
座面やシートバックにダイヤモンドステッチを施したレザーシートはRS専用「Sスポーツシート」。マッサージ機能も装備されている。
シフトレバーを始め、操作系がすべてソフトな使用感で、過激さが前面に出てくることがない。
過激なスペックを持ちながらも、一方で「エフィシェントアシスト」など経済的な走りを実現する機能もある。
強力なブレーキとDRC(ダイナミックライドコントロール)や可変ダンパーなどで、スポーティな走りの安定感はレベルが高い。
赤いブレーキキャリパーや大きなエアインテークなど、よく見るとサーキットでも十分に通用する証が散りばめられている。
なんともさりげなく控えめに貼られたエンブレム。
450ℓ (VDA値)の容量を確保するトランクは奥行きも合って使いやすい。
RS 5クーペ
価格:1,340万円(税込み)
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,715×1,860×1,365mm
車重:1,750kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:AT
エンジン:V型6気筒ターボ 2,893cc
最高出力:331kw(450PS)/5,700~6,700rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1,900~5,000 rpm
問い合わせ先: アウディコミュニケーションセンター 0120-598106
TEXT : 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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