提供されたのは堅実な4気筒エンジンのみ
オペル・マンタ Aのトレッドはフォード・カプリとほぼ同値だったが、3.0L V6エンジンのようにパワフルな選択肢は用意されなかった。5年間、約50万台の生産で提供されたのは、堅実的な1.2Lから2.0Lの4気筒エンジンのみだ。
【画像】上品な2ドアクーペ オペル・マンタ エレクトロモッド版とカリブラ 最新アストラも 全89枚
ちなみに、ベルギーのトランスヨーロッパ・エンジニアリング社が、TE2800という6気筒エンジンを積んだマンタを製造している。加速力はポルシェ911に迫ったというが、オペルの認可は得ていなかった。
英国のブロードスピード社も独自にマンタ・ターボを製作。200km/h以上の最高速度を叶え、28台が販売されている。ブラックのボディが目印だった。
1970年のオペルのショールームでは、ベースグレードのほかにLとDLというトリムグレードを選択できた。それでも不満なドライバーは、ダッシュボードの追加メーターと引き締まったサスペンションが得られる、SRラリー・パッケージが選べた。
当初のエンジンは、キャブレター1基にシングル・オーバーヘッドカムという組み合わせ。1.6Lで69ps、1.9Lでは91psを発揮した。4速MTの1.9Lなら最高速度は169km/h、0-97km/h加速を12.5秒でこなした。3速ATも選択できた。
1974年に追加されたGT/Eグレードでは、北米仕様で標準装備だったボッシュLジェトロニック燃料インジェクションを獲得。1.9Lの最高出力が110psへ大幅に向上している。
マッスルカーとは違う上品なスタイリング
英国にやってきたマンタでは、1.6Lのほかに60psの1.2Lエンジンも選べた。もちろん、GT/Eも導入されている。マンタ・プラスやホリデー、ブラックマジック、サンバザーなど、多彩な特別仕様も提供された。
今回ご紹介するバーガンディ・カラーのマンタは、その1つとなるベルリネッタ。スポーツホイールに熱線入りリアガラス、ビニールルーフなどを装備した上級仕様だ。
ホワイトのボディにレッドのストライプがあしらわれたマンタも、スウィンジャーと呼ばれる特別仕様。どちらもオペルのヒストリック部門が管理するクルマで、素晴らしい状態にある。
2023年に見るマンタはボディの幅が狭く、13インチと小さなホイールが内側に引っ込みすぎているように思えるが、スタイリングは魅力的。フォード・カプリほどディティールの処理に気が配られていないものの、マッスルカーとは違う上品さがある。
丸い4灯のテールライトとリアガラスのラインが、マンタらしさを生み出している。フレームレス・ドアの大きなサイドウインドウと、細いBピラーがルーフまわりに軽快感を与えている。
どちらもエンジンは1.9L。フロントヒンジのボンネットを持ち上げると、オペルで多用されたオーバースクエアのシングルカム・ユニットが姿を表す。1960年代初頭にデトロイトで設計されたものだ。
ヘッドにカムが内蔵され、堅牢で信頼性が高く、多様な展開が可能だった。しかし、スチール・ブロックで軽くはない。
欧州大陸を高速で疾走するタイプではない
紅白2台のマンタは、デザインされたスチール・ホイールを履く。ダッシュボードのフェイクウッド・パネルも共通。レブカウンターは備わらない。
ホワイトのスウィンジャー仕様には3速ATが組まれ、鮮やかなレッドのクロス内装がボディと印象的なコントラストを生んでいる。細身のシートにはヘッドレストが付き、想像した以上に座り心地に優れる。
ドアの内張りは、バーガンディのベルリネッタよりシンプル。ウッドパネルも、ビロードのようなクロスも用いられていない。ヒーターの操作パネルは、ステアリングコラムの根本にある。
ステアリングホイールは、艶のある樹脂製。当時の多くのオペル・モデルで登用されたアイテムだ。他方、ベルリネッタにはリムの太いスポーツ・ステアリングが組まれている。運転席に座ると、太いCピラーが作る死角はさほど大きくないことに気づく。
発進すれば、ギア比が低いことと相まって、回転数を高めたエンジンから振動が目立ちだす。マンタは、欧州大陸を高速で疾走するタイプではない。アウトバーンの追い越し車線も、定位置とはいえないだろう。
それでも、乗り心地には適度な硬さがあり、走りは小気味いい。高速域での風切り音やロードノイズも控えめだ。競争力の高い価格で、有能なパーソナルカーとして50年前には支持を集めた理由がうかがえる。
手に届く範囲でクーペの夢を現実に
ベルリネッタには扱いやすいクラッチと、正確に動くシフトレバーが付いている。不足ないトルクを活かし、キビキビとシフトアップしながら滑らかに加速できる。エンジンから耳障りなノイズが放たれるものの、3速で引っ張れば130km/h近くまで出せる。
3速ATも積極的にキックダウンするから、スウィンジャーのマンタも元気に走る。とはいえギアの枚数が少なく、優れたシャシーの能力を引き出すことは難しい。
2台ともコーナーでは穏やかなアンダーステア傾向で、ドライバーの不安をあおることはない。ロックトゥロックが4.1回転という数字から想像するより、ステアリングはレスポンスに優れる。
サスペンションの減衰力がボディをなだめ、基本的にマンタは安全志向。トリッキーなマナーはない。
2代目のマンタ Bはラリーで活躍したが、基本的なメカニズムで共通するマンタ Aからは、その予兆を感じる。トラディショナルな設計を施しながら、意欲的な素地を宿していることを匂わせる。
1970年代は、落ち着いた雰囲気のサルーンも優れた操縦性を備えることが理解されていた。アスコナの兄弟といえるマンタも、悪くない仕上がりになって不思議ではなかった。
高度な設計による上級クーペで、ランチアやアルファ・ロメオ、BMWはブランドの地位を築いている。一方のオペルは、手に届く価格で夢を現実のものにしてくれた。走りは穏やかだったとしても、市民の味方のクーペだった。
協力:オペル・ミュージアム
オペル・マンタ A 1900(1970~1975年/欧州仕様)のスペック
英国価格:1474ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約298万円)以下(現在)
販売台数:49万8553台(合計)
全長:4293mm
全幅:1626mm
全高:1359mm
最高速度:168km/h
0-97km/h加速:12.2秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:958kg
パワートレイン:直列4気筒1897cc自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:91ps/5100rpm
最大トルク:14.9kg-m/2800rpm
ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック
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