加速する電動化の現在地
text:Simon Davis(サイモン・デイヴィス)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)
時が過ぎるのは、なんと早いことか。初代日産リーフや三菱アイ・ミーブ、そのプジョー版であるイオンが登場したのが、まるで昨日のことのように思える。小容量のバッテリーと低出力の電気モーターを積んだそれらに、大衆向けのパーソナルな移動手段の未来像を垣間見て、興味を覚えたものだ。
翻って2021年現在、それら黎明期の量産EVはまったく奇抜なものに感じられなくなった。事実、英国では2030年までに内燃エンジン車の新車販売が打ち切られることが決まったのだから、それら初期のEVが示した新たな電動化時代は、いまや動かしようのない近くて現実的な将来になったといえる。
突如として起きたように思えるが、気が付けば新車市場には、安価なものからそうではないものまで、今や全般においてバッテリー動力が普及している。かつては内燃エンジンしかなかったような領域においてもだ。
良かれ悪しかれ、英国におけるEV比率は拡大し続けるはずだ。実用的で、価格も現実的なメインストリームモデルが増え、それにより販売台数も、その結果としてのマーケットシェアも、ひたすら右肩上がりに増加する一方となるだろう。
そうなると、疑問も湧く。今日のEVのリアルなキャラクターは、いったいどのようなものなのか。また、迫りくる内燃エンジン追放に向け、EVのさらなる普及へ弾みをつけるに足るものとなっているのか。それとも、まだまだ改善すべき余地が山積みなのだろうか。
大メーカーの未来を担うEV
そこで、メインストリームとなりそうなモデルのサンプルとして選んだのは、自動車メーカーとしてはメインストリーム中のメインストリームといえる2大巨頭、フォルクスワーゲンとフォードの最新EVだ。
どちらも、EVブームの寵児であるカリフォルニア生まれのブランドほどには、電動化において素早く立ち回ったわけではないだろう。それでも、この1年ほどの間に、プログラムは本格的に動きはじめた。
フォルクスワーゲンにとって、最初にリリースしたEV専用モデルはID.3だが、新たな電動化時代の覇権がウォルフスブルグにもたらされるとすれば、それは今回のID.4のほうによってだろう。
その理由のひとつは、欧州市場では比較的安価で、プレミアム感のあるクロスオーバーへの需要が非常に大きいということが挙げられる。もうひとつには、これが中国と北米にも生産施設を構え、重要なマーケットにおけるフォルクスワーゲンのEV販売戦略の嚆矢となるクルマだという点だ。これは大きなビジネスになるだろう。
いっぽうのフォードも、EV量産開始にあたり、同じくSUV的なモデルを用意してきた。しかし、こちらのほうが物議を醸すことになりそうだ。もちろん、車名に関するものである。クロスオーバーでありながらマスタング・マッハEとは、ずいぶん思い切ったネーミングではないか。
フォードの象徴的なモデル名を用いることで、イメージ的な商品力は高まるだろう。さらに、SUVならではの実用性やユーザーフレンドリーさに加え、魅力的な走りへの期待感も盛り上げてくれる。
性能も価格も拮抗する2台
それらのクルマは凍えるような3月のある朝、ミルトン・ケインズ・コーチウェイの50kW急速充電器に繋がれていた。ロンドンからこの地まで、M1高速道路を経てたどり着いた直後のことである。
マッハEはエントリーグレードの後輪駆動モデルであるRWDスタンダードレンジで、価格は4万350ポンド(約565万円)というプライスがつけられている。
ちなみに英国政府は、EV購入補助金制度を改定し、補助額を3000ポンド(約42万円)から2500ポンド(約35万円)に引き下げたばかりか、対象を車両価格3万5000ポンド(約490万円)未満と制限した。つまり、マッハEは対象外となる。
ID.4のテスト車は、プロ・パフォーマンス・ファーストエディション。現時点の英国市場で購入できる唯一のグレードで、発売記念モデルとして標準装備内容を充実させ、4万800ポンド(約571万円)という価格設定だ。
この2台、価格差はきわめて小さい。それはそのまま、これからテストする項目の拮抗ぶりも表している。
マスタングの名が期待させるもの
どちらも、EVとしては典型的なレイアウトだ。リチウムイオンバッテリーは、ホイールベース内のフロア下に配置。モーターはリアに搭載され、後輪を駆動する。とはいえ、スペックをみると、わずかながらも違いが発見できる。
フォードのモーターは270ps/43.8kg−mを発生するが、フォルクスワーゲンのほうは204ps/31.7kg−mと控えめ。1.9tのマッハEは0−100km/hで6.9秒をマークし、2.1tのID.4は8.5秒に留まる。マスタングの名を冠するだけあって、パフォーマンス志向が強そうなのは期待通りだろう。
ところが、純粋に実用面の話をすると、ID.4のアドバンテージが際立ってくる。バッテリー容量は77kWhで、マッハEの68kWhを上回る。そのため、WLTPモードの航続距離は、フォードの439kmに対し、フォルクスワーゲンは499kmに達する。
ポールスターの普及モデル
M1経由でB660の北側へ向かい、ミルトン・ケインズへ折り返す160kmほどの道のりを語りはじめる前に、もう一台のテスト車を紹介しなければならない。
車両価格は4万9900ポンド(約699万円)、408ps/67.3kg−mのモーターを積み、ゼロスタートから5秒以下で100km/hに達するそれは、ポールスター2だ。
このグループに入ると、性能的にちょっとばかり場違いにも思える。だが、この地上高の高いセダンは、妥当な比較対象だ。それは、扱いやすいファミリーカーとして、完成度の高いEVだというだけが理由ではない。
たしかにほかの2台よりは高額だが、どちらも遠からず、これくらいの価格の仕様が追加されるはずなのだ。そのことを忘れてはいけない。
マッハEは、エクステンデッドレンジと銘打った大容量バッテリーと2モーター版が存在し、それらを両方とも装備した仕様もオーダーできる。ID.4も、2モーターが用意される見込みだ。
また、ハイエンド仕様となれば、価格はポールスターに近いか、それ以上となる。今夏上陸予定のマッハEファーストエディションは、5万8080ポンド(約813万円)だとされている。
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みんなのコメント
ガソリンエンジン車の販売が禁止されてから後の究極の選択レベルならば、やむを得ず選ばざるを得ないことになるかと思うが、現在の状況では全く購入対象となる商品ではないと思う。