「ホワイトアウト」での事故
text:Naoki Furumoto(古本尚樹)
【画像】雪路面でも高い走行性能を発揮するクルマ【3選】 全160枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
筆者はいま、札幌市の自宅で除雪を3回終えてこの原稿を作り始めている。
今日(2021年1月19日)はまさに「ホワイトアウト」だった……。
2021年1月19日には東北道で宮城県大崎市にて、およそ140台が関係する多重事故では、1人が死亡、18人が重軽傷を負った。約50台がこの事故では直接関係しているとも報道されている。
この原因は「ホワイトアウト」だった。事故が発生した午前11時50分時点の大崎市古川の気温は氷点下3.4℃で、最大瞬間風速は1月としては過去最大となる27.8mを観測していた。
それ以外にも札幌市近郊の長沼町で、10数件の事故が相次ぎ、国道が通行止めとなっていた。現場は猛吹雪の影響でホワイトアウト状態だった。国道337号と274号では猛吹雪の影響で自衛隊車両などが路外にて横転していた。
「ホワイトアウト」が関係する、あるいは冬期間の吹雪による交通事故の事例は北海道では多く、今後の参考として呈する。
2018年1月に北海道滝川市内の道央自動車道上り線で11台が関係し、6人が重軽傷を負っている。その後方では約100台の車両が立ち往生する事態になった。現場は見通しのよい直線道路だが、路面は圧雪アイスバーンで、その上部に新雪が積もる状態で視界不良だった。
付近ではほかにもその数時間前に国道で多重衝突が起きて、その時点での気温は0度前後まで上がっていたが、風速は12m/s近くあり、降っている雪だけでなく、周囲にある雪まで風によって飛ばされるような状況だった。
また関連して、筆者自身も調査している、2013年3月北海道中標津町や湧別町で、暴風雪で車が相次いで立ち往生するなどし、8人の死亡が確認され、1人が手当を受けた。密閉状態の車内で一酸化炭素(CO)中毒死したり、車外に出て凍死するなどした。
雪が窓やマフラーをふさぎ、排ガスが車内に充満してCO中毒死した。周辺は2-4mの雪が積もっていた。道などによると、3日はJR北海道の特急や普通列車約360本が運休し、新千歳空港を発着する約10便が欠航。中標津町や北見市で約650人が一時、公共施設に避難したり、車での待機を余儀なくされた。また、1~3日に延べ約8000戸が停電。
また、2019年には札幌近郊の当別町で66歳の男性が「ホワイトアウト」の中、自動車を運転し雪山に数回衝突した後、自動車を置いて自宅に向かった結果、玄関前で倒れ死亡してしまう事故が起きた。暴風雪や降り積もった雪が強風により舞い上げられる地吹雪などによって起こる同現象は、それだけ人の感覚を奪う……。
「ホワイトアウト」とは
「ホワイトアウト」は、発生する場所が上記事例のように、住宅街ではなく周りに遮るものが少ない郊外の道路、とくに被害が大きくなるのは幹線道路にその特徴がある。
都市部ではなく地方で発生することが多い。北海道では、多々発生している。「ホワイトアウト」は少量の雪であっても風の強い条件がそろうと発生するのだ。
目安として、風速が5m/sをこえると吹雪が発生しやすくなる。8-10m/s程度になると雪で視界が悪くなってくる。さらに風速が15m/sでほぼ全く視界がない状態になると思っていればよいだろう。
今回の東北道周辺も多重事故が起きた区間の周辺は、畑や田が広がっていて、風が非常に強い場所で、「ホワイトアウト」が発生する条件に合致する。
また、この地域では過去にも同様の事故が発生しており、要注意か所だったのだ。
対策と課題は?
ドライバーの安全対策として、速度を落として自分の車の存在を周りに知らせる。車のヘッドライト、ハザードランプ、車によってはフォグランプなどすべてを使って、周りに対して自分の存在を知らせる。安全な場所があれば路肩に停めること。
冬の期間は、燃料を早めに満タンにし、スコップや牽引ロープ、防寒着や毛布、食料を積んでおくことも事前の備えとして必要である。なお、暴風雪に関する気象警報などが発表されたときは、外出しないことが身の安全を守る最善の対策であることはいうまでもない。
避難できる場所がない場合には携帯電話などの通信機器のGPSをオンにし、110番することで自車の位置を伝達。一酸化炭素中毒を防ぐため、換気やマフラー周辺の除雪をしながら救助を待つことが肝心である。
ドライバーのみならず、わたし達国民にとっても「ホワイトアウト」の影響は少なくない。これまで大雪に関係する事例では、交通網が遮断され、トラックが立ち往生する光景がみられた。
また、水気を多く含んだ雪質が積もったことで、簡易型のテント倉庫が崩壊するという被害も相次いだ。食品輸送の現場では、大雪で立ち行かない状況の中で配送を迫る荷主への非難の声もある。
店舗での除雪用品不足や生鮮品が店から消える事態は市民生活に深刻な影響を及ぼしている。またそれが回復するのにもロジスティクスが回復しないとならない。即効性があるものではない。
今年は雪によって首都圏や北陸のサプライチェーンが打撃を受けており、製造・物流・小売事業者にとって大雪への対策が重要だ。
積雪などの気象情報や車両の走行軌跡、通行可能な経路、遅延リスクなどを集約し、一元的に管理する新たな「物流リスクマネジメントシステム」の構築が望まれる。
雨雪判別や路面温度予測の技術を用いて道路ごとに通行止めリスクを予測するノウハウや、システム確立と、積雪状況を面的に把握する独自の積雪解析技術を組み合わせることで、豪雪時でもサプライチェーンを止めない気象・物流情報の提供も必要となっている。
とくに「ホワイトアウト」対策としては積雪量を感知するだけでなく、風の強さも把握し、ドライバーなどに伝達する必要がある。
今後の対策を北海道の事例から
北海道では風の強さを利用して防雪柵がうまく利用されている。雪を除くが、風だけを通して道路の雪を除去するものだ。
これは全国の「ホワイトアウト」が危惧される地域により浸透してほしいと思う。ただし、この短所は、防雪柵が途切れると急に吹き溜まりが生じること。
柵が切れている表示について、筆者はみたことがなく、注意喚起が必要だと思う。柵が途切れたからといって、風が弱まるわけではない。
また、危険か所では、退避場所も少ない。地方部道路で発生することが多いので、PAや道の駅、コンビニエンスストアなどが近くにない。その場合、安全なところで退避したくてもできず、結果的に事故になるケースは多い。
自車が前方車へ追突することと、後続車に追突される両方のリスクを負っている。先頭車両がトレーラーだと、ジャックナイフ現象になりやすく、対向車への影響と、道路そのものが通行できずに、今度は多数車両による立ち往生が発生する。まさに「ホワイトアウト」は暴風雪の極限状態なのだ。
北海道では除雪車用の目安で、横幅を示し点滅するポールは一般的にある。これはある程度ドライバーの視界を確保してくれるので、これも本州では活用されるべきだと思う。
ただ、対費用面でネックになるかと思われる。年に数回の「ホワイトアウト」のため、雪対策のためという命題では設置しにくいと思われる。
防雪柵と表示版のみ 手段限定
現状では有効な対策は防雪柵と表示版くらいしかドライバーを守る手段はない。
表示版もリアル感に欠けていて、どれだけのドライバーが頼りにしているか、懐疑的だ。
雪の問題は各場所で全く降り方や溜まり方が違う。風の強さも違うし、突然「ホワイトアウト」は訪れる。だから、少なくともかつての危険か所を把握し、刻々と変化する気象条件を常に把握する自覚が必要だ。
また、外へ不用意に出ることは最悪な気象条件と事故に巻き込まれる可能性が高まるので避ける必要がある。
自分が見えない状況は他者からも見えないのである。不用意に外へ出ての確認や悪天候のなかでの徒歩による避難は避けなくてはならない。
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みんなのコメント
いずれにおいても、前を走行するクルマも、対向車も、まったく無灯火なのには驚いた、というか呆れた。
ある人はすぐに停車しろと言うが
ある人は停車なんか出来るか、追突されるぞ…と。
またある人は、ハイビームで走れというが
ある人はハイビームで走ったら乱反射してそれこそ前が見えないぞ…と。
「地震だ、まず火を消せ」だって、最近はまず身を守れに変っているが
それでもどうすべきかのイメージは各人にはある。
ところが、ことホワイトアウトとなると、どうすべきかが分からない。
まず、実際の経験者をインタビューし、こういった場合どういう行動をすべきかを練り
これをマスコミが正式に公表すべきではないかと考える。