小さなハッチバックの普遍的な魅力
欧州では、コンパクト・ハッチバックの人気はすっかり下火。どのクラスを見ても、注目を集めているのは背の高いSUVやクロスオーバーだ。2024年の英国の新車販売数を確かめると、トップ10は軒並みそんなモデルが占めている。
【画像】小さなハッチバックは魅力的! スズキ・スイフト ルノー・ルーテシア 同等サイズの競合モデルは? 全172枚
確かに、魅力は理解できる。実用性はそのままに、運転席からの視点は高く、市街地での安心感は高い。メーカーとしても、悪くない収益を得られるから推したくなる。
同時に、電動化に向けたシフトは本格化。バッテリーEVは技術的に高コストになりがちで、お手頃な価格帯での提供はまだ難しい。
こんな変化を受け、英国のクルマ好きにとって衝撃的なニュースになったのが、フォード・フィエスタの生産終了だ。日本にも、ファンはいらっしゃったはず。魅力的なハッチバックの1台が、市場から姿を消してしまった。
日産も、マイクラ(マーチ)の提供を欧州でも終了。キアもリオを諦めた。小さなハッチバックは、過去のジャンルのクルマになってしまうのだろうか。
ただし、まだ完全に選択肢が消えたわけではない。トヨタにマツダ、オペル、フォルクスワーゲンなどが、競争力の高いモデルを提供してくれている。
結局のところ、お財布に優しいお値段と、普段使いに丁度いい大きさや実用性、運転のしやすさなど、普遍的な魅力は揺るがない。その事実を知っている幅広い世代から、依然として根強い支持を得ていることも間違いない。
先代以上の販売が見込まれるスイフト
この流れを好機として捉えているのが、スズキ。モデルチェンジしたスイフトは、欧州では先代以上の販売数になると見込まれている。誰しもが、クロスオーバーを欲しているわけではない。
生産が終了したモデルの既存ユーザーで、数年後の買い替えでも同等のハッチバックにしたいと考えている人が、英国だけで25万人もいるとスズキは算出。スイフトが、その一部を受け止める可能性は高いと予想しているようだ。
かくして、新世代となったスイフトだが、完全な新設計というわけではない。小型車の収益性は低く、変化の激しい現状にあっては、既存技術や構造の活用なしでは生き残りが難しいためだ。
スイフトが基礎骨格とするのは、先代と同じハーテクト・プラットフォームの改良版。それでもスタイリングは新しく、インテリアやパワートレインはアップデート。安全運転支援システムも、最新版を得ている。
選択肢が減ったといっても、まだライバルは多い。しかも、いずれも実力者だ。その中で、AUTOCAR英国編集部がクラストップだと評価しているのが、ルノー・クリオ(ルーテシア)。スイフトは、善戦することができるだろうか。
ハンサムでバランスの良いルーテシア
スズキの強みとなってきたのが、秀でたコストパフォーマンス。これは新世代でも変わらず、英国仕様のエントリーグレードとなるモーションで、1万8699ポンド(約359万円)から。標準装備は充実している。
今回お借りしたスイフトは、トップグレードのウルトラだったが、それでも2万ポンド(約384万円)は超えない。もちろん、一層装備は豊かになる。
ただし、ルーテシアの価格設定もかなり魅力的。ハイブリッドを諦めてエントリーグレードに絞れば、1万7995ポンド(約346万円)から英国ではフランス車に乗れる。0.9L 3気筒ターボエンジンは90psを発揮し、充分にストレスなく市街地を走り回れる。
最近アップデートを受け、見た目も魅力的。ハンサムでバランスの良いデザインだと、多くの人が感じるのではないだろうか。スイフトは、こんもり立ち上がったキャビンを受け継ぎつつ、新鮮ながら、比較すると少し装飾的で整いきれていないように思う。
ブルーとブラックのツートーン塗装は、850ポンド(約16万円)のオプション。お借りしたルーテシアに塗られていたバレンシア・オレンジも、700ポンド(約13万円)の追加費用が必要になる。
荷室や後席の空間では並ぶ2台
インテリアでも、2台はしのぎを削る。スイフトのダッシュボードは一新され、造形的な印象は良い。製造品質も高い。しかし、プラスティック製パネルの多くは硬く、触れると安っぽさを感じずにいられない。シートのクロスも、肌触りが良いわけではない。
ペダルはシートの中心からややずれた位置にあり、少し斜めの運転姿勢を強いられる。シートの座り心地も優秀とはいえず、数時間運転したら、筆者は腰が若干痛くなった。
ルーテシアは、内装素材がワンランク上だとひと目でわかる。ダッシュボードにもファブリックがあしらわれ、おしゃれで上質な雰囲気を醸し出している。
どちらも、ダッシュボード上にはインフォテイメント用のタッチモニターが備わり、アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応する。画面が大きいのはスイフトの方。ルーテシアのシステムも、操作性は良い。
車内の小物入れの数では、ルーテシアが有利。だが、全長が3860mmに対し4053mmと長いにも関わらず、荷室や後席の空間では、目立ったゆとりは得ていない。
荷室容量は約250Lで拮抗。必要なら、スイフトにもリアシートには大人3名が座れる。サイドウインドウが狭めで、少し薄暗い印象ではあるけれど。
この続きは、スズキ・スイフト ルノー・ルーテシア 日仏2台比較(2)にて。
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