問題の概要と世間の反応
北海道小樽市にある「おたる水族館」で、来館者向けに無料で貸し出されているベビーカーが相次いで行方不明になる事態が発生している。運営側は盗難の可能性を示唆し、SNS上では「善意を踏みにじる行為だ」として批判が殺到。水族館側も「今後もこのような事態が続けば、貸し出し自体を中止せざるを得ない」と頭を悩ませているという(『ENCOUNT』3月24日付け記事)。
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水族館の公式SNSが「2月と3月に計2台が行方不明になった」と投稿すると、すぐに多くのコメントが寄せられた。
「窃盗犯罪者が親とは情けない」
「性善説が崩壊している」
「海外観光客の影響ではないか」
といったような意見が相次ぎ、無料貸し出しの継続は難しいのではといった現実的な懸念も上がった。
では、この問題の本質はどこにあるのか。単純に悪質な持ち去り行為として非難するだけでなく、冷静に構造的な問題を考えることで、新たな解決策が見えてくるのではないだろうか。
世界初の繁殖成功とその意義
おたる水族館は、北海道小樽市にある水族館で、小樽水族館公社が運営している。1958(昭和33)年に北海道大博覧会の「海の会場」として建設され、翌年「小樽市立水族館」として開館。1974年には第三セクター方式に移行し、現在に至る。
館内には、豊富な魚介類を展示する本館や、イルカショーを楽しめるイルカスタジアム、アザラシやペンギンなどを飼育する海獣公園があり、隣接する遊園地「小樽祝津マリンランド」とともに構成される。特に海獣公園は、自然の入り江をそのまま活用した施設で、野生のトドやアザラシが迷い込むこともある。
保護や繁殖活動にも力を入れており、2004(平成16)年には世界で初めてワモンアザラシの繁殖に成功。日本動物園水族館協会の繁殖賞を北海道内の水族館で最多となる16回受賞している。また、北海道大学との共同研究により、2002年からネズミイルカの生態研究も進めている(『北海道新聞』2024年2月21日付け記事)。
「性善説の崩壊」と片付けてはいけないワケ
今回の問題を受け、SNSではもはや日本では性善説は通用しないとの声が目立った。しかし、本当に性善説の崩壊なのだろうか。
そもそも、公共の場での無料貸し出しサービスが成り立つのは、一定のルールが守られていることが前提だ。ベビーカーに限らず、無料で利用できるものが持ち去られるケースは過去にも報告されている。
例えば、駅や商業施設で設置されている傘の無料貸し出しサービスでは、回収率の低さが問題となり、多くの施設が有料化やデポジット制(一定の預かり金を支払い、使用後に返却するとその預かり金が返金される仕組み)に移行している。
水族館の貸し出しベビーカーもまた、誰でも自由に使えることが持ち去りリスクを高めていた可能性がある。性善説が崩壊したのではなく、こうした仕組みの運営自体に弱点があったと考えるほうが適切だろう。
「善意のサービス」は持続可能か
水族館が無料で貸し出しているベビーカーは、運営側の負担によって成り立っている。寄贈品も一部あるものの、大半は水族館が経費で購入したものだ。1台あたりの価格は数万円にのぼり、持ち去られるたびにコストが増加する。
この状況が続けば、無料貸し出しの維持が難しくなるのは避けられない。施設側としてもサービスを提供し続けたい意向はあるが、損失が大きすぎるというジレンマを抱えている。対策として考えられるのは、
・有料化
・デポジット制度の導入
・QRコードやアプリを活用した管理方法
である。テーマパークではベビーカーの貸し出しを有料としているケースが多く、保証金を支払い、返却時に一部または全額を返金する仕組みが一般的だ。水族館でも同様の方法を導入すれば、一定の抑止力になるだろう。また、QRコードをスキャンして貸し出し・返却を管理する仕組みや、アプリでの予約制を導入することで、持ち去りリスクを軽減できる。
SNSでは「海外観光客が原因では」といった憶測も飛び交っているが、水族館の担当者は「はっきりしたことは分からない」としており(『ENCOUNT』3月24日付け記事)、特定の層を非難するのは早計だ。むしろ、重要なのは「なぜ持ち去られたのか」という構造的な要因を探ることだろう。
具体的な改善策としては、まずベビーカーのデザインを変更する方法がある。例えば、おたる水族館のロゴを大きく入れたり、目立つ色や形状にすることで、持ち帰りにくくする工夫が考えられる。
また、返却を促す仕組みを強化することも有効だ。返却場所をわかりやすくするほか、出口付近でスタッフが声かけを行えば、意図せぬ持ち帰りを防げる可能性がある。さらに、監視体制を見直し、貸し出し時の手続きを強化することも対策のひとつだ。監視カメラやGPSを活用すれば、持ち去りの抑止効果も期待できる。
無料貸し出しという利便性を維持するためには、持ち去りを防ぐ仕組みの導入が不可欠だ。運営側と利用者の双方にとって最適なバランスを模索する必要がある。
善意に頼らない仕組みへ、公共サービスの岐路
今回の問題に対し、SNSでは「善意を踏みにじる行為」として怒りの声が多く上がった。もちろん、無料の貸し出しベビーカーが持ち去られることは問題だ。しかし、単に「許せない」と感情的に反応するだけでは、本質的な解決にはつながらない。
水族館の運営側としても、善意で提供しているサービスを中止したくはないだろう。だが、持ち去りが続けば、維持は難しくなる。そのため、無料貸し出しという仕組み自体を見直すことが求められている。
ベビーカーに限らず、公共の無料サービスは誰もがルールを守ることが前提となっている。しかし、実際には持ち去りや無断使用といった問題が発生し、サービスの継続が難しくなることもある。
この問題の本質は、善意を信じるか否かではなく、どのようにすれば持続可能な仕組みを作れるか、にある。今後、類似のケースが起こることを考えれば、より現実的な対策を講じることが求められるだろう。
感情的な反応ではなく、仕組みの改善をどう進めるか。それこそが、今私たちが考えるべきポイントではないだろうか。
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