■いまはもういない 思い出の中で輝く日産の名車たち
2019年に、日産のスポーツカーの代名詞ともいえる「フェアレディZ」が生誕50周年を迎えました。そして同年5月に50周年を記念したアニバーサリーモデルの予約注文を開始し、受注は2020年3月末をもって締め切られます。
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長い歴史を刻んだフェアレディZだからこそ、の記念限定車ともいえますが、そもそも現行モデルでなければこのような“お祝い事”は訪れません。ところが、消えた日産車の歴史を振り返ると、2020年に「○○周年」を迎えたはずのモデルが存在します。
そこで、2020年が節目の年となるはずだった、いまは存在しない日産車を5台ピックアップして紹介します。
●40周年のはずだった「レパード」
1980年に登場した初代「レパード」は2ドアハードトップ&4ドアハードトップで、なかでも4ドアクーペともいえるモデルは、広いグラスエリアの6ライトで、きわめて斬新かつ意欲的なデザインを採用したモデルでした。
1981年にトヨタから「ソアラ」がデビューするまで、ライバル不在の高級パーソナルクーペだったのです。
そのライバルたるソアラの大ヒットを横目で睨みながら、1986年に2代目へモデルチェンジします。
登場した2代目モデルは、意欲作だった4ドアクーペがラインアップから落とされ、ソアラのグラスエリアそっくりなプロポーションの5ナンバーボディを纏った2ドアハードトップのスペシャリティモデルでした。
サスペンションは前がストラット式、後ろがセミトレーリングアーム式で、メカニズムは基本的に先代からキャリーオーバーとし、最高出力185馬力の3リッターV型6気筒ターボを筆頭に、3種類のエンジンを搭載しました。
しかし、ライバルであるソアラには太刀打ち出来ず、惨敗を喫します。クーペをラインナップしたレパードの歴史は、1992年に終売した、この2代目までです。
その後は、セダンのモデル名にレパードが使われるなるなど迷走を続けますが、セダンとしても2005年で生産終了となりました。
●30周年のはずだったプリメーラ
「プリメーラ」は、1990年に「快適性と走行性能を高次元で両立したコンフォート・パッケージ・セダン」をテーマに掲げ、初代モデルがプリンス店からデビューしたミッドサイズセダンです。
その年の秋から英国日産が本格稼働し、そこで生産する欧州戦略車でもありました。そして、欧州車のような締め上げられた脚を持った高いドライバビリティを持つことでも知られています。
ボディサイズは全長4400mm×全幅1695mm×全高1385mm、ホイールベース2550mm、車重1100kgから1150kgのコンパクトで軽量なボディに、2リッターと1.8リッターの直列4気筒エンジン(2リッター150馬力/1.8リッター110馬力)を搭載する2WDセダンでした。
足回りも凝った設計で、前はマルチリンク式、後ろはパラレルリンク・ストラット式の4輪独立式が採用されました。
1995年に発売されたキープコンセプトの2代目モデルは、先代の成功を受けてサニー店でも兄弟車「プリメーラカミノ」が併売されます。
1997年にはスバル「レガシィツーリングワゴン」のヒットを睨んで、190馬力の可変バルブタイミングエンジンを搭載したステーションワゴン仕様を追加します。
その後、2001年に登場した3代目は、全長4565mm×全幅1760mm×全高1480mm(セダン仕様)のボディサイズで、3ナンバーモデルとなります。エンジンも2.5リッターが追加搭載され「ブルーバード」よりも上級モデルとなりました。
しかし、歴代が築いてきたスポーティなセダンと異なる方向性が受け容れられず、2005年に国内販売をひっそりと終えました。
●30周年のはずだった「アベニール」
「アベニール」は、1990年にデビューしたステーションワゴンで、実質的にはプリメーラワゴンという位置づけといわれていました。
パワーユニットなどもプリメーラとほぼ同じ構成ですが、リアサスペンションはコンパクトなトーションビームとして、荷室への張り出し干渉を極力避けた合理的設計が特徴でした。
プリメーラが初代からモデルチェンジした後も初代が継続生産され、1995年にターボと4WDを搭載し、さらに最高出力210馬力を発揮するエンジンを搭載した「GT」が追加されます。
1998年にはモデルチェンジして2代目となり、エンジンは210馬力を発揮するターボエンジンの「GT4」のほかにディーゼルも含めて全4種を搭載します。なお、リアサスペンションをマルチリンク式にアップグレードして走りのワゴンを標榜しました。
■50周年、60周年を迎えられなかった日産車とは?
●50周年のはずだった「チェリー」
日産初となる前輪駆動の小型車「チェリー」をつくり上げたのは、中島飛行機出身の旧プリンス自動車の技術者集団でした。
軽量かつコンパクトなボディで、欧州で主流となり始めたFWD方式を採用して1970年に登場したのです。
横置きエンジンに前輪駆動、コンパクトなボディですが、広い室内を獲得するという意欲的なコンセプトから生まれた画期的なクルマでした。
ボディはじつにコンパクトで、4ドアセダンのボディ寸法は、全長3610mm×全幅1470mm×全高1375mm、ホイールベース2335mmです。70年に2代目にモデルチェンジした同社の「サニー」に比べて200mm以上短いのですが、ホイールベースは逆に35mm長かったのです。
そのコンパクトさは、現在の軽自動車規格寸法である全長3400mm×全幅1480mmと比べると一目瞭然です。長めのホイールベースは、後席居住性確保に有効で、旧プリンス系開発陣が目指した「サニーよりもコンパクトでいながら、広い室内」を獲得するための設計でした。
1974年に2代目「チェリーFII」に生まれ変わります。ボディはかなり大型化し、全長3825mm×全幅1500mm×全高1315mmとなり、初代チェリーの強烈な個性だったシンプルでありながら強いボディスタイルは、影を潜めてしまいます。
当時、ほかの日産車においても囁かれていた「没個性的」なボディスタイルとなってしまい、1978年に後継車の「パルサー」のデビューとともに終売となりました。
●60周年のはずだった「セドリック」
「セドリック」は、トヨタ「クラウン」と共に戦後日本の高級セダンカテゴリーをけん引してきたクルマです。1960年のデビュー時こそ直列4気筒エンジンを搭載していましたが、その歴史は国産の2リッター直列6気筒エンジンの歴史であるともいえます。
1971年に登場した3代目セドリックには、日産の名機ともいえるエンジン「L型」が搭載され、国産車で初めてスポーティな4ドアハードトップが登場します。
ボディサイズは5ナンバー枠いっぱいの全長4690mm×全幅1690mm×全高1455mm、ホイールベース2690mmの国産フルサイズセダンとなりました。
1983年、それまでの伝統だった直列6気筒のL型エンジンに代わってV型6気筒「VG型」エンジンに換装した6代目が登場します。そのVG型も1995年に登場する9代目から新世代「VQ型」エンジンに換わります。
1999年に、最後のセドリックとなる10代目セドリックが登場。それまでの四角いイメージのエクステリアが一新され、一見コンパクトに見えるボディは全長4860mm×全幅1770mm×全高1450mm、ホイールベース2800mmとなりました。
しかし、セダンの人気低迷やライバルであるクラウンを超えることはできず、2004年に販売を終えました。
セドリックとともに「グロリア」が「フーガ」に統一され、現在に至ります。
※ ※ ※
日産車はかねてより、モデル発足後の「ブランドを育てる」ことに苦戦しているといわれ、今回ピックアップしたモデル以外にも消えた名車は多くあります。
例えば「ブルーバード」や「シルビア」、「サニー」、「パルサー」、「ローレル」、「セフィーロ」などです。
存続に対してシビアな傾向は現在も続いているようで、現行モデルでも生産終了が囁かれるモデルが複数存在します。
販売的な面では仕方のないことですが、かつて人々の生活に華を添えた名車たちが去ってしまうのは、非常に寂しいものです。
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