コンセプトが理解しにくく人気が出なかったモデルも……
クルマというのは内容が良くても、コンセプトがわかりにくかった、時代に合っていなかったなど、運や巡り会わせで残念ながら売れなかったもののたくさんある。そんな悲運の名車たちをピックアップしてみよう。
業界騒然! 衝撃コンセプトでも時代を先取りしすぎて売れなかったクルマ5選
1)トヨタ・プログレ(1998年登場)&ブレビス(2001年登場)
プログレ&ブレビスは実質5ナンバーサイズのなかで、かつてのセルシオ級のクオリティを持つ「小さな高級車」で開発された、輸入車でいえばベンツCクラスのようなFRの4ドアセダンである。それだけに静粛性や塗装に代表される各部のクオリティなどクルマ自体のできは素晴らしいものであった。
しかしとくにプログレのスタイルが今一つだったことや、クオリティの高いクルマだけに価格は安くなく、「ならばもう少し頑張ってクラウンを買ったほうが」というユーザーの心理、「小さな高級車」というコンセプトが当時の日本人には理解しにくかったといった理由で販売は振るわず、残念ながら一代限りで絶版となってしまった。
だが、プログレ&ブレビスのコンセプトは日本人の高齢化が進み、大きなクルマからほどほどのサイズのクルマに乗り換える人が増えている今こそ必要なものだけに、5ナンバーサイズは無理としても現在のプリウスくらいのボディサイズでプログレ&ブレビスの現代版を見てみたい気もする。
2)日産リーフ(初代モデル・2010年登場)
リーフの初代モデルも現行型となる2代目モデルと同じ、VWゴルフなどと同じミドルクラス、欧州流に表現すればCセグメントに属する電気自動車専用車として登場。
電気自動車だけに静かでスムースかつ力強い加速はもちろん、重いバッテリーを床下に積むためボディ剛性も強固。おかげで乗り心地もよく、重量級ながらハンドリングも軽快であり、運転して楽しいクルマだった。その上価格も補助金を使えば初期モデルで320万円程度とそれほど高くなく、使い方がハマれば素晴らしいクルマだった。
しかし「使い方がハマれば」と書いたとおり、初期モデルは航続距離が公表値で200km(実用で130から140km)だったため、遠出の際の不安があった。さらに自宅駐車場に充電設備が欲しいのに加え、当時は外部の急速充電器の少なさに代表されるインフラの問題もマイナス面。また、多数決を取れば「カッコ悪い」という人が圧倒的に多い分かりにくいスタイルも敬遠される原因となった。
リーフは日産のなかでも大切にされていたモデルのため、7年間のモデルサイクルで改良や大容量バッテリーの搭載による航続距離の大幅な延長も行ったものの、最後まで初代モデルの販売は低調に終わった。
その反省もあり、リーフは2017年にシャープなスタイル、運転支援システムプロパイロットやほぼアクセル操作だけで加減速ができるワンペダルなどの先進装備をも持つ2代目モデルにフルモデルチェンジされ、初代リーフの初期モデルを基準にすれば約2.5倍となる62kWhというさらに大きなバッテリーを搭載するモデルも設定。販売も盛り返しており、電気自動車の日本代表として頑張って欲しいところだ。
日本ではイマイチでも海外でウケているモデルも存在!
3)ホンダ・アコード(8代目モデル・2008年登場)
アコードは歴代シビックやCR-Vと並ぶ、世界的に見ればホンダにとって大黒柱となる1台である。2008年登場の8代目モデルは4ドアセダンと、ツアラーと命名されたステーションワゴンを持つ。とくに4ドアセダンは、一見現在のカムリやレガシィB4のようなアメリカや中国などアジア圏向けのサイズの大きいモデルである。
しかし乗ってみると、この世代のアコードはホンダの高級ブランドであるアキュラのTSXを日本向けに仕立てたモデルだったこともあり、乗り心地や静粛性に代表される各部のクオリティは「当時のレクサスより上ではないか」と感じるほど高く、その割に価格は300万円程度と、今になるとお買い得なクルマでもあった。
しかし内容の良さがまったくユーザーに伝わらず「単に大きなクルマ」と認識されてしまったことや、6代目と7代目のアコードで、ニッチなファンがいたスポーツモデルのユーロRがなくなってしまったのもあり(これはボディサイズの拡大などを考えればやむを得ないところではあるが)、浮上することなく9代目モデルにフルモデルチェンジされた。
4)スバル・エクシーガ(2008年登場)
スバルは1990年代まで軽自動車のサンバーの乗用仕様を拡大したドミンゴ、2000年代初めに当時GMと資本関係にあったこともありGMグループにあったオペルザフィーラをスバル向けに手直ししたトラヴィックがあったくらいで、3列シートを持つミニバンには熱心ではないメーカーだった。
その流れを断ち切ったのがエクシーガである。エクシーガはデビューの翌年に登場した5代目レガシィのツーリングワゴンの全高を上げてミニバンにしたような成り立ちで、ミニバンにしては全高を低くした3代目と4代目のホンダオデッセイに近いモデルだった。
エクシーガはステーションワゴンに近いミニバンながらシッカリ使える3列シートを持ち、FF車も設定。価格もリーズナブルで、スバルらしいターボ車も設定するなど、完成度の高いモデルであった。しかし販売成績は途中エンジンバリエーションやアイサイトの追加、最後はクルマ自体を最低地上高を若干上げたクロスオーバー7に移行するなどテコ入れも懸命に行ったものの、平凡に終わった。
エクシーガの販売が振るわなかったのは、登場した時点でミニバンの流れがスライドドアを持つ全高の高いものに移っており、エクシーガや3代目と4代目のオデッセイのようなヒンジドアのミニバンに対する需要自体が少なくなっていたことに尽きる。いろいろ難しい部分もあるようだが、アメリカ専売の3列シートを持つSUVであるアセントを日本にも導入し、エクシーガの無念を果たして欲しいところだ。
5)スズキ・キザシ(2009年登場)
キザシはスズキが今のところ社史唯一となるカムリやレガシィB4をターゲットに北米やアジア圏向けに投入した4ドアセダンである。登場時から注文が入ってから生産する完全受注生産だったことから大量販売する気はないクルマにも見えた。しかし乗ってみれば細部の熟成不足はあったものの、はじめてつくったこのサイズのクルマにしては望外の完成度を持つクルマで「育てていけばいいクルマになりそう」と感じたものだった。
だがスズキというメーカーにこのクラスのクルマのイメージがまったくないことが致命傷になりキザシはまったく売れず、販売期間の終盤は捜査用覆面パトカーとしての販売が中心になり、絶版となった。
こういったクルマはピックアップした5台以外にも探してみると意外にあるもので、人気がなかっただけに中古車なら人気車より安いということも多々ある。そんなクルマだが、クルマ自体に大きな問題があることは少なく、こういったクルマを実用に割り切って使ったり、大切に乗るというのも「お金は掛けずに豊かなカーライフを送る方法」としてはなかなか面白い。
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