4月15日、2023年のWEC世界耐久選手権はポルトガル南部のアルガルベ国際サーキットで第2戦の予選が行われ、トヨタGAZOO Racingの2台のGR010ハイブリッドがワン・ツーを飾り、決勝のスターティンググリッド最前列を独占した。
予選を終えた土曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。
ライバルとの差に「少し驚いている」と可夢偉。「決勝は接戦になる」とハートレー/WEC第2戦予選
■骨折しているブエミも“通常どおり”
トヨタGAZOO Racingのブレンドン・ハートレーが予選で記録したラップタイム1分30秒171は、アルガルベ国際サーキットにおけるハイパーカーのコースレコードとなった。以前の記録は、2021年ポルティマオ8時間レースの予選でマシュー・バキシビエールが樹立したもので、ハートレーはこの記録を0.193秒更新した。
トヨタは、セブリングの開幕戦でフェラーリにポールポジションを奪われた後、今回は予選に力を注いだと、ハートレーは説明している。
「ここでは、予選に向けてマシンを可能な限り最適なものにすることに、もう少し集中したと思う」と彼は語った。
「僕の感覚では、おそらくフェラーリは逆の方向に進んだんじゃないかな」
トヨタGAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカルバセロンは、2021年のポールタイムを更新したものの、ポルトガルのサーキットは2年前より遅くなっていると示唆した。前回のレースは直前に路面の最舗装がなされていたためグリップが高かったが、今回はその効果が薄れてきていることをその原因に挙げている。
なお、8号車のセバスチャン・ブエミは、フォーミュラEのサンパウロ戦におけるアクシデントで手の骨を折ってしまったが、日曜日の決勝では通常どおりスタートを担当し、レース中も通常のドライビングスティントを行う予定であるという。
「FP1では我々も彼も少し心配していたが、FP2、FP3では問題ないようだ」とバセロンは述べている。
■今回のフェラーリ499Pはレースペース重視?
トヨタが予選に力を入れた一方、フェラーリはポルティマオに向けてレースペースに重点を置いていることを示唆した。
フェラーリのドライバー、ジェームス・カラドは次のように語っている。
「予選ではもっとポテンシャルを発揮できたはずだ。フリー走行3回目以降、クルマの全体的なバランスに変化があり、それは特に1コーナーとメインブレーキングセクションで顕著に現れた」
「だから、タイヤがフレッシュなうちに1回目のアタックで良いラップを取るチャンスを逃してしまったんだ」
■3番手タイムをマークも、グリッド降格
LMP2クラスのユナイテッド・オートスポーツ22号車オレカ07・ギブソンは、予選での妨害行為により3グリッド降格が決定した。
これは、プレマ・レーシング9号車のベント・フィスカールがアタックラップを開始したタイミングで、22号車のフィル・ハンソンがターン2において9号車を妨害したため。ハンソンはこのセッションでクラス3番手タイムを記録していた。
■PP車両に発生していたトラブル
プレマのもう1台、63号車ではミルコ・ボルトロッティがポールポジションを獲得したが、予選のスタートではピットレーンでエンジントラブルが発生するという波乱があった。
「パワー・サイクル(システムの再起動)をして何度か再始動しようとしたんだ」とボルトロッティは振り返っている。
「無線で『エンジンを再始動できない』と訴えたんだ。そのとき、メカニックが助けに来てくれた。幸運なことに、彼らはすぐにエンジンを始動させることができたから、それほど時間をロスすることなく、ピットレーンを離れることができたんだ」
なお、ボルトロッティがベクター・スポーツのガブリエル・オーブリにつけた0.001秒の差は、これまでのWEC LMP2予選で記録された最小のギャップである。
プレマはその後、メカニックがピットのファストレーンで63号車のエンジンカバーを外してエンジンの問題に対処したとして、1000ユーロ(約15万円)の罰金を科せられている。
また、同じくLMP2クラスのインターユーロポル・コンペティションは、ピットレーンの作業エリアではなく、ガレージでタイヤを装着したことにより、1000ユーロの罰金を科せられた。
■掲げられたブリーンへの追悼メッセージ
ORT・バイ・TFの25号車アストンマーティン・バンテージAMRをドライブするチャーリー・イーストウッドのヘルメットには、テスト中の事故で亡くなったラリードライバーのクレイグ・ブリーンを追悼する特別なステッカーが貼られている。
「彼はゴーカートの時代に、僕と僕の兄弟の間の年齢だった」とイーストウッドは語っている。
「僕らはアイルランドでともに過ごし、その後イギリスやヨーロッパに渡った。昨日、誰かが送ってくれた写真には、5歳か6歳の頃の僕と、その横に彼の姿が写っていた」
「彼を失ったことは、とても大きい。ソーシャルメディアのコメントを見ると、誰も彼について一言も悪い言葉を言っていないこと分かるだろう」
同様に、LMP2チームのベクター・スポーツは、オレカのミラーにトリビュートメッセージを追加した。ベクターのドライバー、ライアン・カレンは、ブリーンと同じくアイルランド出身である。
■次戦は1台増のキャデラックVシリーズ.R
今年ハイパーカークラスにデビューしたキャデラック陣営は、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているアクション・エクスプレス・レーシング(AXR)のキャデラックVシリーズ.Rを第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースに参戦させる予定だったが、スペース不足のため、参戦申請が却下されたのだという。
AXRは第4戦ル・マン24時間レースには参戦することが決まっている。
GMのスポーツカーレーシング・プログラムマネジャーのローラ・ウォントロップ・クラウザーは、次のように述べている。
「我々は、もっと多くの車両をスパに持ち込むことができれば、感激していたことだろう。我々は、シリーズとのパートナーシップ、そして彼ら(シリーズオーガナイザー)が適合できるものとを、とても緊密に連携させなければならない」
スパにおいて、AXRではなくチップ・ガナッシ・レーシングの2台目(3号車)がエントリーに選ばれた理由を聞かれた彼女は、こう答えた。「そのプログラムのために決断したことであり、(CGRは)すべてのインフラを整えることができたからだ。アクション・エクスプレスのメンバーも参加する予定にしている」。
キャデラックは、チップ・ガナッシ・レーシングのスパでの追加参戦のために、レンガー・バン・デル・ザンデとセバスチャン・ブルデーと並ぶ第3ドライバーを加えることを検討したと、クラウザーは述べている。
IMSAのミシュラン・エンデュランス・カップで通常そのクルーの一員であるスコット・ディクソンは、NTTインディカー・シリーズとの日程重複のためスパには出場できない予定だ。Sportscar365は、彼ら3号車は、ドライバー2名編成でスパ戦を戦うものと理解している。
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2023年WEC第2戦ポルティマオ6時間レースは、4月16日日曜日の正午(日本時間20時)にスタートする予定だ。
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