軽トラック業界はかつてスズキ、ダイハツ、ホンダ、スバル、三菱という5社が自社開発車を揃えるというバライティに富んだジャンルだった。しかし、10年ほど前から撤退が相次ぎ、現在オリジナルとなるモデルはスズキキャリイとダイハツハイゼットトラックの2強状態となっており、そのほかはこの2台のOEMである。
現在の2強以外でかつてあった軽トラックはホンダアクティ、スバルサンバー、三菱ミニキャブだったが、そのなかでひときわマニアックな存在だったのがサンバーである。
一度はホンモノの軽トラの楽しさを味わうべし! クルマ好きがスバルサンバーを崇める理由とは?
サンバーは軽トラック&軽1BOXバンという商用車ということもあり、目立たない存在だったが、後述するように隠れた名車であり、ここでは自社開発車の生産終了から今年で10年が経ったスバル自社製サンバーを、サンバーオーナーだったことがある筆者が振り返ってみた。
本文/永田恵一、写真/永田恵一、SUBARU
■サンバーが歩んできた軌跡
スバル自社製サンバーの大きな特徴であるRRレイアウトと軽トラックながら四輪独立サスペンションを使うという点は、1961年登場の初代モデルからの伝統だった。この2点は初代サンバーのパワートレーンやサスペンションがスバル360のものに由来するためで、この2点は「トラクションの高さや荷物へのやさしさ」というサンバーの大きな武器となった。
サンバーは初代モデルからトラックと1BOXバンが設定され、サンバーの歴史で1度目の大きなターニングポイントとなったのが1973年登場の3代目モデルだ。3代目モデルは2気筒エンジンという点こそ2代目モデルまでと共通ながら空冷から水冷への変更、モデルサイクル中盤に軽規格の改正で排気量が360ccから550ccへ拡大されたことへの対応のほか、軽トラックを使った個人事業主の運輸組合である赤帽が使う赤帽専用車の登場という大きな話題もあった。
3代目モデルから加わった赤帽サンバー。厳しい赤帽からの要望に対し、スバルが赤帽専用車を引き受けたという経緯で生まれたモデル
赤帽が使う軽トラックの使われ方は走行距離の長さやペースなど、軽トラックにとっては非常に過酷なものである。そのため、当時の通常の軽トラックでは不具合も多く、赤帽は赤帽の使われ方に対応した軽トラックの開発をメーカーに打診、それを引き受けたのがスバルだった。
赤帽サンバーは運送業に必要な装備の追加はもちろん、走行性能も主に耐久力向上のため、エンジンはプラグやシール類の強化(エンジンのヘッドカバーはインプレッサWRX STIのような赤ちぢみ塗装されたもの!)、ブレーキの強化などが行われた軽トラックとしてはスペシャルなモデルだった。
なお、赤帽サンバーはサンバーがハイゼットのOEMとなった現在もスバル自社製時代ほどの手は加えられていないものの、設定が続いている。
■2回目のターニングポイントとなったのは5代目モデル
サンバーにとって2回目のターニングポイントとなったのが1990年登場の5代目モデルだ。
このモデルはボディサイズと550から660ccへの排気量の拡大という軽自動車規格の改正に対応したほか、エンジンは当時のスバルの軽自動車同様2気筒から何と4気筒となり、軽トラックにはほとんどない過給機付となるスーパーチャージャーも設定。また、5代目サンバーは長崎県のハウステンボスで使われたレトロなフロントマスクを持つ特装車を、クラシックの車名で市販化したという話題もあった。
1999年に登場した6代目サンバー。スバル自社製としてはこの6代目が最後となる(写真は2002年式)
1999年に登場したスバル自社製としては最後となる6代目モデルは、衝突安全性向上のための軽規格改正に対応しボディサイズの拡大や短いノーズを持つという大きな変更もあったが、全体的には5代目モデルを正常進化させたモデルだった。
6代目サンバーはスバルらしく毎年のように改良を行い、販売も堅調だったものの、スバルの軽自動車の自社開発からの撤退もあり2012年2月に生産を終了。なお、サンバーを生産していた生産ラインは86&BRZの生産ラインとなっている。
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加速時にクォーという過給音がリアから聞こえ、高速でも流れに乗るのは容易。空荷の時にはもう一速欲しいところです。