SUVならではのワクドキ感の復活、それが新型RAV4の使命
1994年に登場した初代によって、アウトドアにも都会にも似合うスモールSUVという新たなジャンルを開拓したトヨタRAV4。あれから25年。現在では世界180以上の国と地域で販売されており、2018年の世界販売台数は83万台を突破。まさにトヨタの屋台骨を支える基幹車種と呼べるほどの成長を遂げている。
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そんな重要車種が5代目(4代目は日本未導入)となる新型に生まれ変わった。今回のフルモデルチェンジは、いわば「絶対に失敗が許されない」プロジェクトと言えるのではないだろうか。
だが、こうしたわれわれの問いに対して、新型RAV4の開発責任者である佐伯禎一さんは「むしろ逆ですね。失敗を恐れずに挑戦すること。それが今回の開発で大切にしてきたことです」と一蹴する。
「北米においては、昨年はついにヒットモデルのカムリの販売台数を抜くほどの量販モデルとなりました。そんな状況を考えると、確かに守るべきものは多いと思います。市場の要望に合わせてクルマを造っていくことも大切でしょう。けれど、失敗を恐れるあまり八方美人になってクルマを造ってしまうと、どんなによくできても『アイ・ライク・イット』にしかならないと思うんです」
「私たちが目指したのは、ライクではなく、お客さまに『アイ・ラブ・イット』と思っていただけるクルマです。そのために必要なのは、失敗を恐れないこと。開発のトップから、ひとりひとりの若いエンジニア、さらには営業や広報といったあらゆる部署がその想いを共有して、開発をやり抜くことが必要だと考えました」
佐伯さんのこうした強い想いの裏には、SUV市場への強い危機感があるという。
「拡大を続けているSUV市場ですが、そのことに逆に怖さを感じています。マーケットの拡大にともないお客さまの層も拡がり、求められる要素も増え、すごくカーライクなSUVも増えています。その結果、SUVの本質がなんとなく見えにくくなっています。このままいくと、SUVならではの魅力はどんどん薄れてしまうはずです。そしてある日突然、マーケットの縮小が始まってしまう。こうした現状を突破する意味でも、失敗を恐れないクルマづくりが必要だと考えました」
薄まりつつあるSUVならではワクドキ感の復活、それが新型RAV4の使命なんですと語る佐伯さん。「80万台という数字を考えると、失敗は確かに怖いですよね。けれどその一方で、80万台という数字だからこそ挑戦する意義があると思うんです。もしも新型RAV4に刺激されて、同じようにチャレンジ精神で作ったSUVがマーケットに増えれば、お客さまの選択肢も増えますし、市場全体の活性化にもつながります。83万台以上も販売されているRAV4だからこそ、導火線に火を点けることができると思うんです」
チーム全員がひとつのゴールに向かうこと
量販モデルではなく、強烈な個性を持つクルマを。そんな想いで造り上げられた新型RAV4では、数値による性能評価だけでなく、データに表れにくい「官能評価」を従来以上に重視した開発が行われた。
そこに大きな貢献を果たしたのが、「技術開発の匠」の称号を授けられた性能づくりのための技能系トップたちだ。この「技術開発の匠」とは、開発における人材育成を牽引するために作られたトヨタ独自の制度のこと(以下「匠」と表記)。あくまでも社内の技能向上のための制度であるため、社外に向けて積極的に発信されることもなく、具体的な人数なども公表されていない。
基本的には、開発プロジェクトがある程度進んだ段階に入ってから、車両の味付けなどの評価作業や、仕上がりレベルのさらなる引き上げに寄与するといったケースが多い。だが、新型RAV4では、コンセプトの立案という初期の段階から、3名の「匠」が参画し、プロジェクトの最後まで携わっている。
その3名とは、車両全般・商品力の匠である佐藤 茂さん、操縦安定性・乗心地の匠、片山智之さん、そして駆動系・ドライバビリティの匠である佐藤浩喜さんだ。開発責任者の佐伯さんは、彼らとの出会いを次のように振り返る。
「トヨタには評価ドライバー育成のための運転教育制度があります。私もチーフエンジニアという立場で教育を受けたんですが、そのときに指導してくれたのが佐藤 茂だったんです。いろいろなサーキットで、走行時のGの立ち上がりや描き方、そのためのステアリングの滑らかな切り方など、さまざまなことを教えてもらいました。そこには将来を担う評価ドライバーたちもいて、私は彼らと一緒に教育を受けたんです。そこで感じたのは、彼らの感性のすごさです。カタログ数値に表れない『官能』に訴えかける部分について、素晴らしい感度を持っているんです」
佐藤 茂さんが指導員を務める育成プログラムは、それから佐伯さんに対し3年にわたって続けられた。回を重ねるうち、ふたりはいつしか自分たちが造る理想のクルマ像について熱く語り合うようになっていた。
「佐藤 茂の言葉で印象的だったのは、トヨタのトップドライバーは必ずしもタイムを競い合うわけじゃないということ。走るうえで一番厳しい条件であるサーキットでも、いかに気持ちよく走らせることができるか。タイムを縮めること以上に、何度でも思った通りに、同じ操作、同じ軌跡で走れるクルマにすることが大切なんだと。そこで思ったんです。この考えを生かしたらどんなRAV4ができるんだろうと」
それがきっかけとなり、佐伯さんは本来なら車種の担当はしない「匠」に、一緒に新型RAV4を造ってくれと頼みこんだ。佐藤 茂さん自身も、以前から考えていた理想のクルマづくりを実現する絶好の機会だったと振り返る。
「開発現場では数値をクリアすることが基準を満たすことになるわけですが、その基準を決めているのは機械ではなく人間です。その基準を引き上げていくためには、クルマの進化とともに官能も磨き上げていかなければなりません。とはいえ、官能評価とは物差しがない世界。デザインなら、スケッチや立体モデルによって伝えることができますが、官能評価はできあがった現物でしか伝える術がないんです。最初から最後まで新型車の開発に携わることができるなら、当初から高い目標を設定して、そこに向かったクルマづくりができます。できあがった現物によって、より高度な『官能』を示すことができれば、社内の基準を進化させることもできるはずです」
本来なら、仕上げ部分の合格点を引き上げて、その過程を通じて人材の技術向上を図ることが多い「匠」が、3人も揃って車種担当さながらに関わるのはきわめてイレギュラーなこと。「無理を言って引っ張り込んだ」という3人の参加は、新型RAV4の開発に大きなアドバンテージをもたらすことになったと語る佐伯さん。
「私が開発メンバーたちにお願いしたのは、ひとりひとりが『クルマ屋』になってほしいということでした。現代のクルマは電動化や自動運転など、高度な機能が凄まじく増えているため、高い専門性が必要ですし、各エンジニアに担当が割り振られます。ですが、全員が一台のクルマというひとつのゴールに向かって行かなければ、どんな技術や機能があっても宝の持ち腐れになってしまいます。3人の『匠』はクルマ屋としてのクルマの造り方をすごくよくわかっていて、私の考えをしっかり実現する後押しにもなってくれたんです」
「匠」のひとりである片山さんが、ひとつの例を挙げてくれた。
「大きなくくり方をすると、操縦安定性は横Gの世界、そしてドライバビリティは前後Gの世界です。それぞれの担当領域ごとに味を磨いていくわけですが、両者それぞれが理想通りに仕上げても、一台のクルマとして合体させると、必ずしもベストにならない場合があるんです。理想はハンドリング(横G)を仕上げる前に加減速がスムースな前後Gをしっかり確立しておくことです。ふたつの領域を並行して進めることはそれぞれの熟成時間が長く取れるというメリットがありますが、たとえ自分の担当する横Gの熟成時間が短くなっても、先に前後Gを煮詰めておいたほうが絶対にいいクルマに仕上がるんです。クルマが高度になって専門性が高くなればなるほど、こうした順序に関する議論は少なくなりがちですが、新型RAV4では、自分が描いていた理想どおりに仕事を組み立てることができました」
3人目の「匠」である佐藤浩喜さんも、今回の開発は自身にとっても大きなプラスだったと語る。
「乗りやすさや運転のしやすさという感性の領域は、グラフなど数値ではなかなか表せないものです。最近のトヨタの開発では、『Confident(安定・安心感)&Natural(自然・意図通り)』を感性性能のキーワードとして開発を進めていますが、これもまたグラフや数値では表しにくいものです。私の主たる領域は駆動系なんですが、キーワードを具現化するにはどんな機能がどんな役割を果たせばいいのか、いつもそう考えながら仕事に取り組んでいました。今回は制御やハードの開発に対し、初期段階から積極的に参画したことで、狙い通りの味付けもできましたし、私自身も大きく成長できたと自負しております」
ひとりひとりが熱い想いを持っていないとダメ
官能評価を大切にしたクルマづくりは、走りのような動的側面だけでなく、静的な要素にも貫かれている。開発チームの一員である山崎博之さんにうかがった。
「すごく地味な部分ですが、たとえばカップホルダーやアームレストの位置関係もそのひとつです。座ったときにスッと置ける位置や高さはもちろん、カップを手に取るあらゆるシーンを想定して、どうやったら取りやすいかを検討しました。最近はカップの種類もすごく多いんですが、それらすべてで使いやすい万能の位置を模索したんです。実際にモデルを造形して、座っては使ってみて、ミリ単位で削っては修正するというのを繰り返し、究極の形を探し出したんです」
よりよいクルマを造るための環境が整っていても、ひとりひとりが熱い想いを抱いてなければ意味がない。その点において、新型RAV4の開発チームは、まさにぴったりのメンバーが揃っていたと言えそうだ。佐伯さんの右腕として、開発チームの「ヘッドコーチ」のような役割を果たした松本 章さんは次のように語る。
「じつは開発の最初のころ、佐伯が『みんなクルマのまわりに集まれ』という号令をかけたことがあるんです。それぞれの機能担当が各々で議論を重ねるのではなく、一台のクルマを囲んで、みんなで議論しろという意味です。これは言葉で言うほど簡単ではありません。なにしろひとつの検討会で多くの関連する機能について議論するため、事前準備も大変です。それを最後までやり抜けたのは、佐伯の熱さに引っ張られてひとりひとりが高いモチベーションを維持できたからだと思います」
チームワークのよさは、営業や広報部にまで広がっていたという。そんなお話をしてくれたのは松本和彦さんだ。
「官能評価を大切にしたクルマの魅力は、紙の資料だけではすべて伝えることができません。今回は、営業や広報、プロモーションビデオを撮影するスタッフにも開発中から試乗してもらっています。開発中は車両の台数も圧倒的に足りませんし、試乗の際には社内の一定以上の運転資格を持った者が同乗する必要もあります。乗りたいという要望があっても、すべての人に応えることはほとんど不可能なんです。しかし、今回は営業・広報関係者にもしっかりと試乗の機会を作りました。結果、乗ったからこそわかったという声が多く挙がり、広告のアイディアについても数多くの提案が寄せられました。カタログのイメージモデルにアドベンチャーが採用されていますが、これはじつは日本国内だけなんです。これも試乗したスタッフから提案されたアイディアです」
試乗会や検討会などの実現を陰で支え続けたのは、MS車両性能開発部の住江孝宏さんだ。
「熱い現場は、若手エンジニアに火を点けるきっかけも与えたと思います。彼らに芽生えた熱さに対して、しっかりと燃やせる場所を用意してあげなければと、そんな想いもありました。今回の開発を通して、若手たちもすごく成長しましたね。非常に苦労したプロジェクトでしたが、彼らの姿やクルマの仕上がりを見ると、やった甲斐があったと心から思えます」
企業が大きくなればなるほど、組織や慣習にしばられて、萎縮してしまったり、やりたいことを貫くことが難しくなったりする。そう考えると、新型RAV4の開発は、3人の「匠」の協力をはじめとした新しい取り組みを実現してしまったという意味で、じつに型破りなプロジェクトだった。いささかありきたりな表現になってしまうが、それを可能にしたのは、エンジニアたちの熱いハートだったのではないだろうか。佐伯さんはインタビューの最後にこんなことを語ってくれた。
「トヨタでは、”もっといいクルマづくり”というキーワードを掲げていますが、じつはそれも物差しで測れるものじゃない。いいクルマかどうかは、お客さまの心が感じるもの。それを造るためには、われわれ自身が心で感じられる開発をしていかなければならないんです」
すべてをやり切ったと語り笑顔を見せてくれた佐伯さん。彼らの強い想いと徹底的なこだわり、その集大成が新型RAV4というクルマと言えそうだ。
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