■実装できるフレッシュなアイデアが新しいクルマの安全を生み出す
公益社団法人自動車技術会は、2019年3月11日に、同会本部を会場に「2019年学生安全技術デザインコンペティション日本大会決勝(主催:国土交通省、日本大会運営:自動車技術会)」を開催した。
日本大会予選には6チームの応募があり、書類選考を通過した2チーム(東京都市大学・Team M Lab. 、広島市立大学 HIROSHIMA MOMIJI)と昨年の大会で最優秀賞を獲得し書類審査が免除された「東京大学 チーム"T"」、「日本大学工学部バイオメカニクス研究室」を合わせた計4チームによって決勝が競われた。その内容は、プレゼンテーションとスケールモデルによるデモンストレーション(各10分)と質疑応答。大会名にもあるようにテーマは「自動車の安全技術」である。
各チーム、それぞれの視点で考えられてきたテーマは次のようなものだった(発表順)。
◇東京都市大学・Team M Lab.
自動運転を想定した姿勢時の前面衝突用ダミーの開発および傷害低減手法の考案
◇東京大学 チーム"T"
実装に向けた水平可動式シート
◇広島市立大学 HIROSHIMA MOMIJI
空気ばねを用いたアクティブ傾斜制御によるゆりかご安全シートの実現
◇日本大学工学部バイオメカニクス研究室
自動車乗員の腰椎・腹部傷害評価を可能とする新型ダミーの開発
東京都市大学・Team M Lab.は1/5サイズの衝突実験装置と首などの動きをリアルにしたダミー人形を作り、自動運転でリクライニングして座っている状態での実験を繰り返すことで、シートベルトとは異なる拘束装置を考えてきた。
東京大学 チーム"T"は、追突事故でのむち打ちを軽減するためにシート自体を動かすというアイデア。シートを非線形特性のスプリングとダンパーで支えて、レール上でフリーにすることで衝撃を緩和しようというもの。今回は、作動タイミングについて衝突検知と予測の2パターンを実験、後者が有効という結果もデータとして示した。
初参加で予選を通過した広島市立大学 HIROSHIMA MOMIJIの研究は、シートを空気ばねで支え、クルマの挙動に合わせて動かすというもの。現時点では自動制御まで達していないが、自動運転時代になって向かい合って会議をするといったシチュエーションを考慮しての快適性などに、どのように貢献できるかが検討されている。
そして、2019年日本大会で最優秀賞に選ばれたのが、日本大学工学部バイオメカニクス研究室。交通事故における腰椎の損傷とシートベルトによる内蔵への攻撃性を評価するための新しい実物大ダミーを開発した。
腰椎のダミーは、アルミ(骨部)とウレタン(椎間板)を実際のスケールに合わせて重ねているのが特徴。椎間板は衝撃を受けるとグッと硬くなるが、ウレタンの硬度はそうなった際の硬さを参考にしているという。そして、事故物件の結果もっとも損傷の多い第一腰椎の上下のウレタン部分に各3箇所のセンサーを配置、リアルタイムに入力を計測できるようにしている。また、腹部への衝撃についてはタイヤチューブを改造した腹部ダミーを開発。こちらもリアルタイムで圧力を計測することができるようになっている。
こうしたダミーの完成度の高さ、元となるデータ解析の正当性などが評価され、日本大学工学部バイオメカニクス研究室は最優秀賞に選ばれた。そして、オランダ・アイントホーフェンで開催される国際大会へ派遣される。日本代表として国際大会で初の栄冠を目指すことになったのだ。
高度な自動運転が当たり前の時代になれば、これまでスタンダードとされてきた手法では安全が確保できない可能性もあることを、学生安全技術デザインコンペティションは教えてくれた。そして、若いパワーと知性が、そうした新しいテーマへ柔軟なアイデアを出せることも示した。ものづくりの未来に大いに期待したい。
文・写真:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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