積算2万2289km(最終回) レンジローバーを超えるのか
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ベントレーから大型SUVのベントレーが登場すると聞いた時、名声を失墜させるクルマとならないためには、最低でもレンジローバーを超える必要があると考えた。
英国を代表するランドローバー・レンジローバーは、40年以上の歴史を持ち、モデルも4世代目へと突入している。価格は上位グレードなら6桁ポンド(1400万円)を超える。SUVを手掛けたことのないブランドから生まれたクルマは、ライバルとなる中身を備えることができるのか。
ランドローバーもベントレーも、お互いをライバル視していることは認めていない。ベントレーとしては、レンジローバーよりさらに高価格帯を狙っていることを強調していた。ベンテイガは15万ポンド(2100万円)からの価格帯なのに対し、レンジローバーは10万ポンド(1400万円)前後。
レンジローバーは走破性の高さやモデルの歴史、堅牢性の面で真のライバルはいないと主張している。だが、実際は比較されるべき2台だ。
少しアドバンテージがあったのはベントレーの方。2012年に発表されたオフローダーのコンセプトモデル、EXP 9Fのスタイリングは批判も多く、大きな修正を加えることとなった。
2013年にハンサムな4代目レンジローバーが登場すると、一層風当たりは強くなった。加えて最高のパフォーマンスと機能性をもたせる必要がある。
静かで滑らかな大排気量W12気筒エンジン
結果、ベントレーは成し遂げた。2015年に登場したベンテイガは、608psのW12気筒エンジンを搭載し、われわれの試乗テストで90点を獲得。その後のディーゼルモデルは満点を与えるのに不足ない仕上がりだった。
ベントレーはレンジローバーとは異なる、独自性の強いクルマだった。だがロードテストがすべてというわけでもない。
例えばレンジローバーは所有期間が長くなるほど、クルマの温もりを強く感じられるようになる。レンジローバーのオーナーが、次もまたレンジローバーを選ぶ理由でもある。
圧倒的なゴージャス感を狙ったベンテイガに、同じような気持ちが湧くのだろうか。長期テストで確かめたいと考えたポイントでもある。
長期テスト車両としてやって来たベンテイガは、W12気筒エンジンで、ボディカラーはサンダーと呼ばれる色。実際は明るいチャコールグレーだ。走行距離は1000km以下で、慣らし運転も含めてクルマを楽しむことができた。
5950ccのエンジンは数千km程度まで走り込むほどに、回転が徐々になめらかになり、燃費も少し良くなっていった。車内はとても美しい。明るい色味で車内は晴れやかだが、アイボリーは汚れが目立つほど白いわけでもない。
発進時の加速は強力。W12気筒エンジンは以前の経験では、やや出だしのトルクが細く、上質さもどこか足りないイメージを持っていた。ところが大々的な再設計を受け、ベンテイガのW12エンジンは、ノイズを聞き取れないほど静かで滑らかなユニットになっていた。
都市部では扱いに手を焼くほどの全幅
圧倒的な加速力を引き出したときだけ、マフラーからエグゾーストノートが響き、エンジンから上質な吸気音がさえずる程度。殆どの場合、ベンテイガは無音に近い。右足や左手で操作をしても、たとえスポーツモードであっても、知覚できないほど静かになめらかだった。
ベンテイガのボディは大きいとはいえ、全長は5140mmで、例外的に大きいわけでもない。ただ全幅はかなり広く、縦列駐車のロットには収まらない。ロンドンのコンクリート・ジャングルには少し不釣り合い。
筆者は乗り初めの頃、コベントリーの駐車場の入口でダイヤモンド・カットの高価なホイールにガリ傷を付けてしまった。反省。それからはとても注意して運転するようになった。でも、ヒヤッとすることは何度もあった。
もしこれからベンテイガをガレージに、と考えている人は、日常的に走るルートを確認しておいた方が良い。筆者の会社の駐車場にも収まらず、別の人と場所を交換することになってしまった。
ベンテイガのようなクルマの場合、友人や隣人の些細な反応も重要。ドライバーだけでなく、家族や同乗者の反応も数年後に改めて選ぶかどうかの判断材料になる。
「一体なんていうクルマを買ったの?」 という反応をしたのは数名の友人。経験的に、周囲の意見はそれなりの理由がある場合が多い。こんな大きなクルマを一体誰が運転できるのか、と疑問を持つ人もいた。堂々としたボディを見たら当然だ。ベンテイガが美しいと話す人は殆どいなかった。
平均燃費は7.4km/L。少し足りない航続距離
見た目は記憶に残るほど力強い、という反応が中心。ベントレーのデザイナーが新しい水準を打ち立てた、と話すほどに上質なインテリアを見ると、その印象は更に強くなった。
余裕のある車内空間、贅沢な素材、高い着座位置。そこへ操作系の上質な手応えと計器類の眺めが、ベンテイガに乗る度に特別な気分へと持ち上げてくれた。
燃費はいつも7.0km/Lを下回ることはなかった。608psのエンジンと2.5tのボディを持つクルマとしては、悪くない数字だと思う。最高速度は300km/h、0-96km/h加速4秒という余力の持ち主なのに。エコカーには決してなり得ないけれど。
満タンで走れる距離は560kmほどで、物足りない。ベンテイガでディーゼルエンジンの支持が高い理由は、より長い航続距離を求めているのだと思う。
編集部に来たベンテイガは良く働き、オドメーターは2万2000kmを超えた。とても快適で堂々とした、郊外の道に適したクルマだったからだろう。スタッフの1人は、数回の短い休暇の足にした。ルーフキャリアを積み、家族の荷物を満載して。
大きかったと彼は後で話していた。走破性も高く実用的だとも。
オフロードとして、筆者がベンテイガでトライした最も過酷なコンディションは、数百mの湿った草地の丘を超えた程度。わたしの運転していた間、ホイールスピンをすることすら殆どなかった。だが別のスタッフが、ベンテイガの発表時に過酷なオフロードコースに挑戦している。
2時間ちょっとの点検で支払った11万円
ベンテイガは安くない。試乗車はほぼ20万ポンド(2800万円)もする。オプションだけでも3万7000ポンド(518万円)が加算されている。プレミアム・オーディオなどは標準装備でも良さそうなのに。
1万9000kmでの点検は、ロンドンのベントレー・ディーラで円滑に行われた。2時間ちょっとの作業で810ポンド(11万円)のレシートには、フォード・フォーカスのドライバーでなくても目を疑うかもしれない。
しかし、20万ポンド(2800万円)近い価格のクルマに対するサービスであり、編集社の経費扱いだから、ためらうことなく支払った。
2万km以上走った今でも、劣化したと感じる部分はない。インテリアのカーペットや装飾トリムなどは、ベントレーのショールームで受け取った新車時とほぼ変わらない印象。以前長期テストに加えたベントレー・コンチネンタルGTも同じだった。
テストデータ
気に入っているトコロ
素晴らしいエンジン:シリンダー数が多く、排気量の大きいエンジンの余命は長くない。あるうちに楽しんでおきたい。
インテリアの質感:「金属に見える部分は金属です」 とベントレーのデザイナーはいう。素晴らしい職人技で溢れている。
最上級の快適性:ベンテイガは柔らかいだけではない。しっかり姿勢制御も効き、圧倒的な快適性で長距離移動も苦ではない。
気に入らないトコロ
W12気筒エンジンの燃費:1回の満タンで560kmほどしか走れないのは、欠点といえる。
荷室容量:狭いわけではないが、このボディサイズを考えると充分とはいえず、奥行きも浅い。
走行距離
テスト開始時積算距離:692km
テスト終了時積算距離:2万2289km
価格
新車価格:16万200ポンド(2268万円)
テスト車の価格:19万7150ポンド(2760万円)
ディーラー評価額:17万5000ポンド(2450万円)
個人評価額:17万ポンド(2380万円)
市場流通価格:15万5000ポンド(2170万円)
オプション装備
ネイム社製オーディオシステム 6300ポンド(96万円)
ツーリング・スペシフィケーション 5900ポンド(90万円)
後席エンターテインメントシステム 5365ポンド(82万円)
オールテレイン・スペシフィケーション 4520ポンド(69万円)
シティ・スペシフィケーション 3925ポンド(60万円)
フロントシート・コンフォート・スペシフィケーション 2670ポンド(40万円)
サンシャイン・スペシフィケーション 1550ポンド(24万円)
コントラストステッチ 1485ポンド(23万円)
ベニヤ・スペシフィケーション 1050ポンド(16万円)
TVラジオチューナー 920ポンド(14万円)
ハンズフリー・テールゲート 650ポンド(10万円)
スモーカーズ・スペシフィケーション 440ポンド(6万7000円)
ステアリングホイールヒーター 375ポンド(5万7000円)
ステアリングホイール・ステッチ 155ポンド(2万1000円)
燃費&航続距離
カタログ燃費:7.6km/L
タンク容量:85L
平均燃費:7.4km/L
最高燃費:9.8km/L
最低燃費:4.7km/L
航続可能距離:563km
主要諸元
0-100km/h加速:4.0秒
最高速度:300km/h
エンジン:W型12気筒5950ccツイン・ターボチャージャー
最高出力:608ps/5000-6000rpm
最大トルク:91.6kg-m/1350rpm
トランスミッション:8速オートマティック
トランク容量:484-1744L
ホイールサイズ:21inch 9.5J(フロント)/21inch 9.5J(リア)
タイヤ:285/45 R21(フロント)/285/45 R21(リア)
乾燥重量:2440kg
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:2858ポンド(40万1000円/1カ月)
CO2 排出量:296g/km
メンテナンスコスト:1万9000km点検 810ポンド(11万3000円)
その他コスト:なし
燃料コスト:3509ポンド(49万10000円)
燃料含めたランニングコスト:4319ポンド(60万5000円)
1マイル当りコスト:32ンス(45円)
減価償却費:2万7000ポンド(378万円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:2.33ポンド(326円)
不具合:ステアリングのガタつき、リアウインドウの誤作動
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