■「ラ フェラーリ」よりも先にハイブリッド化したマクラーレン
マクラーレンの生産車ラインナップで、その最上位にあるのがアルティメットシリーズだ。このアルティメットシリーズ初のモデルとなるのが、「P1」である。
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アルティメットシリーズは限定生産を前提としたもので、アルティメットの名に恥じない革新的な技術が誕生した時にのみ生産されるとマクラーレンは説明している。P1のデビューは2013年、生産終了は2015年で、この間に375台のみ生産された。
●375台限定の「P1」
シルバーストーン・オークションに登場したP1は、375台の内の1台。走行距離は新車から3666マイル(約5900km)。最後のサービスは2018年に受けており、この時にバッテリーも新品に交換されている。
コンディションには非常に優れたモデルと考えてまず間違いはないだろう。
P1のエンジニアリングで、マクラーレンがとくに先進性を強調していたのは、エアロダイナミクスの極致もいうべき、そのエクステリアデザインだった。かつてデザイナーとしてフェラーリにも在職した、フランク・ステファンソンをチーフにデザインされたP1のボディは、機能性を最小限のサイズで包み込む「シュリンク・ラップ」がコンセプト。
そして日本語に訳すのならば生体模倣とでもいうのだろうか、「バイオ・ミミクリー」のテクニックを使用したデザインであるという。
もちろんエアロダイナミクスを追求するにあたっては、F1マシンと同様の開発プロセスが採用された。すなわちコンピュータによる流体解析=CFDや風洞実験は、P1の造形を完成させるためには必要不可欠であった。
F1の世界では、すでにアクティブデバイスの使用にはさまざまな制約があるが、それから解放されたP1には、最新のアクティブデバイスを採用しない理由はない。
必要に応じてライズアップする(ドライバーが走行モードでレースを選択すれば、車高が50mm低下すると同時に、このウイングは300mm上昇。それ以外のモードでは、上昇幅は180mmに抑えられる)リアウイングはダブルエレメント=ダブルウイングである。
アングルを最大29度可変することでダウンフォースを効率的に得る一方、ステアリング上のスイッチを操作することで、逆にDRS=ドラッグ・リダクション・システムの機能も発揮する。
■元祖アルティメットシリーズの評価はいかに
またF1マシンと同様のプロセスで開発、そして製作されるCFRP製のモノコックは、「MP4-12C」がタブ状であったのに対して、ルーフ部までを一体構造とするデザインで、マクラーレンはこれを「モノケージ」と呼ぶ。単体重量はわずかに90kgだ。
●2013 マクラーレン「P1」
そしてパワーユニットの構成も、また興味深い。MP4-12Cから、ターボの大型化など、さらにチューニングを進めた3.8リッター仕様のV型8気筒ツインターボエンジンに、エレクトリックモーターを組み合わせたというのがそのシステムの概略だ。
注目の最高出力は、エンジン単体でも737psを発揮するが、さらにエレクトリックモーターが179psで、必要時にはこれをサポートする仕組みとなっている。一方、エンジンを停止させたゼロエミッションでのEV走行も最大で約10km可能だった。
モノコックの後部に搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は4.7kWhで、これはエンジンからのほかに、家庭用電源からの充電も可能。すなわちP1は、PHEVのハイパーカーの嚆矢でもあるのだ。
前後のサスペンションは、MP4-12Cのそれをさらに進化させたもので、レースアクティブ・シャシ・コントロールと呼ばれる。これはロールとピッチを油圧によってアクティブ制御するシステムである。
当時のマクラーレンのF1マシンと同様に、日本の曙ブレーキがサプライヤーとなるカーボンセラミックブレーキも、当時非常に注目された。
P1ははたしてオンロードで、そしてサーキットでどのような走りを披露するのか。そのステアリングを握るチャンスが訪れることを期待し、オークションは白熱したが、残念ながらその数字がリザーブ(最低落札価格)に届くことはなかった。
その後、96万ポンド(邦貨換算1億4700万円)で売りに出されていたが、成約には至らなかったようだ。
マクラーレンのアルティメット・シリーズのなかでも、P1は比較的人気があるのではと予想していただけに、この結果は意外なものだった。
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みんなのコメント
F1やスピードテイルみたいに市販車は全て3シーターにすれば他のスーパースポーツと差別化が計れて売れそうなのに今ひとつ所有欲を満たす車が無い