目指すは東北・スポーツランドSUGO! BEVのソルテラでロングランに挑戦
BEV(バッテリーEV=電気自動車)でもロングランは問題ない。そのような実験や走行インプレッションは数多く世の中に出回っているけれど、本当に問題なくできるのか? ちょっと疑問に思っていたこともある。しかし実際にBEVを購入して所有者となると、「結構できるものだ」と理解した。とはいえ完全にラクラクとは行かない。楽しさと苦労の旅程を包み隠さずレポートしよう。
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カメラマン&ライターがソルテラを購入、納車されて3カ月
筆者はフリーランスのカメラマン&ライター。いろいろな媒体で新車撮影やイベントレポートなどを行っている。所有車は初期型スバル「レヴォーグ」の2L水平対向4気筒ターボとスバル「レガシィツーリングワゴン」の3L水平対向6気筒エンジンのMT車だ。
俗にいうスバリスト的に思われるかもしれないが、カメラマンとして機材が積めて人も乗れて、どんな地域でもどんな季節でも現場に辿り着かなければならない。さらに週末に行われるイベントや各地でのレース取材において長距離もラクに往復できるクルマが必要。ということでこのラインナップになっている(3Lレガシィはその希少性ゆえ保存目的な部分はあるけれど)。
BEVには新車試乗会などで乗る機会もあるが短時間の試乗ではわからないことも多い。将来を見据えて1回ちゃんと乗って、どんな乗り物なのか見ておきたい、という気持ちから、いつかは買ってみようと思っていた。
そんな折りにトヨタとスバルの合作であるBEVが発売されることになった。トヨタの「bZ4X」はKINTOでのリースしか選択肢がないが、スバルのソルテラは普通に買うことができる。デザイン的にもスバルの方が好みだったことと、これまでスバル車を乗っていることもあり、スバル初の本格的BEVはどんなものだろうか? という興味があったからソルテラを選択した。
発売開始日に発注をしたが、すぐにリコールがかかり販売はストップ。リコール対策に時間を要したこともありなかなか納車されなかったが、2023年6月初旬にやっと納車された。
ソルテラET-HSのカタログでの一充電走行距離は487キロ
ソルテラはET-SSとET-HSという2グレード展開。スタンダードモデルのET-SSはフロントモーターのみのFWDと、フロントモーター+リアモーターのAWDが選べる。ハイクオリティモデルのET-HSはフロントモーター+リアモーターのAWDのみだ。
タイヤがET-SSは18インチなのに対しET-HSは20インチ。シートはET-SSがファブリックなのに対しET-HSは本革になる。
運動性能はAWD同士で比較すると、ET-SSの最大出力はフロントモーター80kW+リアモーター80kWで、最大トルクがフロントモーター169Nm+リアモーター169Nm。交流電力消費率は133Wh/kmで一充電走行距離は542kmとなっている。一方のET-HSの最大出力と最大トルクはET-SSと同じ。交流電力消費率は148Wh/kmで一充電走行距離は487kmと、ここで差がでる。つまりET-HSの方が電気を使っている部分が多く距離が短くなっていることが分かる。
装備品に関して若干の違いがあり、車両総重量でET-SSが2275kg、ET-HSが2305kgと30kgの差がある。何が違うのか主要装備表をじっくり見ると、タイヤ・ホイールが違うのと、オーディオシステムがET-SSは8スピーカーなのに対しET-HSはハーマンカードンの11スピーカー。シートベンチレーションの有無が大きい。
モーターに関してはAWD同士では同じものが使われており、バッテリー容量は71.4kWhとどのグレードを選んでも一緒だ。
バッテリー80%の状態で東京都庁前をスタート
と前置きが長くなったが、今回筆者が自分のソルテラET-HSに乗って向かったのは、2023年9月16~17日にスーパーGT第6戦が行われた宮城県のスポーツランドSUGO。東京・新宿にある東京都庁前から出発すると、車載のナビでは346km、4時間39分と出た。
ET-HSのカタログ上は487km走行できるとあるが、残念ながら実際にはそこまで走れない。これは普通のガソリン車でもカタログ通りの燃費はほぼ出ないのと同じで、電気自動車もカタログ通りにはいかない。
バッテリーが80%充電された状態で、エアコンONだと252km走れると表示されている。エアコンOFFにすれば走行距離は伸びるが、この暑さの中エアコンOFFはあり得ないので常にエアコンONだ。満充電ではないのは自宅で充電できず、どこかしらの急速充電のみでソルテラを運用しているためだ。なので満充電ならば300km前後は走れるはず。
ということで、東京都庁から出発すると、途中で1回もしくは2回の充電が必要になる。純正ナビでは「途中で充電する必要があります」と表示され、行き先の途中で充電できる場所を表示してくれる。最も遠い場所で東北自動車道の那須高原SAが表示されたので、ひとまずそこを目指す。
飛ばさずゆったり、機械任せでクルーズ
首都高を経由して東北道に入ると、埼玉県の岩槻インターから栃木県の佐野藤岡インターまでが120km/hの制限速度区間がある。ついつい120km/hで走りたくなるが、それではみるみる電池は消費されていき残走行距離も減っていく。なのでぐっと堪えて100km/h程度で移動していく。
とはいえ、レーダークルーズコントロールやレーンデパーチャーアラート、レーントレーシングアシストなどのいわゆるACC(アダプティブクルーズコントロール)機能が作動するので、機械任せで安心してゆったりとした気持ちで走行できる。
高速道路でも静粛性が高く風切り音などもほとんど聞こえない。ロードノイズが若干聞こえてくる。高機能舗装の水が路面に染み込むタイプの路面だとわりあい大きめに聞こえるが、普通の路面だとそれほど気にならない。
ACCもスバル車のアイサイトとは違うが、不安なく前走車に追従してくれるし、レーンキープも走路を外れそうになるとしっかり修正を行ってくれるので安心だ。
那須高原SAで仮眠&朝の充電
那須高原SAに到着した時には183km走行し電費は4.8km/kWh。残走行距離は60km/約20%となっていた。SUVスタイルの大きめのボディと、高速道路の連続走行では電気を消費するだけになってしまうので仕方ない部分はある。
夜間出発のため、一旦ここで仮眠を取ることにした。仮眠中は涼しかったこともありシステムを切って仮眠についた。暑いまたは寒いでシステムをオンにしてエアコンを使うと電費は落ちるだろう。
翌朝まず行うことは充電からだ。残60km/約20%ではどこにも行けない。那須高原SAの急速充電器は最大40kWの出力だ。東北自動車道は最大出力40kwか50kwの充電器しかなく、BEV所有歴3カ月の自分でも、大して充電できないだろうとは想像できていたが、30分充電して17.4kWh、40%までしか回復しなかった。残走行距離は149kmだ。
那須高原SAで改めてスポーツランドSUGOまでのナビをセットすると159km。クルマの残走行距離は149kmなので10km分足りないことが判明する。仮に足りたとしてもギリギリの残量では到着しても帰れないという状況になってしまう。そうならないためにもう1回充電する必要がある。
スマホには充電に関する複数のアプリを入れていて、どこに何kWの充電器があり、いつ使えるのかが分かるようになっている。複数のアプリを使うことで情報の信用性を確認することが可能。たまにこっちのアプリには充電器が表示されるが、こっちのアプリには表示されないということも起きるからだ。それらを駆使することで、途中の白石市のヨークベニマルというスーパーに90kWの急速充電器があるのが分かった。そこまでなら余裕で到着できるので目指すことにした。
スーパーの駐車場で90kWの充電器を利用
白石インターで高速を降り、ヨークベニマルを目指す途中で残走行距離が30kmを切る。すると「駆動用電池残量低下。充電してください」というメッセージが現れる。ひやっとするが過去の経験からまだ余裕があるのは分かっているし、トヨタの開発者に聞いた時に「初期の設定では電池容量に相当の余力を残した状態で、早めにメッセージが出るようになっている」と説明していたので、まだ平気と思って進む。というより進むしかない状態だ。
白石市のヨークベニマルに到着すると平均電費は5.9km/kWhとなっている。90kWの充電器に接続すると9%からの充電となった。ここで待つ間にスポーツランドSUGOでの取材時に必要なドリンクやご飯を買うことにする。充電するときはなるべく他の用事も一緒に済ませるのが吉だ。
そうこうしているうちに充電が終了し、30分で約29.0kWh、54%まで充電できた。残走行距離で見ると176km。もちろんこれでスポーツランドSUGOには十分到着できるし、今回は仙台市内に宿泊する予定なので、スポーツランドSUGOを経由して仙台までたどり着くのは大丈夫だと言える。
他に利用者のいないことを確認してお代わり充電も試してみた
bZ4Xとソルテラは、初期に発売された車両だと、充電状態を示すパーセンテージ、いわゆるSOC(State Of Charge)が表示されない。これはトヨタ側が、この数字を見せることによりドライバーの不安を煽るのではないか、と考えたため。さらに急速充電を1日2回までに制限している。これは急速充電を繰り返し行うことでバッテリーが劣化してしまうのを防ぐためだ。
しかしながら発売前に行われたメディア向け試乗会では、このSOCを表示しないことと、バッテリー容量が大きいのに対し走行距離が意外に短いのはどうしてかということを、BEVに乗り慣れたジャーナリストたちから多く指摘されたことも一因か、2023年5月にアップデートを行った。
このアップデートで、SOC表示が出るようになり、何%と表示するようになった。さらに急速充電の回数制限を緩和。80%から100%になる時間の短縮などが行われた。これは既存のbZ4Xとソルテラにも対応しており、ディーラーに出向いてアップデート作業を行えば完了できる。
自分のソルテラは6月納車だがこの5月のアップデートは組み込まれておらず、ディーラーでアップデートする必要がある。なかなかディーラーに行く機会がなくアップデートできていないので、%表示がないことや残走行距離などが低く出ているのはこのためだ。
そのような仕組みがあるなかで、試しにこの90kW充電器でお代わり充電をしたらどうなるだろうか? という興味があったため、他に充電する方がいないことを確認してお代わり充電を行った。
朝に那須高原SAで急速充電しており、ヨークベニマルで2回目の急速充電を行っている。お代わりをすると1日に3回目となり回数制限に引っかかる可能性があるからだ。
結果はたしかに同じヨークベニマルでの1回目よりも充電量は少なく、30分充電しても、約19.6kWh分しか入らなかったが、54%から84%まで充電されれば問題ないだろう。残走行距離も276kmと、スポーツランドSUGOと仙台市内を往復しても問題ない距離まで伸びたこともあり安心して走行できるようになった。
都庁からスポーツランドSUGOまで平均電費は5.1km/kWh
かくして東京・新宿の東京都庁から宮城県のスポーツランドSUGOまで342.9km、平均電費は5.1km/kWhとなった。充電は3回行ったので都合1時間30分止まったことになる。たしかにBEVでの長距離移動には時間がかかってしまうのは事実だ。
燃料代としてハイオクガソリンをレヴォーグで満タンにした場合、55L給油、リッターあたり180円で計算すると9900円になる。自分が契約しているe-Mobility Powerの急速・普通併用プランだと、1回30分で825円だ。3回給電して2475円。帰りも3回給電したとすると合計6回で4950円となる。月会費が別途かかるがトータルで見れば燃料代だけならBEVの方がお得だ。
結果論だが、給電のために本来の目的地より手前で高速を降りた関係で高速代も少し浮いている。もちろんその分、下道移動の時間は要しているので、どちらが良いとは言えない結果ではあるが、検討の余地はあるのではないだろうか。
この後、仙台市内から松島へ観光に行き、東京に帰ってくるまでのレポート後編もお届けする。
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みんなのコメント
高速メインで満タン往復700㌔というのはレヴォだと可能なのかな?
そうすると、往復で約3時間弱余分にかかるのか(充電×6と比べて)・・・
長距離だけなら、まだまだBEVは微妙だな。