■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ
マツダ「ロードスター」にマイナーチェンジが施された。主な変更点は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とスマートブレーキサポート(後退時検知機能)の採用、センターディスプレイの大型化などマツダコネクトの改良、走行性能向上のために新開発の「アシンメトリックLSD」が装着などが挙げられる。1.5L、4気筒エンジンと6速MTの組み合わせによるソフトトップの新型2台とマイナーチェンジ前の旧型1台、および2.0L、4気筒エンジンを搭載し、金属製トップを持った「RF」の1台を試乗した。
カッコいいかも!ブラックのアクセントパーツが映えるジープのコンパクトSUV「Compass Night Eagle」
機械として優れているか?★★★★★ 5.0(★5つが満点)
どれも「ロードスター」独自の世界を体現していて、素晴らしかった。コーナーを軽快に駆け抜けて、クルマを運転することが肉体と精神の悦びに直結している。ボディーサイズが小ぶりで重量が軽い分だけ自分の身体の延長線上にある感覚が強い。スポーツカーにとって小さいことと軽いことが重要であることを体現している。
また、新たに採用されたアシンメトリックLSDは、加減速時のディファレンシャルギアの差動制限力を変化させることでコーナリングの挙動を安定させることを目的としている。EV(電気自動車)にも活用することを目論んで、マツダがサプライヤーと開発したものだ。
これが装着されていない旧型と比較したが、旧型オーナーが買い替えたくなるほどの絶大な効能は感じなかった。旧型だって、十分に軽快で、かつ安定しているのだ。そして、改めて夢中にさせられてしまうのは、幌を開けての運転だ。ウインドスクリーンのラッチを外して幌のロックを解除し、そのまま左手で後ろに押すだけで幌は畳まれる。開けて走ると「ロードスター」の軽快な走りが一層と際立つ。
電動開閉式の金属製ルーフを備えた「RF」には増加した重量をまかなうために2.0L、4気筒エンジンが搭載されていて、その分の重厚さを身に付けている。どちらを選ぶかは、用途と好み次第だろう。
幌は手動式なので、慣れれば10秒以下で開閉できる。この手軽さは大きな魅力だ。街中でも開けて走り、閉めたくなったら赤信号で停まった時に素早く閉めることができる。「RF」はダッシュボード中央のレバーを押し続けることで、15秒で開閉それぞれを行えた。
幌の開閉が手動式ということは、マニュアルトランスミッションの操作と同じ意味を持っている。実用車の運転が移動のための手段であることに対して、運転という行為が目的化しているスポーツカーにとって、あらゆる操作が手動で行えることは、それだけ悦びも増える。「ロードスター」の優れた手動式の幌は、走る・曲がる・止まるといった運転操作と同じ意味を持っていることを再確認することができた。
商品として魅力的か?★★★★ 4.0(★5つが満点)
とても魅力的な商品であることは間違いない。今回のマイナーチェンジによって値上がりしてしまったとはいえ、比較的に手頃な価格(289万8500円~430万8700円)で運転を楽しむことを追求したスポーツカーを購入することができるからだ。もちろん「ロードスター」は、日常的な用途もこなせる実用性も備えているが、電動化や自動化ばかりが喧伝される自動車の世界にあって、運転の楽しみが第一に訴求しているのはとても貴重な存在だと言える。
「ロードスター」が魅力的であるからこそ、欲を言わせてもらえれば、もっとオーナーに寄り添う企画も用意してもらいたい。工学的な進化は自明のこととして進めてもらえれば良い。それよりも、カスタムオーダー制度を始めて“自分だけの一台”を造れるようにしたり、内外装の色や素材などの種類を増やしてもらいたい。
今回も「Sレザーパッケージ Vセレクション」という画像にあるグレードが追加された。赤いボディーにベージュの幌、タンのレザーシートが組み合わされているが、ダッシュボードやセンターコンソールなどの面積の広いプラスチック部品が黒だから反対色となってしまい、配色としてチグハグな印象を受けてしまう。理想的には赤いボディーを反映させてバーガンディーやダークブラウンだと調和する。難しければ、黒をダークグレーにするだけで、内外装のそれぞれがより引き立ってくるはずだ。
スポーツカーだからといって、オーナーとなる人はクルマおたくや運転マニアだけとは限らない。楽しみのために乗るクルマなのだからこそ、色や仕様などは自分好みを追い求めたくなるものだ。そのためにも、他社のようにWeb上のコンフィギュレーターなどを使ってオーダーメイド仕立てができたら、購入意欲とマツダのブランドロイヤリティーも高められるだろう。その分の価格上昇や納期延長なども、納得済みで受け入れられる時代になった。マツダ「ロードスター」は、まだまだその魅力を広く訴求することができるはずだ。
■関連情報
https://www.mazda.co.jp/cars/roadster/
文/金子浩久(モータージャーナリスト)
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みんなのコメント
パワーや内装の仕様、台数限定なのか、価格はどの程度なのか。
将来ハイブリッド化する前に手に入れたい注目のモデルだと思います。
乗り方遊び方にもよりますが充分な性能では。
10年乗った方は買い替え検討に値すると感じます。