先行きが見えないスズキのインド市場
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】ホンダ/スズキ 2020年度 第1四半期の決算【参考資料】 全77枚
スズキがインドで困っている。
スズキによると、2021年3月期第1四半期の連結売上高は前年同期比53.1%の4253億円と大きく落ち込んだ。
同社の事業構成は、四輪、二輪、そしてマリンの3つだが、売上の8割強を四輪事業が占める。
その四輪事業での売上高は、日本、インド、さらにその他(欧州・中国・中近東・南米など)がそれぞれ1/3という構成。日本とインドでの社会情勢の影響が大きく出る。
第1四半期では、日本が前年同期27.6%減で持ち堪えたのに対して、インドは83.0%減と落ち込みが大きい。
背景にあるのはインドの社会情勢だ。
日本でも各種報道で報じられているように、インドは貧富の差が大きく、衛生面で劣悪な環境下にある人々が多い地域での新型コロナウイルス感染の予防が難しく、感染拡大に対する終息の目途が立っていない。
そうした中、今回の決算発表では「当社が主力とするインドでの感染が拡大しており、通期見通しを合理的に算出することは困難」とした。
前期末に続き、今回も公表時期を未定に。
これまで、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スバルが通期見通しを発表しており、スズキだけが取り残されたかたちだ。
こうしたインドでの影響は日本にも及ぶのか?
ジムニー納期の改善はどうなるのか?
インドの問題は新型コロナウイルス感染拡大だけではない。
コロナ前から、ユーザーに対するローン審査が厳しくなるなど、販売現場では「買いたい人がいても、以前のように売れない」という状況にあるのだ。
インド政府が積み上げてきた不良債権が引き金となり、2019年から金融不安が起こっている。
ウィズコロナでの経済ダメージから金融環境がさらに悪化すれば、インドでは当面の間、コロナと金融引き締めのダブルパンチが続くだろう。
スズキとしては、日本の軽自動車主体の開発成果を、日本の約2倍の台数を売るインド市場向け小型車で回収するといった、スズキ独自の収益サイクルがこれまで上手く回ってきた。
そのインドの先行きがいま、見えないのだ。
となれば当然、投資効果を精査するため、日本を含む今後の新型モデルや次世代技術について「選択と集中」が必要となる。
一部メディアがジムニー・シエラのインド生産の可能性を報じている。仮にそれが事実であったとしても、インド市場の見通し不透明な現時点では、生産の見直しが検討されるかもしれない。
そうなると、現在のようにジムニーとジムニー・シエラは日本生産のみで国内需要と海外需要を担う体制が継続されることになる。
結果的に、両モデルの日本向け納期が短縮できないことになってしまう……。
ホンダ、インドの影響少なく 中国期待
インド市場という観点では、スズキが乗用車市場の約半分を占めるため、結果的に他の日系メーカーはインドでのダメージが少ない。
例えばホンダの場合、インドは四輪事業よりも二輪事業での関わりが大きい。今年8月5日に行った2020年度第1四半期決算および通期見通しの発表では「金融引き締めが大きく、さらに各社による値引き合戦に二輪トップメーカーとしては関与しない」として、今後も様々な施策を打ちながらインド市場の動向を見守るとした。
二輪市場では、タイやベトナムでの業績回復が顕著だという。
一方の四輪市場では、中国の回復を強調した。
中国政府による新エネルギー車に対する販売奨励金の継続や、一部で実施されている新車販売におけるナンバープレート規制の緩和など、消費刺激策が続々と打ち出されていると指摘。
その上で、7月は広州ホンダが6万8000台、東風ホンダが6万7000台と前年同月比で100%を超えて回復した。
今後も新モデルの発表も控えており、また中長期的にも「世界最大市場としての中国の存在は変わりない」と見る。
アメリカについては、一時の回復基調から一転し、6月後半から地域によってコロナ第二波の影響により、商業活動などを規制する州も出てきており、社会情勢を注視すると説明した。
では、日本はどうなる?
ホンダ日本市場 新車戦略が見えず
ホンダの四輪の通期販売見通しは、グローバルで前年比29%減の450万台とした。
中国が全体を引っ張り、アメリカが不安定でもなんとか下期には回復基調に乗り、日本でも着実な回復を期待するとしている。
決算報告後に行ったテレビ、新聞、経済メディアとの質疑応答では、中国やアメリカは話題に挙がったが、日本市場についての発言は質問者からもホンダからもほとんどなかった。
現在、日本でのホンダはNボックスが軽ナンバーワンの座を守り、小型車では新型フィットが健闘しているものの、これらに次ぐモデルが不在という印象がある。
話題のホンダ「e」について、ホンダはエネルギーインフラも含めた大枠でのサービス体制を考えており、フィットのように数を稼ぐためのモデルではない。
市場動向を見れば、トヨタがダイハツも含めたSUV攻勢が目立ち、ホンダとしては次期ヴェゼルや、他市場で展開する小型SUVを日産キックスのように日本市場に仕立てるような案件が、メディアを通じて大きな話題にならなければいけない時期に思える。
ホンダは今年4月に実施した、本社と研究所の新体制における新車のコスト管理の徹底を強調する。
当然、その効果が現れるまで数年間かかることになり、ウィズコロナ下での日本市場の活性化策が、まだはっきりと見えてこない。
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みんなのコメント
世界情勢見てたらこれからどうなるかわからんやろ
好みが独特の日本人の言う通り作ってたら全く利益は上がらない。