6月8日、FIM世界耐久選手権(EWC)2024シーズン第2戦スパ8時間耐久ロードレースの決勝レースがベルギーのスパ・フランコルシャンで開催され、#7 YART YAMAHA(ニッコロ・カネパ/マービン・フリッツ/カレル・ハニカ組)が201周を走破してポール・トゥ・ウインを果たした。
EWCはシリーズ2戦目を迎えた。カレンダーに復帰して過去の2年間はスパ24時間として争われたが、今年は3分の1となる8時間によって争われる。今大会は全37台がエントリーしており、日本勢としてはヨシムラSERT Motul、F.C.C. TSR Honda France(TSRホンダ)が名を連ねている。
さらにTeam Étoile(亀井雄大/大久保光/渡辺一樹)、石塚健がMACO RACING TEAM、綿貫舞空が3ART BEST OF BIKEより参戦している。また、KAWASAKI WEBIKE TRICKSTARは日本のトリックスターレーシングが運営しているが、フランスチームとして登録されている。
予選ではYARTヤマハが2分18秒587と圧倒的な速さを見せ、2戦連続ポールポジションを獲得した。2番手に前戦は最終盤にリタイアとなったTSRホンダ、3番手は開幕戦のウイナーであるヨシムラSERT Motulが続いた。
現地時間13時(日本時間20時)に、お馴染みのル・マン式スタートで火蓋が切られ、前戦に続きグレッグ・ブラック(ヨシムラSERT Motul)が好スタートを決めてホールショットを奪う。2番手にニッコロ・カネパ(YARTヤマハ)、3番手にBMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(BMWモトラッド)が続いていく。
オープニングラップからマーカス・ライターベルガー(BMWモトラッド)とカネパが順位を入れ替え、早々から首位争いが勃発する。しかし、カネパがそのバトルを制して徐々にリードを広げていく。その後方では、少し息を潜めていたブラックがライターベルガーに2番手争いのバトルを持ち込む。
その頃、スタートでマシンの電源スイッチが入っていなかったため、エンジンがかからず出遅れたアラン・テシェ(TSRホンダ)が怒涛の追い上げを披露していた。一時17番手まで順位を下げたが、開始30分で13台を抜いて無双状態のままブラックの後方へと迫る。
そして、テシェは13周目にあっさりとブラックとライターベルガーを捉えて2番手に浮上。その後テシェからジョシュ・フックに交代し、2番手のまま1時間を経過を迎えるが、14コーナーでまさかの転倒を喫する。すぐさまマシンを起こして6番手で復帰するが、その後10周ほど走行した後に修復に時間を要し、大きく順位を落とした。
それにより、YARTヤマハがトップ独走を維持。2番手にヨシムラSERT Motul、3番手にBMWモトラッドというオーダーへと変わる。また、SSTクラスは#111 TEAM AVIOBIKE by M2 REVO、#777 WÓJCIK RACING TEAM 777が続いていた。
SSTクラスのポールポジションを獲得したTeam Étoileは、開始1時間経過時点ではクラス3番手を走行していたが、TSRホンダとほぼ同タイミングでガス欠によりコースサイドにマシンを止めていた。幸いピットロード近くだったため、手押しですぐにピットへと戻っているが約5分のタイムロスをして順位を下げてしまった。
依然としてYARTヤマハがトップで2時間、3時間経過後もトップを死守していて走り進めていた。ただ、やや燃費が厳しいのか上位の中では早いタイミングでルーティンのピットをこなしていく。トップ3台はそれぞれ単独走行となっていたが、今度は3番手のBMWモトラッドが転倒。それにより、#4 TATI TEAM BERINGER RACINGが表彰台圏内へと浮上した。
レース折り返しの4時間が経過する頃、ここでトップに動きが出る。ピットのタイミングでヨシムラSERT Motulがトップに浮上するが、YARTヤマハもすぐに背後まで接近し、激しくバトルが展開される。しかし、ここまで首位を維持していたYARTヤマハのペースに分があり、難なく首位奪取に成功する。
序盤から4番手走行中だった#99 KM99の転倒を始め、多くの転倒が相次いでいた。レース時間半分を終える頃には、一時トップも走行していたBMWモトラッド、そしてSSTクラス2番手を走っていたWÓJCIK RACINGを含めた4台がリタイアを強いられていた。
5時間を前に、YARTヤマハとヨシムラSERT Motulが再び接近するが、トップは変わらず。後方では4番手を走行していたKAWASAKI WEBIKE TRICKSTARがスロー走行となり、そのまピットに戻って修復作業が行われる。よってTEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8が4番手に順位を上げていた。
残り1時間半頃になると、SSTクラスに動きがあった。クラストップの総合5番手を走行していたTEAM AVIOBIKEが、ピットにマシンを入れる。ルーティーンピットではなかったものの、すぐに修復を済ませて最初限のロスで復帰するが、その間に#55 NATIONAL MOTOS HONDAに逆転を許す展開に。
ラスト1時間、YARTヤマハがトップ快走を続け、2番手にヨシムラSERT Motulと変わりなく、3番手にはTATI TEAM BERINGER RACINGがつけていた。しかし、その後方では#333 HONDA VILTAIS RACINGがTEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8に接近し、4番手争いが展開される。
このバトルはHONDA VILTAISが制し、4番手に浮上した。さらに先行を許してしまったTEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8の少し後方には、序盤に転倒があったものの、見事な追い上げを見せていたTSRホンダが順位を回復させていた。さらに、ファステストも更新する勢いを見せていた。
開始から7時間を経過し、レースは赤旗やSC(セーフティカー)もなく順調に進み、コース上では各マシンのライトが目立つ時間帯に。各チームが続々と最後のピットを済ませ、ラストスパートをかけていくなか、依然としてトップを死守しているYARTヤマハは2分20秒台のハイペースを披露していた。
そのなか、同一周回で2番手につけるヨシムラSERT Motulは、186周目にピットへ入りブラックへとバトンを繋いでいた。そして、195周目にはYARTヤマハも上位勢では多い10度目のピットイン。給油だけを済ませ、カネパがダブルスティントでチェッカーまでマシンを運ぶ。
残り5分、TSRホンダが5番手との距離を縮めていた。TEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8も順位を守っていたが、残り3分というところで僅かに燃料が足りなかったのか、緊急ピットイン。給油を済ませて復帰するが、TSRホンダに先行を許す形となった。
序盤から最後まで安定したペースとノートラブルで、トップを独走していたYARTヤマハがトップチェッカー。王者らしい走りで201周を走破して今季初優勝を手にした。2位は、同じくノートラブルで完走したヨシムラSERT Motulが獲得。3位にはTATI TEAM BERINGER RACINGが入った。
4位には開幕戦で早々にリタイアとなったHONDA VILTAIS RACING、5位には序盤に転倒があったTSRホンダが続いた。最後チェッカー数分前にピットインを強いられたTEAM BOLLIGER SWITZERLAND #8は、悔しい6番手となった。
7番手にはアプリリアのマシンを駆るTEAM AVIOBIKE by M2 REVOが続き、SSTクラスの優勝を飾った。クラス2番手は総合8番手のNATIONAL MOTOS HONDA FMA、3番手は総合10番手のTEAM 33 LOUIT APRIL MOTOという結果となった。
また、日本勢はTeam Étoileが総合13位、SSTクラス6位で亀井雄大がチェッカーを受けた。前戦は中盤までSSTクラス3番手を走行する走りを展開するも、2度の転倒を喫してしまったことで無念のリタイアとなったが、参戦2戦目にして完走。次戦の母国レースに向けても良い結果を残せたレースとなった。
そして、石塚健を擁するMACO RACING TEAMはスタートで大きく出遅れたが、見事な追い上げで15位フィニッシュ。綿貫舞空を擁する#36 3ART BEST OF BIKEは19位でチェッカーを受けた。
今大会は37台中7台がリタイアとなり、計30台がチェッカーを受けた。今回は王者YARTヤマハとヨシムラSERT Motulが8時間を転倒もなく、ノートラブルで完走するという圧倒的な強さを見せたレースとなった。
ランキングではヨシムラSERT Motulが88ポイントで首位を維持しているが、1ポイント差にYARTヤマハがつける状況だ。そんな接戦のなか迎える次戦は、いよいよEWCシリーズ3戦目となる鈴鹿8時間耐久ロードレースとなる。
フル参戦組を除き、すでに42台のエントリーが決まっており、テストも実施されている。3連覇に挑むTeam HRCが強さを見せるのか、はたまた接戦を繰り広げるEWCフル参戦組が制するのか……。7月19~21日に鈴鹿サーキットにて行われる真夏の祭典、鈴鹿8耐ではどのようなバトルが待ち受けているのだろうか。
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