元F1最高権威者のバーニー・エクレストンは、自分は語られるほどの功績を残すことなく、ひとたびこの世を去ってしまえば「あっという間に人々から忘れ去られる」と発言した。
現在89歳のエクレストンは、F1ドライバー、そしてドライバーのマネージャーからチームオーナーへと転身し、その後は約40年にわたってグランプリレースのすさまじいまでの発展と繁栄を、その先頭に立って率いてきた。そしてF1をごく小規模な熱狂的愛好者集団から、グローバルなビジネス帝国へと変容させていったのだ。
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心の底ではひとりのドライバーであるエクレストンは、しかし同時に絶大な権力を振りかざしてパドックに対立を引き起こすような人物でもあった。2017年初めにリバティ・メディアがF1を買収した際、彼は後任へとバトンを渡すことを強いられた。
最近配信されたポッドキャスト番組『Beyond the Grid』にF1のトム・クラークソンと出演したミスター“E”(エクレストン)は、自分の功績について尋ねられた際、自分の人生など他人からはすぐに忘れられてしまうものだとして以下のように語った。
「歴史に残るようなものなど私にはない。他の多くの人々と同様、この世を去ればほんの数カ月で忘れ去られるだろう」
「誰も思い出したりはしない。世界は周り続けるし、新しい人たちが現れ、新しいことが起きる。たとえば20年前と比べても、今の世界は動きがとても早い」
「人々は、新しい出来事や新しいアイデアに意識が向きやすいものだ」
エクレストンは、現在も機会があればF1のパドックに足を向けている。2019年最終戦アブダビGPを訪れた際には、ルイス・ハミルトンが英国女王の新年叙勲リストから漏れ続けている件に関する議論に割って入った。エクレストンは過去に一度爵位を辞退したことがあると明かした。
「ああしたことに、私はことさら賛成するものではない。20何年か前、私もその機会を得たが辞退しようと決めたことがある」とエクレストンは説明した。
「実際のところ、自分がやってきたことは誰かに感謝される類いのものではないと考えているからだ。私は国のために良いことをしたくて、これまでやってきたわけではない」
「仮に、偶然私がやったことが国のためになったとすれば、それは良かったと思う。だが意図してやったものではないということだ」
エクレストンはさらに、その論理をハミルトン自身の爵位の問題にもあてはめた。
「彼は間違いなく、英国のために素晴らしい仕事をした」とエクレストン。
「一方で、たとえば私のように、彼も意図してそうしたわけではない。自分のやりたいことがうまくいくようにと考えて活動してきたのだろう」
「ただ多くの局面において、金銭的な利益は得られなくても国のために何かをしたいという人々は存在する。彼らにとっては、国のために何かができたということ自体がうれしいのだ」
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