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【6億円のオーダーメイド】アストン マーティン・ヴィクターへ試乗 848psのNA V12

掲載 更新 11
【6億円のオーダーメイド】アストン マーティン・ヴィクターへ試乗 848psのNA V12

6億円で作らせた自分だけのアストン

text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)

【画像】アストン マーティン・ヴィクター 驚愕価格のハイパーカーたち 全127枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


時々、筆者にとって願い通りのことが起こる。完璧なクルマへ身を置くことだ。

そんなクルマというのは、フロントエンジンの2シーター・クーペ。エンジンはハイチューニングの自然吸気V型12気筒で、MTを介して後輪のみを駆動するなら完璧だ。こんな構成は、近年では尚のこと珍しい。

2021年では、ステアリングホイールのシフトパドルは当たり前。四輪駆動で、エンジンにはターボかハイブリッド用モーターが付いていることがほとんど。理想的なクルマを見つけることは難しい。

しかし400万ポンド(6億円)の予算を惜しまないドライバーなら、自身のために1台作って欲しいと、どこかのブランドを説得できるかもしれない。それを実行した人物こそ、アストン マーティン・ヴィクターのオーナー。ベルギー在住だという。

そんなワガママを可能にした理由の1つは、アストン マーティン社内に2009年のワン-77用に作られた、プロトタイプのタブシャシーが保管されていたから。偶然にも。

7.3Lの自然吸気V型12気筒エンジンはコスワース社へ一度送られ、最高出力をさらに引き上げられている。760ps/7500rpmだったものが、目もくらむような848ps/9000rpmへ増強された。

サスペンションは、サーキットのためだけに生まれたハイパーカー、ヴァルカン由来。プッシュロッドがボールジョイントで結ばれ、公道も走れるように車高や動作特性に変更を受けている。

すべてが正しいと感じられるコクピット

ブレーキも、ヴァルカン由来のカーボンセラミック。冷えていても確実に効くように、ブレーキパッドは専用だという。

艷やかなボディは、すべてカーボンファイバー製。1977年から1989年にかけての傑作、V8ヴァンテージのスピリットを感じさせるデザインにまとめられている。

でも筆者が想起されたのは、1970年のDBS V8の方。1974年にモータースポーツへ参戦し、1977年と1979年には大幅な改造を受けたマシンでル・マン24時間レースを戦った。ブレーキパッドの減りが激しかった記憶がある。

この話をヴィクターの開発エンジニア、アメルパル・シンへ話したら、「それを覚えているんですね。われわれも開発期間中、そのマシンのことを考えていました」。と答えてくれた。

試乗したのは、英国シルバーストーンの内側にある小さなストウサーキット。路面が乾燥していたとしても、ヴィクターの能力を充分に発揮できるほど広いエリアはない。でも、その素晴らしさは確かめられた。

ヴィクターのシートに身を沈めステアリングホイールを握ると、すべてが驚くほど正しいと感じられる。コクピットは個性的で美しい。メーターパネルは、ヴァルキリーのものだという。

準備が整い、慎重に発進させる。筆者の前に試乗していたドライバーは、ミシュラン・カップ2タイヤが濡れた路面を充分に掴めず、2回はスピンしていた。筆者も最初のコーナーを、グリップ状態ではない角度で抜けた。

あらゆる部分がダイレクト

しかし、そこから先は最高だった。路面は湿っている程度にまで乾き、ミシュランのゴムを少し温められる。ヴィクターの本領へ、一歩近づくことができた。

サスペンションにはゴムブッシュが一切なく、反応は即時的。公道用ではなく、サーキット用のクルマに思えてくる。

エグゾーストノートは、正直いって過剰。重層的で豊かながら、何よりもボリュームが大きい。シンフォニックな、かつてのフェラーリ製のV12とも違う音響だ。遥かに挑戦的といえる。

1988年から1990年にル・マンを戦ったジャガーのグループCカー、XJR-9のサウンドに近いと感じた。そのクルマにも、7.0LのV型12気筒エンジンが積まれていた。そう考えると納得できる。

アストン マーティン・ヴィクターは、想像していたほど運転しにくくない。あらゆる部分がダイレクトで機械的にも剛性感が高く、現代のどんなモデルにもないフィーリングが得られる。常にクルマのすべてが伝わってくる。

848psもあるから、ストリート用タイヤのグリップ力を打ち負かすのは簡単。アンダーステア傾向は強いが、常に怒涛のV12エンジンのパワーを召喚できる。

アクセルペダルを一気に踏み込んで、片側のタイヤがグリップ力を失っても、もう一方で整えられる。テールの動きは速いものの、挙動は予想が付きやすい。800psのケーターハムのようにドリフトできる、というのは適切ではないかもしれないけれど。

今後手に入らないという悲しい現実

1台限りのヴィクターの試乗を終えて、いくつかの感情が心から湧いてきた。1つ目は、これまでに筆者が運転したことのあるクルマで、最も楽しいと思える1台だということ。

2つ目は、同等に純粋主義的な構成を採用し、より手頃な価格でFRのスーパーカーを生み出せるだろう、ということ。3つ目は、今後それを実現してくれる自動車メーカーは、ほぼゼロだという事実。

アストン マーティン・ヴィクターの素晴らしさを知るほどに、悲しい現実だ。

アストン マーティン・ヴィクター(欧州仕様)のスペック

英国価格:400万ポンド(6億円/予想)
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:321km/h以上
0-100km/h加速:3.1秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1600kg(予想)
パワートレイン:V型12気筒7312cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:848ps
最大トルク:82.9kg-m
ギアボックス:6速マニュアル

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みんなのコメント

11件
  • 6億もかけて車作るなんてバカみたいだよね。
    そんなバカげた事にムダにお金を注ぎ込めるのはほんと最高!
    なんでこんなに格差があるんだろう…
  • カッコ良いね、どことなくV8バンテージのデザインを現代風にしたような…ただこのステアリングは日本じゃ車検通らないかな。
    速い…だけではいくらでも代わりはある。
    やはり求めるのは官能的な五感に訴える何か。

※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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