2011年に登場し、その斬新なフォルムで一世を風靡したレンジローバー初のコンパクトSUV「イヴォーク」が、7年の時を経てフルモデルチェンジ。国内試乗記の第一報として、注目のマイルドハイブリッド車にスポットを当ててみた。(Motor Magazine 2019年8月号より)
先代の美点を引き継いだフォルム
後方に向けて引き下ろされるルーフラインと蹴り上がるショルダーラインによって、サイドウインドウがスリムになったクーペ的な軽快なフォルム。新型イヴォークはそんな初代の魅力を受け継ぎながらも、ディテールそのものはかなり変化した。フロントマスクや左右のコンビランプをガーニッシュで繋いだリアまわりの造形や、走行時に格納されるデプロイアブルドアハンドルの採用などには、ヴェラールとの共通性が強い。
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振り返ればランドローバーは、ヴェラールの開発時に「リダクショニズム」という新しいデザインコンセプトを打ち出した。新型イヴォークもこれに則って作られており、無駄なラインや凹凸を整理することで、フラッシュサーフェスなカタマリ感の強いスタイルに生まれ変わっている。
プラットフォームは電動化も考慮して新開発された、PTA(プレミアムトランスバースアーキテクチャ)だ。しかし先代からのサイズ変更は最小限で全長が25mm、ホイールベースで20mmの拡大に留まる。全幅は+5mm、全高は+20mmだから実際に走らせた時のサイズ感は先代とほぼ変わらない。
一方で、居住性はしっかり進化していた。全長方向の拡大は後席の膝まわりの余裕を生み出しているし、頭上から肩口方向の余裕が増えて若干ながら開放感が増したのは、歓迎すべき進化のポイントだろう。
ちなみにラゲッジルーム容量は定員乗車時591Lで、3分割シートバックを全倒させた場合は1383。先代は575~1445Lだったので、最大モードでの容量は少し減ったことになる。それでも、十分実用的だ。
パワーユニットは4種類。3つの仕様と組み合わせ
エンジンはモジュラー化された2L直4ターボのインジニウムシリーズを用意。180ps/430Nmのディーゼルのほか、200p/249ps/300psと、ガソリン3タイプが揃う。中でも注目は、48Vのバッテリーシステムとベルトインテグレーテッドスタータージェネレーター(BISG)を組み合わせたマイルドハイブリッド(MHEV)だろう。
日本向けには、ガソリンの300ps仕様(P300)だけに採用されるシステムだ。今回はこのパワーユニットを、最上級のRダイナミックHSEで試した。
ジャガー・ランドローバー初となるMHEVは、17km/h以下まで減速するとエンジンを停止させ、そこから先はBISGが発電した電気を蓄えて、次の発進ではBISGが滑らかにエンジンを再始動、加速ではパワーアシストも行う。
SちなみにBISGの出力は18kW。メルセデスベンツのシステムより少しだけパワフルな設定だが、この「追加分」はシステム出力として計上されていない。パワースペック値は、300ps/400Nmと公表されている。
実際に走らせてみても、モーターによるアシスト感はほとんど感じない。アクセル開度が深い領域ではとくに、高回転までシャンシャン回るエンジン本来のフィーリングが完全に勝っている感じだ。もちろん力強さに不満はなく、なかなかにスポーティ。ただ、アクセル開度が比較的少ない緩加速で、時として唐突にトルクが盛り上がることがあった。これがモーターのアシストによるものなら、9速ATとの組み合わせも含めた制御に今ひとつの洗練を望みたくなる。
フットワークは、新プラットフォームの採用によって、先代のパツパツとした乗り心地から、ストロークを生かしたしなやかな物に変わった。これはまぎれもない進化だが、ロール/ピッチ方向の動きがやや大きめで、キビキビ感が少し薄れたのは残念だ。
他にも、前後50:50を基本に、必要に応じて前後輪のトルク配分をシームレスに大きく変化させるアクティブドライブラインの採用や、4つの路面モードを備えるテレインレスポンス2の初搭載、ボンネット下の路面状態をモニターに映し出すクリアサイトグランドビューなど、新型イヴォークは装備面のニュースも極めて多い。(文:石川芳雄)
■レンジローバー イヴォークR-ダイナミックHSE P300 MHEV主要諸元
●全長×全幅×全高=4380×1905×1650mm
●ホイールベース=2680mm
●車両重量=1850g
●エンジン= 直4DOHCターボ
●排気量=1995cc
●最高出力=300ps/5500-6000rpm
●最大トルク=400Nm/2000-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=9速AT
●車両価格(税込)=801万円
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