GLM トミーカイラZZ初陣は来年に持ち越し
6月末、ヒーローしのいサーキットで第98回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム参戦車両となる、GLM トミーカイラZZのシェイクダウンを行ったチームSAMURAI SPEEDと、トップラリー・ドライバーである奴田原文雄選手が7月11日(土)、再び国内でマシンのテストを行った。 当初、6月28日(日)に決勝を迎えることとなっていた第98回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、新型コロナウィルスによる感染症COVID-19の感染拡大を受けて、決勝日を8月30日(日)に延期。チームにはこれに合わせ、マシンを仕上げてきた。
公道を走る国産EVレーシングカー! 「パイクスピーク」の参戦車両「トミーカイラZZ」をシェイクダウン
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、1916年に初開催となった世界で2番目に古いレースである。アメリカ・コロラドにあるパイクスピークという山を舞台に、スタート地点(標高2862m)から、標高4302mのゴール地点まで全長20kmのコースをいかに速く駆けあがるかを競うヒルクライム・イベントである。今回で98回目となる今年の大会は、COVID-19の影響で無観客での開催になることとなっている。 この日、茨木県にある筑波サーキットには、カラーリングを終え、外観を見る限り、もうコロラドに送られるだけの状態になったトミーカイラZZが現れた。シェイクダウンの際にお披露目された通り、ボディ上部に高く設置されたリアウイング、そしてフロントに大きく張り出したチンスポイラーが、空気の薄い高山をより速く登るためのパイクスピーク参戦車両らしい外観となっている。
今回参戦するGLMのトミーカイラZZ(#230 2020年式 GLM Tommy Kaira ZZ )は、市販モデルの2台分となる36kWhのバッテリーを搭載する。基本的なボディサイズは市販モデルの全長3870×全幅1740×全高1140mmと変わらずで、それにエアロデバイスが装着されている、ということだ。市販車の車両重量は850kgであったが、バッテリーを2台分積んでいるため、これを大きく上回る。ボディカウルやミラー、ダッシュボードに、セルロースナノファイバーを使用するなど、軽量化も進めている。 このトミーカイラZZのステアリングを握るのが、奴田原文雄選手(写真左)。モンテカルロラリーで日本人初優勝をしたこともある日本のトップラリーストで、このパイクスピークにも長年挑戦を続けるドライバー。2012年にTMG EV P002で10分15秒380のタイムでEVクラス優勝。2016年にはTRDがトヨタ86をベースに作ったコンプリートカー「TRD 14R-60」で挑戦(12分33秒139)。2018年、2019年は日産リーフで参戦をしたものの、いずれも天候悪化の影響で決勝レースでは山頂まではたどり着けていない。
天候が安定しない1日となったこの日、最初の走行からパイクスピーク参戦を意識して20kmを越える11周の計測を行うロングランから走行をスタート。その後、充電と各所のチェックを行って、完全に雨となった2度目の走行セッション(リアウィングを外して走行)でも電欠までフルラップをしてこの日の走行を終えた。 走行後、奴田原選手は「ヒーローしのいサーキットのシェイクダウンで出た、いくつかの課題のうち、一つはクリアできました。今回はレース距離を走りたい、というところで全開で走行することができたのは良かったですが、達成度合い的にはまだ40%くらいです」とコメント。まだまだスピードも足りない、とチームに檄を飛ばす。 当初国内ではシェイクダウンのみを行って車両をアメリカに送るはずだったSAMURAI SPEEDは、この後、正式に今回の第98回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの参戦を断念する発表を行った。まだ予断を許さないコロナ禍も情勢を見つつ、参戦を検討してきたチームだが、新型コロナウイルス感染者が増加する北米への遠征は、ドライバー、パートナーシップ企業各社、スタッフを含む関係者の健康安全を確保することが非常に困難であると判断に至ったということだ。
奴田原選手は「残念ですけど、この新型コロナは世界的に見ても収束する気配もないので、しかたがないというか、今回のチームの判断は賢明だと思います。チームのサポートしてくれる皆さまにきちんとした結果を出すことも考えると、今年はテストに集中して来年に向けてやれればいいかなと思います」とすでに気持ちを切り替えていた。
チームは、2021年6月開催予定の第99回のパイクスピークへの参戦の準備を進め、車両の戦闘力アップの施策を継続的に続けるとしており、さらに本年度内に開催される国際ヒルクライムイベントへの参加を検討していくという。
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