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【FF最速……だけじゃなかった】新型メガーヌR.S.トロフィーRの狙いとは 前編

掲載 更新 10
【FF最速……だけじゃなかった】新型メガーヌR.S.トロフィーRの狙いとは 前編

シビック・タイプRの作戦

text:Kazuhiro Nanyo(南陽一浩)

【画像】オートサロン展示決定 メガーヌ4 R.S.トロフィーR【タイムアタックの記録】 全46枚

2019年11月末日。鈴鹿サーキットで新型メガーヌR.S.トロフィーRが、テストドライバーであるロラン・ウルゴンのドライブで2分25秒454を叩き出したことは、方々で報じられている通り。

遡ること半年前の2019年5月には、ニュルブルクリンク北コースで7分43秒80というそれまでシビック・タイプRがもっていたFF最速のタイトルを、7分40秒100で奪い返した。それも、この新しいトロフィーRとロラン・ウルゴンの仕業だった。だがそれは、ホンダに対してルノーがリベンジを果たした、という単純な結論ではない。

スポーツの考え方として、タイムアタックとはいえホンダが欧州に出張ってくるのは「アウェー」の闘いを強いられている訳で、ルノー・スポール側がホンダの「ホーム」、つまり鈴鹿にも出向いていって、ようやく双方の条件が揃うイーブンといえる。

だからこそ、6年前の2014年の同じ時期、先代メガーヌR.S.の時代から、ルノー・スポールは同じように鈴鹿サーキットでもタイムアタックを行った。その時は3世代目のメガーヌR.S.トロフィーRで、ロラン・ウルゴン自身が、2分28秒465を記録した。

対してホンダとシビック・タイプRは2017~18年にかけて、アウェーで暴れ回るという戦線拡大の戦略を採った。

ルノー・スポールの闘い方は?

シビック・タイプRは、スパ・フランコルシャンやシルバーストン、エストリルなど欧州の主要サーキットでジェンソン・バトンまで起用して、続々とFF最速ラップ・レコードを打ち立てまくるという、なかなか天晴れな挑発にして全面戦争だった訳だ。

現行のメガーヌR.S.が出たばかりの頃から、タイムアタックはどうするのか? と、ルノー・スポールのディレクターであるパトリス・ラティ氏に、機会あるごとに訊ねてはいた。

いつも異口同音の答えは、やらないでもないけど、どうやるかが問題だ、というものだった。

今にして思えば、全面戦争にのってあちこちで予算をかけるより、少ない手数で効果的にやるにはどうするか? そこを練っていたのだろう。

この辺りにルノーが大衆車メーカーでありながら、長らくF1を続けられている秘訣があると思う。

というわけで、第4世代メガーヌR.S.トロフィーRが、ニュルとスパと鈴鹿に集中して、以前と同じく一番時計を制しても、ルノー・スポールの経営陣はそこに繰り返しの匂いを嗅ぎ取ったのだろう。

単なるリベンジ合戦に陥らずに、モータースポーツを促すというミッションを鑑みた上で、進歩すべき点はどこか?

地元ドライバー起用の意味

そこで2019年中に新しいトロフィーRは、オーストラリアの国際格式サーキットであるベンド・モータースポーツパークでも、FF最速タイム2分14秒316を打ち立てた。

ロラン・ウルゴン自身ではなく、TCRオーストラリアにメガーヌR.S. TCRで参戦している地元ドライバー、ジェームズ・モファの手による記録樹立だった。

つまり、ウルゴンでなくても腕のあるドライバーが乗れば、タイムが出るクルマである、ということだ。

以上が今回の鈴鹿タイムアタックの前提であり、変わらない基調でもあった。

鈴鹿でタイムを詰めていくにあたって、2月に市販に近いプロトタイプでもテスト走行を行ったそうだが、その時からD1 GPやGT300、スーパー耐久などで経験豊富なドライバーである谷口信輝選手が、セッティングを手伝っていたのだ。

「ぼくが頼まれていたことはアドバイス云々より、鈴鹿のコースを知る自分と、トロフィーRをよく知るウルゴンさんで乗ってみて、クルマを仕上げていくやり方だったと思う」

「最初に乗せてもらった時は妙なセッティングで、乗った感じ、何をどう言うのか、ぼく自身が試されている気もした(笑)。でも以前のメガーヌR.S.トロフィーの時から、これを作ったヤツは凄いな、天才的だな、とは思っていましたね。FFでこんなに素性のよさを感じさせるクルマは他にない」

鈴鹿投入は右ハンで

タイムアタックの前週に航空便で着いたばかりの右ハンドル仕様は、027/500というシリアルナンバーをキックプレートに刻んだ、工場から出荷されたままの1台だった。

「右ハンドルで鈴鹿に挑むことに大きな意味がある」と、ウルゴンは述べる。全世界500台のうち、日本にも台数限定で割り当てられる予定だ。

「航空便で大急ぎで運んだせいで固定バンドに引っ張られたせいか、前輪は本来、0.1°のトーアウトなんだけどアライメントが狂っていて……」

「昨日はちゃんと走れなかったし、しかもエンジンもまだ走行3000km程度で、慣らし終えていない。ホントにアタックできるのかな」と、眠そうな目を擦るウルゴンは、珍しく頼りなかった。

別のスタッフいわく、今回来日できなかったシャシー・エンジニアのフィリップ・メリメ氏と、足まわりの問題をどう改善するか、夜遅くまでチャットで話し合っていたのだとか。

後編では、コース上の闘いをお届けする。

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みんなのコメント

10件
  • カーボンホイールにブレーキリアシートも無いワンメークレース公認車みたいなのと比べられてもな~ルノーの焦りしか感じないわw
    これ見るとシビックが普通車見えるよw
  •  そもそもニュル北の数秒って誤差じゃないか?どんなプロでもギリギリのガチ攻め出来るコースじゃないし。もっと普通のコースで比べて欲しいね。タイヤもお互いどんなの履いてるのか良く分からん。
     24時間レースの次の日とかにやったらラバーが乗ってて良さそうだなw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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