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見た目は先代を踏襲しながらも中身は別物! 新型スズキ・ハスラーのチーフエンジニアにインタビュー

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見た目は先代を踏襲しながらも中身は別物! 新型スズキ・ハスラーのチーフエンジニアにインタビュー

 ライバルの大幅な進化が軽自動車のハードルを上げている

 東京モーターショー2019に「ハスラーコンセプト」として出品され注目を集めた、新型二代目スズキ「ハスラー」が、クリスマスイブの12月24日に正式発表。1月20日より販売が開始される。

スズキから新型ハスラーが登場! パワートレインは「先代とは別物」といえるほど進化

 プラットフォームを「ハーテクト」の進化版へと一新するとともに、パワートレインにも大幅に改良を施してきた、その狙いは。開発を指揮した竹中秀昭チーフエンジニアと、渡邉 司アシスタントチーフエンジニアに聞いた。

──初代ハスラーの走りに対するユーザーの評価は?

 竹中:見た目がSUVということから想像されるとは思うのですが、車高が高くタイヤが大きく、ゆったりした走りでフワフワして、その一方で大きい入力に対してはゴツゴツする……という点が、不満点としては上がっていましたね。

──実際の使われ方としては、圧倒的にオンロードの方が多かったのでしょうか?

 竹中:「このクルマを買ったら何かできそうだ、どこかに行きたくなりそうだ」と期待される方は多いのですが、実際には日常の買い物や送迎、通勤通学といった使い方の方が多いので、そういった日常域をもう少し重視した方がいいのではと、今回新型ハスラーを開発するにあたって考えたことです。

──そういったユーザーの意見を踏まえて、とくに重点的に変更・改良したのは?

 竹中:乗り心地の面では、ハーテクトの土台に対して上屋をしっかりさせるため、環状骨格構造や構造用接着剤を上手く使いながら、車体剛性を上げていったのが一番ですね。それを基本にして、足まわりをしっかり動かすようチューニングして、ややオンロード寄りにする基礎を作ったのがまず第一です。

──では、足まわりのセッティングは若干ソフトになっているのでしょうか?

 竹中:初代もバネ定数を下げる方向を目指したかったのですが、ハーテクトよりも以前の車体で、今のトレンドからするとシャシー剛性が不足していたので、バネ定数を下げきれませんでした、車体がよれてしまうので。そういう所を改善するために、ボディを固めてサスペンションを動きやすくして、バネ定数を低めにしています。

 渡邉:現行モデルは車体の剛性と足まわりポテンシャルが、今の他社レベルに届いていない所がありますので、それでお客さまが乗ったとき、フワフワするとか落ち着かない……という声が上がっていました。

──その「他社」のクルマというのは?

 竹中:なかなか直接比較できるクルマがないのですが、同じ大きさのタイヤを履いていて、車高を上げているという所では、ダイハツさんのキャスト・アクティバですね。

 渡邉:車両の性能としての比較は、ライバルがいないのでしていないのですが、軽自動車ではホンダN-BOXやダイハツ・タントなど、各社の今のクルマがお客さまにどう乗られているかをベースとして、それに対しハスラーはこういうクルマだから……という分け方をしていますね。ハスラーの競合ではないクルマも、皆さんすごく良くなってきているので、それらの変化を踏まえて……という捉え方ですね。

 N-BOXがあれだけ背が高いのにしっかりできているので、基準点が上がっていると認識しています。そうするとお客さまも、ハスラーをその基準点が上がった目で見られるだろうと思いますので。

 当社のなかで見ますと、小型車ではスイフトがありますが、スイフトを良くしていくなかで軽自動車はどうするかということになりますので、ハスラーもレベルを上げる必要が出てきます。

──それは大変ですね。

 渡邉:お客さまは同じカテゴリーのクルマだけ乗り比べるわけではありませんから。一般的なイメージとして、最近のクルマはどうかという意識を持たなければならないと思っています。

 新型ハスラーでプラットフォーム「ハーテクト」は搭載車種が一巡

──新型ハスラーには環状骨格構造や構造用接着剤が採用されていますが、このタイミングで投入した理由は?

 竹中:もちろん基礎技術の先行開発はしていたのですが、ハスラーというクルマはデザインがもっとも重視されますので、あの形を性能のために崩したくない、崩さないということで、見えない所で何ができるのかを考えたというのがまずひとつです。

 あとは乗り心地を良くしたいということから、私が車両性能開発を20年以上担当していたので、車体開発や実験の部門と「やるんだったらここから入れていこうよ」と話をしながら、設計から製造まで全部門に協力してもらって、新型ハスラーから量産できるように準備してもらいました。

 渡邉:発破をかけたからだと思います(笑)。オンタイムのスケジュールではありませんでしたが、相当巻いて何とか間に合わせた、という所ですね。

──そういう意味では、従来通り「ハーテクト」とは言いながら、作り込みのステージが一段上がった印象を受けます。

 竹中:ハーテクトは現行アルトから始まって新型ハスラーで一巡しますから、もっとも進化した形のハーテクトにして、上屋も含めて剛性を出そうと考えて作り込みました。

 渡邉:現行軽自動車ラインアップのなかではハーテクトを採用する最後のモデルになりますので、これを幸いに次の世代を先取りできたのではないかと思います。先取り「させた」というのが正しいと思いますが(笑)。

──では、新型ハスラーを皮切りに、この新しいハーテクトを水平展開していくということですね?

 竹中:将来のことは何も言えませんが(苦笑)、基本的に今後の商品には同じような思想で。

──ホンダさんもダイハツさんも最近新しいプラットフォームを投入しましたが、スズキさんは両社に先駆けてプラットフォームを刷新しました。今後のモデルでは、今回のような大改良を施すのか、まったく違うものを導入するのか……。

 渡邉:ハーテクトは軽量化を図りながら衝突安全性能を上げることを主眼としていますが、新型ハスラーは最後の採用車種になりますので、次は性能アップを図ろうと考えて採り入れたのが、環状骨格構造や構造用接着剤、高減衰マスチックシーラーですね。軽量にしていくとどうしても板厚を薄くするという方向になりますが、そうすると弊害もありますので、その対策を新型ハスラーから打てたのが大きいですね。

──高張力鋼板の使い方は、今までと変わらないのでしょうか?

 渡邉:張力のグレードはさほど上げていませんが、適用部位は拡大していますね。

──重量は初代に対しどのように変わりましたか?

 竹中:ハーテクトの採用で車体は20kg軽くなっていますが、新しいエンジンで若干重く、CVTで軽くなり、その一方で安全装備を充実させているので、最終的には若干重くなっていますね。今回は基本的な性能を上げるために重量をかけているので、むやみに軽量化していません。

 渡邉:自動車業界全体で軽量化がひと段落して、今は反転する傾向にありますね、いくら軽量化しても装備がどんどん増えていくので。

 パワートレインはまるで別物のように進化している

──NAモデルに採用されたR06D型エンジンの「デュアルインジェクションシステム」は、スイフトなどのK12C型エンジンのものと同じでしょうか?

 竹中:考え方は同じですね。燃料を微粒子化するものです。

 渡邉:デュアルにしたポイントは、噴霧するの位置を燃焼室に近くしていることですね。それによって気化潜熱して燃焼室の温度を下げられるので、それだけ余裕ができます。

──「急速燃焼」の狙いは?

 渡邉:モード燃費だけではなく実用燃費を良くすることの基本は急速燃焼ですから、燃焼室への混合気の流入速度を上げたり、タンブル比を70%ほど高めたり、燃焼室の形状も見直したりして、隅々まで確実に素早く燃えるようにしています。

 竹中:自分たちでも「なんでR型のままなんだろう?」と思うくらい、多くの変更が入っています。

──ボア×ストロークとボアピッチが同じということですか?

 竹中:いえ、ボア×ストロークは変えています。同じなのはボアピッチだけですね。

 渡邉:急速燃焼させるために、ストロークを伸ばしています。燃焼室をコンパクトにするのにも効いていますね。それで熱損失を下げられますから。ホンダさんもマツダさんもトヨタさんも、ガソリンエンジンを極めようとしていますので、当社も軽自動車として極めようという方向に来ています。急速燃焼によって与えられた燃料を最大限エネルギーに変えるのがポイントですね。

──CVTはどちらのメーカーのものですか?

 竹中:アイシンAWさんの、スペーシアから入れたものの改良版になります。効率を大幅に上げていますね。

 渡邉:「改良版」と言えないくらい違いますね、ボルト類くらいしか同じものはないのではないかというくらい。CVTはベルトと油圧が肝ですから、それを新しくしているということは、基本は全部違うと言っていいと思います。それに発進のときのトルクコンバーターも変えていますから、「何が一緒ですか?」というくらいの新構造です。

──マイルドハイブリッドはどうですか?

 渡邉:これもまた、全然違います(笑)。

 竹中:基本的な構造は変わりませんが、エンジンへの取付やチューニング、部品自体も変わっています。ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)はモーターの出力を上げていますし、バッテリーも定格容量は同じですが充放電の効率を高めています。モーターが低速から力強く助け、高速域も100km/hまで対応するようになっています。エンジンとCVTとマイルドハイブリッド、全部三位一体で新しくなっていますね。

──ADASについては機能追加のほかに、ハードウェアも変わっているのでしょうか?

 竹中:変わりました。現行ハスラーのものは大きめでルーフ自体に装着されているのですが、新型のものは小型軽量化されて、フロントガラスに取り付けるようになっていますね。システム自体はソリオのマイナーチェンジで採用されたものをベースにしています。

──ACCや車線逸脱抑制機能がターボ車のみに設定されているのが惜しいですね。

 竹中:遠出する方はターボ車ユーザーの方が多いという考えからですね。基本的な走りのポテンシャルに加え、そういった機能面のプラスも含めて、選んでいただきたいと思っています。

──ありがとうございました。

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