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「さよなら」ジャガーのサルーン XF 250PSでラストラン(1) 高い一貫性 濃い一体感

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「さよなら」ジャガーのサルーン XF 250PSでラストラン(1) 高い一貫性 濃い一体感

AUTOCARでは高く評価してきたXF

ジャガーの上級サルーンを購入したいと考えた現代人は、多かったわけではなかった。確かなファンも存在したものの、しばらく誰も新車では購入できなくなった。

【画像】孤立を恐れない知的な雰囲気 ジャガーXF 内燃エンジン時代のサルーン、XEとXJも 全102枚

今回お借りしたシックなXFは、生産終了を控えた2024年にラインオフした1台。トラディショナルなシルエットのジャガーは、当面作られる予定がない。

だいぶ先ながら、次世代が登場することは明らかになっている。そこまで悲観する必要はないかもしれないが、バッテリーEVになることは間違いない。遥かに高価格帯に据えられるという情報もある。これまでのユーザーを、取り込むことはできるだろうか。

そもそも、ジャガー製サルーンの魅力とは何だったのか。どんなドライバーを満たしてきたのか。それを改めて確認するべく、筆者は最後のXFでロングドライブしてみることにした。

2007年に発売された初代XFを、AUTOCARでは高く評価してきた。見事に達成された仕上がりにあると、試乗したわれわれはまとめた。ジャガーが必要とした世界水準のモデルであり、タイミングも丁度いいと判断した。

スタイリングは伸びやかで、ハンサムだった。乗り心地は快適で、操縦性も素晴らしかった。ドイツ勢と比べて価格はお手頃といえ、製造品質も劣らなかった。狙い通りのジャガーといえた。

一貫性が高く、一体感の濃い運転体験

2代目の登場は2015年。多くの特徴を受け継ぎ、筆者はとても気に入っていた。クラス最高の操縦性が強みだった。一貫性が高く、一体感の濃い運転体験は、ドライバーを笑顔にすることができた。

ただし、ジャガーは多くの人へサルーンを売ることが得意とはいえなかった。多様な人へ訴求できるような、バリエーションの展開はなかった。結果として、納得できる数は生産できなかった。

ジャガーは、高級バッテリーEVメーカーへ生まれ変わろうとしている。この2代目を、内燃エンジン時代最後の上級サルーンとして残して。

そこで、オーナーの意見を聞けるかもしれないと考え、XF 250でいくつかの場所を訪れることにした。同社の経営陣へ伝えたいアイデアを、引き出せるかもしれない。

まず向かったのは、ロンドン西部のハマースミス・エリア。20世紀初頭、エドワード朝時代かヴィクトリア朝時代かわからないが、クラシックなテラスハウスが並んでいる。

筆者が目指した建築は、20世紀半ば、エリザベス女王時代に完成したもの。筆者の記憶では、1980年代は中古車販売店で、有名なジャガー・オーナーが経営していたはず。

といっても彼は、俳優のジョージ・コール氏が演じた架空の人物。1979年にテレビ放映が始まったコメディドラマ、「マインダー」のアーサー・デイリー氏のことだ。

抜群に美しいスタイリングだった4代目XJ

デイリーは中古車販売店を営む、プロの犯罪者であり詐欺師だった。愛すべき悪党の1人に数えられると思う。

彼が愛車にしたのが、ジャガーXJ。初期のマインダー・シリーズに登場したのは、1973年のXJ6 4.2シリーズIIだったが、途中からXJ シックスと、XJ ダブルシックスへ変わっている。兄弟モデルといえた、デイムラー・ソブリンのステアリングホイールも握った。

本来なら今回の試乗車も、2009年に発表された4代目XJがベターだったかもしれない。しかし、惜しいことに生産は5年前に終了している。

デザイナーのイアン・カラム氏は、エグゼクティブ・サルーンとして抜群に美しいスタイリングを生み出したが、新車での手配は既に叶わない。当時は、最も運転しやすい大型サルーンでもあった。

少々型破りな人物のデイリーは、贅沢を喜ぶ志向を持ち合わせていた。大変な仕事は部下へ頼み、ライベート・クラブで酒を傾け、高価な葉巻を嗜んだ。キャメルのコートを、心地よさそうに着こなした。

あいにく、現在のロンドン西部へ広がる住宅街に、贅沢を謳歌する余裕は感じられない。気前の良いジャガー・オーナーへ、意見を伺うことは難しいようだ。電動クロスオーバーの方が、2024年のこの景色には馴染むようにも思う。

運転しやすく快適で、体格の良い数名を乗せられる

ハマースミスでの取材を諦め、その北にあるシェパーズ・ブッシュ・エリアへ移動してみる。鉄道をくぐるアーチの下に存在することになっていた、デイリーの倉庫を探してみる。ところが、クロスフィットという、新エクササイズのスタジオになっていた。

怪しい物品を、こっそり保管しておく雰囲気とはまるで違う。ジャガーが似合うともいえないようだ。

さらに西へ足を伸ばし、サウスオール・ガスワークスを目的地にする。この辺りは庶民的なエリアで、工場も隣接していたはず。様々な人が暮らしているから、ジャガー愛好家も見つかるかもしれない。

その1人として思い浮かぶのが、ジャック・リーガン警部。もっとも、「ロンドン特捜隊スウィーニー」というテレビドラマに登場した主人公だけれど。彼が運転したのはフォードのパトカーだが、荒涼とした倉庫街を逃げるジャガーを執拗に追いかけていた。

「犯人は時速90マイル(約145km/h)で逃走中。命令がおりたので、ヒースロー空港の倉庫に悪党一味を閉じ込めます」。というやり取りで向かったのが、この場所だった。

犯人が乗っていたのは、スポーティな4ドアのジャガー。この設定には、ちゃんと理由があった。運転しやすく快適で、体格の良い数名の相方を乗せられ、逃走に充分な速さも備えていたからだ。

この続きは、ジャガーXF 250PSでラストラン(2)にて。

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