この記事をまとめると
■風によるクルマへの影響や対策を解説
ただ水たまりに突っ込んだだけなのに……最悪廃車もある「ウォーターハンマー」って何?
■「風速30m/h以上」はトラックが横転するレベル
■走るのが困難だと感じた場合は安全な場所で一旦停車するべき
「風速30m/h以上」はトラックが横転するレベル
今夏は、記録的な短時間集中降雨が頻発し日常の生活に大きな影響を与えているが、自然現象は走行中の車両にも大きな影響を与えている。激しい降雨はドライバーの視界を妨げ、道路上の排水が間に合わず深い水溜まりを作り、車両の通行が不可能になる事態を招くことも珍しくない。
こうした自然現象のうち、しばしば遭遇するもののひとつに風の影響がある。台風のさなかに車両を走らせれば、当然ながら大きな影響を受けることは誰にでも分かるが、そうではないふだんの状況で、強い横風を受けて一瞬走行が危うくなるケースを体験した人も少なくないだろう。
個人的な例で恐縮だが、東京から鈴鹿サーキットに向かう伊勢湾岸自動車道は、強烈な横風を受ける道路として広く知られている。伊勢湾をまたぐ橋梁上でしばしば強烈な横風を受けるのだが、そこは左右切り通しで何もなく、洋上に橋梁が浮かんでいる状態なので、風の影響をまともに受けてしまう。「大きく煽られる」という表現がピッタリで、場合によって自分の走行レーンをキープするのに四苦八苦することもある。
さて、どの程度の風速で走行車両にどのような影響が出るかを調べてみたのだが、損保会社の東京海上日動が、風速ごとによる走行車両への影響を表にして提示していたので、そのデータを紹介することにしよう。
まず、やや強い風と感じるレベルが風速10~15m/hだという。この状態は、風向、風力の目安となる吹き流しの角度が水平になり、高速走行中には横風に流される感覚を受けるという。これが風速15~20m/hになると横風に流される感覚が大きくなり、さらに20~30m/hでは通常の速度での走行も困難になる。そして風速30m/h以上になると、表現としては「強烈な風」となり、走行中のトラックが横転すると説明されている。
走るのが困難だと感じた場合は安全な場所で停車を
車両の形状別に横風の影響を考えてみよう。横風による影響の度合いは、当然ながら車両形状と大きく関係してくる。横風を受ける車両の側面形状、これがカギになることは誰にでもわかるだろう。側面の投影面積が大きいほど風の影響は大きくなる。全長が同じなら、3ボックス形状が最小で、次に2ボックス形状、そしてミニバン、ワンボックス形状の順で大きくなる。車体サイズが大きく、絶対的な投影面積の大きな大型トラックが不利なことは明らかだ。
駆動方式の違いも直進安定性の面で効いてくる。通常の2WDより4WDのほうが直進安定性は高く、もちろん横風の影響は受けるが、2WDより直進安定性を保ちやすい。常時4WD方式で走るフルタイム4WD方式を乗用車に持ち込んだアウディとスバルは、期せずして「全天候型」を車両の特徴として謳い、市場に対する訴求ポイントとして強調してきたいきさつがある。
横風の影響を受ける条件での運転操作にいくつかコツはあるが、ひと口で言ってしまえば「慣れ」という言葉に集約できるし、また横風の強さ(強弱の変化)によって瞬間的に判断、対応するものなので正しいドラテクとしては説明するのは難しい。ただ、個人的には、高速道路で横風を受けたら即座に対応しようとはせず、ワンテンポ遅れる感覚(流れに合わせるタイミング)で修正を図っている。これは意外と走りやすい。また、同時に走行速度を下げることも必要だが、より安全係数を高くとるには、第一通行帯(いちばん左の走行レーン)を走るようにしたい。高速道路の最低速度は50km/hで、かなり強いと感じる横風のときも、この速度なら走行は可能だ。問題は、前後を走る車両速度との協調も必要で、1台だけ走行速度が異なると別の意味で危険を招くことになる。
速度を極力控えた走行でも走りにくい、走るのが困難だと感じるときは、停車できるところまで進み、横風が弱まるまで待つべきだ。常識的に考えれば、これほど風が強い状況なら、高速道路の場合は、いったん区間通行止めの措置がとられそうにも思えるが、現場の状況に対して通行止めの措置は、必ず遅れたタイミングとなる。また、こうした状況が管理センターで正しく把握されてない場合もあり、通行注意といった注意情報の提示にとどまる場合もある。
大切なのはドライバーの状況判断。そして自分の安全は自分で守るという意識。これがドライバーの果たすべき必要最低限の運転義務と言えるかもしれない。
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