モードによるキャラクターの変化幅は大きい
今回、WRX S4が新型として進化するということで非常に話題になっている。
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2.4リッターに排気量アップした上に強力なCVTのトランスミッションを装着し、独自の四輪駆動AWDシステムを搭載しているということで走りを重視するマニアを中心に注目が集まっているのだ。今回は袖ヶ浦サーキットが試乗コースに選ばれた。路面はあいにくウエットだが四輪駆動ということもあって問題なく走れるはずだ。
試乗モデルはスポーツグレードのSTI Sport R。エンジンを掛けるとデフォルトではノーマルモードというドライブスモードに設定されている。これはステアリングスイッチでコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツ+、さらにインディヴィディアルというように切り替えることができる。切り替わる要素としてはエンジンのパワー特性、アクセルレスポンス、トランスミッションの変速タイミングそしてステアリングのレシオがクイックに切り替わる。
今回ダブルピニオンのパワーステアリングとなり、しかも電動ということでその特性を劇的に変えることができているようだ。加えてサスペンションのダンパー特性も変化するということで、幅広い走行コンディションに適応させることができる。
まずノーマルモードで走り出すとクルマとしては非常に穏やかな特性でエンジンもマイルドな感じで静かで普通の乗用車として使える感じに仕上がっている。WRXという名前が付くとちょっと身構えてしまうような印象があるが、決してそうではなく、普通の乗用車として扱いやすい特性で特別なクセを感じさせない状態になっていた。
コンフォートモードに切り替えるとアクセルレスポンスがさらに穏やかになり、パワーが低くなったような印象を受ける。足まわりが柔らかくなるため、市街地や悪路、雪道などを走るような時にはこのモードでもいいのかなと思わせる面がある。
タイヤが徐々に温まるにつれて、スポーツ、スポーツ+と切り替えていく。スポーツ+にするとギヤが2段階ぐらいローギアに切り替わり、エンジン回転数が高まると同時にアクセルのピックアップレスポンスも大幅に向上してWRXらしい猛々しい走りに変貌をする印象を受ける。
それをさらに強めているのがステアリングだ。ちょっとしたハンドルの切り込みに対して過剰なほどフロントがレスポンスして回頭性を高めるというようなキャラクターが与えられている。路面がウエットなのでこのフロントのゲインに対してリヤの追従が追いつかないほどで、時にはリアがスライドしオーバーステアでカウンターを当てて走るような走行シーンになることがある。
CVTはダイレクト感に優れる
じつはこのサーキット走行に備えてVDCはすべてオフにしていて、これをオンにしておけばスピンするようなことはないが、介入が比較的早く、状況によってはスライドしてからかなり強い介入が入りギクシャクした感じが発生してしまうためVDCはオフにして自分でコントロールするような乗り方がむしろ望ましいと言える。
その結果ハイスピードコーナーや低速コーナーに関わらず状況に応じて非常にオーバーステアになったり、パワーオンでは強いプッシュアンダーステアが出るといったような状況だ。ただプッシュアンダー状態でもステアリングを切り回していくとトルクスプリット前後のトルク配分が45:55ということで、リヤ駆動よりなのでパワーオーバーステア傾向に若干移行するような場面もある。このようにオーバーステアが出たりアンダーステアが強まったり、あるいは逆ニュートラルステアであったりといったように、ステアリング特性には一貫性がなく、状況に応じた変化が大きいというのが今回とくに印象に残ったところだ。
これはボディーのサイドガーニッシュ、ホイールハウス周りに配された新しいホイールアーチモールのカバーなど、ブラックの樹脂成型された部分にディンプル加工がしてあり、これらの空力効果が非常に大きいという側面があり、ステアリングが直進状態の時には空気が綺麗に流れてそれらの効果が上がり、逆にコーナーでステアリングを切ってタイヤのホイール角度が付くと空気の流れが変わりディンプル効果が変化してそれが車両特性に影響を与えるというようなところもあるのかもしれない。
ステアリングのレスポンスやパワー、それにシフトプログラムなどが変化することによってハンドリングに一貫性がなくなってしまうところは少し疑問に感じるところだ。従来モデルのようにアンダーステア一辺倒であるのも困るが、もう少しドライバーが自ら意思判断してクルマの姿勢を自分の求める姿勢に持ち込めるようなクルマとしての受け身のバランスコントロールがさらに高まることを期待したい。
CVTトランスミッションには8段のステップ比が切られている。ノーマルモード以下では基本的にCVTなので無段変速だが、スポーツモード以上ではこの8段変速が常に作動して8速ギヤとして走っている感覚になる。シフトアップはコーナーの横Gが強い時などには抑えられてギヤホールドするし減速時にはブレーキの制動の強さに応じてシフトダウンをブリッピングを伴って行うので、まるでツインクラッチのDCTに乗っているかのような錯覚を覚えるような仕上がりであった。ただマニュアル操作をしても2速あるいは1速といった低速ギヤに切り替える時は車速が十分に落ちていないとはじかれてしまうので、その辺はCVTの弱さが少し出ているところだと言える。
このCVTはトルコンを介して作動しており、トルコン内にロックアップクラッチも付いているのでダイレクト感は十分にあるし、従来のCVTよりもステップを切ることによって エンジンが過剰に先走って回っていくというような感覚は薄れてはいるが、サーキットの連続周回など過大な負荷がかかるような場面ではだんだんオイルポンプがノイジーになって油温も高まり連続走行は厳しいのが現状だということだ。
オプションなどでオイルクーラーが準備されることも考えられるし、またWRX STIとして今後マニュアルシフトモデルも登場するという噂もあるので、サーキットなどを多く走るユーザーはそちらを選んだほうがいいと言えるだろう。
ハンドリングに優れるレヴォーグSTI Sport R
また今回レヴォーグにも2.4リッターを搭載したモデルが追加されている。こちらもSTI Sport Rというグレードモデルが用意されていてドライブモードやレカロのスポーツシートなども選択可能なラインアップになっている。
レヴォーグは2020-21年の日本カーオブザイヤー大賞を獲得した評価の高い車で今回2.4リッターエンジンを搭載してより上質な乗り心地と乗り味に熟成されたと言えると思う。ワゴン形式のボディーゆえに前後の重量バランスに優れており、スバル独自のシンメトリカルによる左右の重量バランスだけでなく、前後重量比もセダンに比べて向上しているのでハンドリングに関してはより安定してライントレース性も高まっていると言える。ただ絶対的な重量、そしてボディー剛性などはセダンに分がありモータースポーツなどのシーンで活躍を期待するとしたらセダンに優先権があると言えると思う。
かつて三菱のランサーエボリューションはワゴンボディーのランエボをレースシーンで使ったことがあり、時にはセダンのランエボを凌駕するほどの速さを示したこともあった。それはやはり重量バランスが優れているということが大きく影響していたのでレヴォーグもSTIにマニュアルトランスミッションを搭載した強力なモデルがあれば、レヴォーグでモータースポーツあるいはサーキット走行を楽しもうという新たなユーザー層の開拓につながるかもしれない。
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