2021年11月19~28日に開催された中国・広州モーターショー。オンラインではなく、バーチャルな開催となった広州国際モーターショーの会場にはコンパニオンも姿を見せ、出展した車種数は1020台、そのうち、EVなどのNEV(新エネルギー車)は全体の約4分の1、241台が出展した。
日本車メーカーでは、まずホンダが、中国初となるホンダブランドのEV、eNS1とeNP1、広汽ホンダが中国版オデッセイを公開。
三菱逆襲の行方を左右!! 新型アウトランダーPHEVの超進化と復活への課題
そのほか、広汽トヨタがハリアーの姉妹車であるヴェンザ、東風日産がe-POWER搭載のシルフィーを出展。広州モーターショー直線にフォトデビューした広汽三菱のEV、新型エアトレックが世界初披露となった。
なかでも会場で注目を集めていたのが、中国らしさに溢れた、世界初の1充電あたりの航続距離が1000kmを超えるEVやアルファード対抗の超高級ミニバンたちだった。
今回は、広州モーターショーで話題を集めた中国車にスポットを当てて紹介していきたい。
文/ベストカーweb
写真/News Press、GAC、GWN、Xpeng、Voyah、Buick、ORA
[gallink]
■GAC Aion LX Plus/1充電あたりの航続距離はなんと1008km!
1充電あたりの航続距離1008kmという広州汽車傘下の広汽新能源汽車(GAC)が開発したGAC Aion LXプラス。1充電あたりの航続距離が1000kmを超えるのは世界初だという
綺麗によくまとまっているデザインだ。ボディサイズは全長4650×全幅1920×全高1720mm、ホイールベースは2830mm
広州汽車傘下のブランド、広汽新能源汽車(GAC)が広州モーターショーで発表したAion LXプラスは2019年10月に発売した同社第4弾のEV、LXの改良版だ。
このGACは2017年に設立されたEV専門ブランドで2018年12月には年間20万台の生産能力を持つEV専門工場を設立するなど積極的な投資を進めている。
驚くべきは1充電あたり1008kmという航続距離。1000kmを超えるEVは量産車では世界初だという。
ただし、この1008kmという航続距離は、欧州のWLTPやアメリカのEPAと異なる中国のCLTCに沿ったものだからWLTPに換算すると2割ほど低い数値といわれている。
Aion LXプラスには、725hpを供給するデュアルモーターが装備され、0→100km/hは2.9秒。
なんとLXプラスに搭載されている電気モーターは、日本電産製のE-Axle。このE-Axle シリーズはモーター、インバータ、ギアを一体化し、ユニットシステムとすることで小型・軽量化を実現したことが大きな特徴。AION4車種のみならず、広汽トヨタや吉利汽車、広汽ホンダなどにも供給されている。
最上位モデルは144.4kWhという大容量バッテリーを搭載。GAC独自の弾性シート技術でこれまでのバッテリーよりも20%コンパクトで14%軽いという。0→100km/h加速は2秒台。ちなみにテスラ最速といわれる3モーターを搭載するテスラモデルSブレイドは0→96km/hは1.99秒、1回の充電あたりの航続距離は627km、プレイド+は837km
ちなみに日本電産は世界NO.1の総合モーターメーカーで、2030 年までに EV 用駆動モーター市場で世界シェア 40~45%の獲得を目標としているという。日本メーカーここにあり、と少し誇らしく感じる。
最上位モデルには世界最大級の144.4kWhの大容量バッテリーを搭載。このバッテリーは負極材にこれまでのグラファイトに変えて、エネルギー密度の高いシリコンベースの負極材を採用することで、テスラが採用しているLGエナジーの168Wh/kgを超える205Wh/kgというエネルギー密度を達成。これまでのバッテリーよりも20%コンパクトで14%も軽いという。
■小鵬汽車 Xpeng G9/チャイニーズテスラと呼ばれるXpengの最新EV・SUV
発表されたXpeng G9は中国市場には2022年第三四半期、世界市場には2023年に発売予定。世界戦略車だけにユーロNCAPや欧州のWVTAEU(車両認証基準)の基準を満たしてのデビューとなる
洗練されているXpeng G9のエクステリアデザイン
チャイニーズテスラといわれている小鵬汽車(Xpeng=シャオペン)は、テスラモデルYやNio ES6、Li Xiang Oneといった中国のBEV・EV対抗のBEV・SUV、Xpeng G9を公開した。
XpengはGACグループの元上級幹部2人によって2014年に設立。Xpengは中国国内だけでなく、EVの普及率で世界をリードしているノルウェーに主力のP7セダンやSUVのG3を2021年8月から輸出を開始。
同社の創業者の一人、ヘンリー・シャ氏によれば、今回発表された同社の第四弾G9も世界戦略車として、世界中に輸出するそうだ。
G9には都市部での半自動運転を想定したXpeng初の半自動運転、オートパイロットシステムのXpilot4.0(チップはNVIDIA製)を搭載。
残念ながらG9のモーターの出力や航続距離、バッテリー容量は明らかにされていないが、これまで登場したモデルたちの実力を鑑みると、少なくとも316kW(430ps)/655Nm、0→100km/h=5秒未満、WLTP航続距離は500km(80kWhのリチウムイオンバッテリー)というスペックを上回ってくるだろう。
バッテリーはエントリーレベルのG3やP7と同様、車載電池メーカー世界最大手のCATLのリチウム電池を搭載していると思われる。
急速充電は800VをサポートするXPOWER3.0を使用し、最大480kW、670Aを超える急速充電ステーションを使用する場合には200km走行分の容量を5分以内で充電できるという。
世界戦略車として開発されているだけに、中国のC-NCAPはもちろん、欧州のユーロNCAPやWVTAEU(車両認証基準)に準じているという。
2021年9月に5つ星のユーロNCAP安全性評価を受けたNio ES8のように中国車も年々安全性が急速に向上しており、今後こうした中国製EVが衝突安全基準や認証基準を欧米の基準に合わせてくると、日本導入も可能だから、日本車メーカーの脅威になってくるのは間違いない。
このG9は2022年第三四半期に中国市場で発売され、2023年には世界に投入される。どのようなモーターを搭載してくるのか、1充電あたりの航続距離はどうなるのか見ものだ。
■長城汽車(GWM)の新型メカドラゴン/SUVメーカーが仕掛けた高級セダン
SUV専門メーカー、長城汽車が高級セダン市場に殴り込みをするべく発表した、その名も機甲龍(メカドラゴン)
やはり中国では4ドアセダンの大きいモデルが人気なのか
長城汽車(GWM)はSUVメーカーとして独壇場ともいえる強さを誇っているが、同社がピュアEVサルーンの第一弾として発表した記念すべきモデルがこのメカドラゴン(機甲龍)。車名を聞いて思わず吹いてしまったが、まるでメカゴジラを思わせるアルマジロの鎧のようなデザインが迫力満点。
バッテリー容量は115kWhの大型バッテリーを搭載することで中国のCLTPサイクルの航続距離は802kmと、1000kmには到達しないが、こんな巨大なボディで航続距離802kmとは拍手もの。充電も、わずか10分で航続距離の50%、401kmに達するという。
■BUICK新型GL8 BEV/まんまアルファード! ビュイックのBEVフラッグシップミニバン
広州モーターショーで公開されたビュイックの新型GL8、BEV
まるでアルファードのデザイン段階のコンセプトモデルのようだ
この凄まじい迫力を見よ! 市販されればレクサスLMを超えるかもしれない……
現行モデルのビュイックGL8。オラオラ顔ではなく洗練されたデザインなのだが……
どこかで見たことある! と言わなくてもわかるほど、これはアルファードのパクリといっていいアメリカの自動車メーカー、GMのビュイックブランドのミニバンだ。
これは中国専売モデル、ビュイックのフラッグシップミニバン、GR8のベースとしたBEV。現行モデルはアルファードに似てないが、アルファードの絶好調を受けてパクったのだろうか。まるで現行アルファードのデザインレンダリングのようだ。
2列4人乗りと、明らかにレクサスLM、アルファードを意識しており、中国富裕層をターゲットにした超高級ミニバンということだが、まだコンセプトモデルで市販化は決まっていない。
こちらはLクラスミニバン敵なしの状態が続いている現行アルファード
■Voyahドリーマー/アルファードとガチンコ勝負!? 2列4人乗り超高級ミニバン
フロントマスクはトヨタエスクァイア、Aピラー以降はエルグランドというイメージ
広州モーターショーで公開された新型ドリーマー。日本で発売すれば売れそうだ
日産自動車との中国合弁企業となる東風汽車が自社高級ブランドのVoyah(ヴォヤー)の第二弾として、高級ミニバン、新型ドリーマーを発表した。
フロントマスクのオラオラ顔はトヨタエスクァイアそっくりだが、全体的なフォルムは、どことなく日産エルグランドに似ている。
新型ドリーマーのボディサイズは全長5315×全幅1980×全高1810mmと、全長5300×全幅1970×全高1990mm(日本仕様)のグランエース級だが、全高は日本のエルグランドより5mm低い1810mm。
パワートレインは、デュアルモーターを搭載するBEVで、超巨大な88kWh容量のバッテリーを搭載して、システム最高出力は693ps、最大トルクは1040Nmというまさに怪物。インテリアは2列4人乗りで、ロールスロイスのミニバンかと思わせる豪華さだ。
この新型ドリーマー、ほんとに発売されるのか? となかば疑っていたのだが、なんと2022年初頭には発売されるそうだからこれまたビックリ。
今後、中国ではアルファード、クラウンヴェルファイア、レクサスLM、シエナ、オデッセイに続けとばかりに、超高級セダンから超級ミニバンへの移行がどんどん進んでいきそうだ。
2021年4月に行われた上海モーターショーで公開された一汽トヨタのクラウンヴェルファイア
中国で販売されるLMは、2.5LハイブリッドのLM300hで4人乗りと7人乗りをラインナップし、7人乗りは116万6000元、4人乗りは146万6000元ということで、1元=16円で換算すると、それぞれ日本円で1865万6000円、2345万6000円
こちら2022年冬にデビュー予定の新型アルファードの予想CGイラスト(ベストカーが製作したもの)
■ORAバレエキャット/VWビートルのぱくり車だがその完成度に驚く!
市販型がついに発表されたORAバレエキャット。ホームページを見るとバレエダンサーが出てくる
こちらは2019年7月に生産終了となったVWザ・ビートル
まだ、ぱくり車があったんだと思わず笑ってしまったのがこのORAバレエキャット。このバレエキャットは長城汽車のEVブランド、ORAが製作したもの。
2021年4月の上海モーターショーでVWビートルのパクリ車、パンクキャット(ヘッドライトはビートル6V仕様の丸いタイプ)を発表、続く8月の中国・成都モーターショーではバレエキャットのコンセプトモデルを初披露。そして、今回の広州モーターショーでバレエキャットの市販型を正式に発表したのだ。
このバレエキャットは誰が見てもVWビートルのぱくり車だが、よーく見るとなんと4ドア。こんなぱくり車が市販されていいのかと疑いたくなるが、さすがにVWは正式に抗議したそう。しかし、長城汽車は欧州連合知的財産庁にちゃんとパテント登録して認可されたとか……。
少しずつデザインを変えているのがポイントか。4ドアというところがなんともニクイ
VWザ・ビートル。巨大な横型のテールランプが特徴
ORAはホンダeのぱくり車、ブラックキャットやポルシェ911やパナメーラに似たライトニングキャットも発表するなど、ぱくり車の常習犯である。
バレエキャットの2トーンカラーをまとったボディは女性を意識しているといい、インテリアを含め、意外や意外、完成度が非常に高い。
ボディサイズは全長4401×全幅1867×全高1633mm、ホイールベースは2750mm。ちなみに2019年7月に生産終了した本家VWザ・ビートルは全長4285×全幅1815×全高1495mm、ホイールベース2535mmとバレエキャットのほうがひと回り大きい。
パワートレインはフロントに電気モーターが装着されたEVで、航続距離は400kmと500kmの2種類のバッテリーが用意されている。
VWザ・ビートルが生産終了となった今、中国でヒットするかも!?
バレエキャットのコクピット。写真を見る限り完成度が高そう
ぱくり車のオンパレード!? これを見ると衝撃を受けるかも!? ORAのホームページはこちら!
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