もくじ
前編
ー アウトバーンでの超高速バトル
ー 270km/h以上では差が明確に
ー なにからなにまで新しいヴァンテージ
ー 依然として驚異的なR8の走り
ー アプローチの違い
後編
ー アストンの苦手はアウディの得意
ー 超高速域での安心感
ー 感性へ訴えかけるヴァンテージ
ー 真面目な道具と戦える芸術品
ー 走るために選ぶならアウディ
アウトバーンでの超高速バトル
ここはケルンの東。われわれは手始めに、ほどよくカーブがあってうれしいほどガラガラに空いたアウトバーンでこの2台を走らせてみることにした。もうひとりのテスターであるジェイミー・コースターフィンは、私の前をアウディで快走している。彼がそちらを選んだのはR8のGPSナビのほうがより精度に優れていたからだが、個人的にはアストンのほうが気に入っていた。
アウトバーンでのハイスピードランは楽しかったが、4.7ℓとなった新型アストン マーティンV8ヴァンテージとアウディR8のどちらが優れているかを判定するための手段としては、残念ながらほとんど役に立たなかった。しかし、この2台がどういう関係にあるかを説明する一例としてならば、少しは役に立つかもしれない。
アウトバーンのなかでも曲率が緩やかなこのあたりは、150km/hほどで走っているぶんにはほとんどストレート感覚だ。けれどこれが250km/hともなると様相は一変する。すべてが本格的なコーナーだ。アストンのV8が咆哮を上げると同時にアウディも轟音で応える。どうやらジェイミーは引き離しにかかっているようだ。
270km/h以上では差が明確に
両者のパワー差はわずか6psしかなく、さらにこの速度域では重量差もそれほど決定的な差とはならない。だからアウディについていこうとするならツーリング気分を捨て、本気で走る必要がある。だが、先を行くアウディが完全に安定したコーナリングを見せている一方で、こちらは精一杯なのが自分でもわかった。それはアストンにグリップが欠けていたからではなく、自分がステアリングを通して確信を持てなかったからだ。
それでも食らいついていったのだが、なんとかなったのは道路が完全にストレートになるまでだった。地平線の彼方へ向かって全力疾走を開始してすぐに、アウディをとらえるのは不可能だと思い知った。ものすごい勢いで視界から消えていくというわけではないが、270~290km/hの速度域では、アウディは少しずつだが容赦なく差を広げていく。アストンに打つ手はなかった。私は速度を200km/hまで落とし、敗北を認めた。
というわけで、まず知っておくべきは、新しいV8を獲得してもなおこの新型アストン マーティンは、もはや最新というわけでもないアウディと対等には勝負できないという事実だ。少なくともアウトバーンではそうだった。
なにからなにまで新しいヴァンテージ
さて、この話はひとまずここでおしまいだ。なぜならこの一例をもって読者諸氏が“変わり映えしない英国車が驚異のドイツ車と手合わせして完敗した話”と先読みしてしまいかねないからで、それではこの新型アストンと、それを製造した開発陣の情熱の両方を見くびることになってしまう。
前のモデルと区別を付ける手がかりになるのは19インチになった新しいリムくらいなのは確かだが、しかしこのクルマのルックスを変える必要性を感じる人がいるだろうか? 3年前にV8ヴァンテージがアストン マーティンの新たな希望の星として登場したときからずっと、ストレートでの加速力とコーナリングのバランスこそこのクルマに求められてきたものだったはずだ。
そして、この3年間は無駄にされなかった。無変更のままキャリーオーバーされた主要な部品ひとつとしてない。エンジンでいえばブロックやヘッド、ピストン、コンロッド、ライナー、バルブ、カムなど、すべてが変更または改良されている。ボアとストロークはともに拡大されたが、それは単純な大排気量化ではない。すでにオリジナルの開発者であるジャガーが意図していた排気量に達していたものをさらに拡げる、困難な作業であったのだ。
その結果、4735ccの排気量から41psアップの426psを発生し、しかもリッターあたり90psという恐るべき排気量比出力は変わっていない。トルクも以前の41.8kg-m/5000rpmから47.9kg-m/5750rpmへと向上している。なお、発生回転数の上昇はまったく気にする必要はない。確かにこの4.7ℓエンジンのトルク曲線は4.3ℓのものに比べてフラットではないが、それは単に2750rpmあたりでそれまでほぼ平行だった曲線が分かれていくだけだ。そこから6750rpmあたりまでは、新型エンジンのトルクは排気量差から想像されるよりも強烈に力強く感じられる。
コーナーでは、セッティングが改められたスプリングとビルシュタイン製のダンパーを満喫できる。もし今回の試乗車のようにオプションのスポーツパック(42万3150円)を装着したヴァンテージであれば、サスペンションは昨年に発売された400psの特別仕様車“N400”よりもさらによくなる(N400には19インチ5本スポークの高品質なホイールが付属しており、それによってバネ下重量が格段に軽くなっていた)。
依然として驚異的なR8の走り
このように、ヴァンテージを単独で見れば、その堂々たるスペックからしても思わず興奮せずにはいられない。けれど、隣に駐車しているのがアウディR8となると、その存在感もちょっと希薄になってしまうと言わざるを得ない。
昨年の冬、われわれはそれぞれがその年でいちばん気に入ったクルマに乗り、ウェールズまで2日間、ドライブ三昧を楽しんできた。R8ももちろん含まれていたのだが、そのときのクルマのなかからベストを決める段になって、R8への投票は全員一致にわずかに届かなかった。
理由はおわかりだろう。ほとんどのクルマは、それがどんなに速くても、なじむのに比例して印象が薄らいでくる。それは大抵の場合、虚飾のメッキがはがれたからではなく、なじむにしたがって必然的に目新しさという価値が失われていくからだ。それとともに、クルマというものは、その魅力の大半を失ってしまうものなのである。
しかし実際には、R8は依然として驚異的なクルマだ。私はすでにこのクルマを5~6回はドライブしているが、乗るたびにそれまで気がつかなかった新たな実力に驚かされる。それは、正直に言うなら、アウディのクルマでこんな体験ができるとは想像もしていなかった種類のものだ。なかでももっとも注目に値するのは、アルミを基本としたボディ構成や2シーターのキャビン、あるいはV8エンジンといったアストンとの共通点にではなく、逆に異なっている部分にある。
アプローチの違い
ヴァンテージは歴代すべてのアストンと同様に、エンジンをドライバーの前に置いて後輪を駆動している。一方のアウディは、その種の伝統にはまったく縛られていない。そうした束縛がアウディには存在しないがゆえに、同社のエンジニアは単純に自分たちが最適だと考える機能を選択できるわけで、そのためR8では4.2ℓのエンジンはドライバーズシートの後方に置かれ、出力は4本のタイヤすべてに伝達されている。
このふたつのアプローチのあいだにある違いは、乗り始めてすぐに明確になる。重いエンジンをノーズに収めていないアウディがすべてのコーナーでステアリングに優れていると知るにためには、別に限界まで攻め込む必要はない。
アストンでは、エンジンの質量に加え、トランスアクスルで搭載されたトランスミッションの重くて正確さに欠けるシフトフィールが、さらに快適な運転を損なう要因になっている。アストン マーティンはシフトフィールの品質向上にかなりの努力を払ったようだが、MTではもしかすると世界最高のシフト品質を備えているかもしれないクルマが相手では致し方ない。
後編へつづく
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