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ホンダeは○だらけだった! キュートなコンパクトEVの魅力と開発秘話とは

掲載 更新 7
ホンダeは○だらけだった! キュートなコンパクトEVの魅力と開発秘話とは

まもなく販売開始されるホンダeがメディア向けに披露された。実際に見て、触った今尾直樹がリポートする。

原点回帰が大きな○

トレンドというより、もう定番「Porsche Macan」──ミドルサイズSUVクーペが最強説2

ホンダeの○は、まずもって見た目である。見ているだけだからして、これは最大の○だ。

外観は現行「N-ONE」にちょっと似ている。ホンダ4輪の原点である「N360」、そのあとの初代「シビック」に似ている、ということである。それらをベースにフラッシュ・サーフェイス化を徹底し、そこにホンダのロボット「アシモ」のデザインをふりかけた感じ。丸型ヘッドランプを採用して、全体にラブリーな印象に仕上げたところが○だ。小型車はカワイイに限る。

インテリアもイイ。○である。リビングをイメージしたそれは、水平基調のウッド・テーブルを模したダッシュボード上に大型スクリーンが並んでいる。12.3インチのスクリーンを2画面並べて、ここに写真を映し出して壁紙にすることもできる。ダッシュ全体が低くて、たいへん広々と感じる。まさにモダン・リビングである。

同時に、初代シビックがモチーフだ、と、すぐにわかる。2本スポークのステアリング・ホイールも、初代シビックを知っているひとには感涙だ。

昔のホンダ車を知らないひとや若者には、新鮮で新しいと感じるんです。レトロを狙ったわけではなくて、よき普遍的なデザインは似てくる、という意味のことを開発責任者の一瀬智史(いちのせ・ともふみ)氏は語った。

スマートフォンにダウンロードしたアプリを使うと、Bluetoothを介してドアの施錠/開錠や、フロントの充電/給電ポートのフードを開けることができる。

だけど、クルマ本体の電池がなくなったら、どうするんだ?  こんなになにもかも電気仕掛けにしたら、ドアも開かなくなるではないか。と思ったけれど、ホンダeはEVだから、毎日家に帰ったら充電ケーブルと接続されているだろう。バッテリーがあがることはまずないのではあるまいか。愚問でした。ぜひにおよばず。×である。

「オッケー、ホンダ!」と呼びかけると、ホンダパーソナルアシスタントが音声認識で答えてくれる。すでに「OK、Google」とか「ハーイ、メルセデス」とかでおなじみのシステムだけれど、埴輪の顔みたいなイラストが出てくるところがクールかどうかは別にして日本らしい。新しいコミュニケーションに○である。

ホンダe最大の○は、過去と未来をつなぐ、というコンセプトなのだと筆者は思う。話が抽象的にすぎるというなら、ヨーロッパの小型車に範をとった、ホンダの原点回帰が大きな○なのだ。N360もシビックも、ミニをはじめとするヨーロッパの小型車をお手本にした。初代シビックがシャレていたのは、ローバーのダッシュボードを参考にしたからだった。

ホンダらしさとはなんぞや?

これまでアメリカ市場を中心にしてきたホンダがヨーロッパに回帰したのは、ホンダeの開発がEUのCAFE(Corporate Average Fuel Economy)対策をきっかけに始まったからだろう。

EUのCAFEは2020年から、それまでの1台平均のCO2排出量が130gから95gに削減された。ガソリン車の燃費に換算すると、100km当たり4.9リッターを4.1リッターに、日本風にいえば、リッター20.4kmを24.4kmに引き上げないと、罰金が課される。

ただし、イノベーションを促すため、という名目で、EV(電気自動車)に代表される低排出ガスのクルマは、2020年は2台、2021年は1.67台、2022年は1.33台とカウントされる。最近、ホンダをはじめとする各社がEVを続々と投入しているのは、このCAFEの特例を用いて新基準をクリアするためなのである。

で、開発を任された一瀬さんはまず、現状を知るべく、ヨーロッパに飛んだ。EV自体はまだ少なく、都市にはあいかわらず、オシャレな小型車がひしめいていた。そして、街にホンダ車はなかった。

「ホンダのプレゼンスをあげたい」

一瀬は思った。と、プロジェクトX風。

スタッフを交えて、「ホンダらしさとはなんぞや?」と根本的なところに立ち返った。一瀬はあるとき、静岡県浜松市の山奥にある「本田宗一郎ものづくり伝承館」を訪れた。創業者・本田宗一郎が掲げたことばがそこにあった。

「当社は絶対に他を模倣しない。どんなに苦しくても自分達の手で 日本一、いや世界一を」

♪風の中のすばる~。

一瀬は、2030年の未来を見据えた、先進性のある、街中での使用を前提としたEVをやる、と、決めた。そして、2030年の世界は、いろんなものが有機的につながっている、と考えた。自分の家のリビングから仕事場まで、シームレスに。その“シームレスライフ”をつくる、街中でいちばんいいクルマにしよう。

♪風の中のすばる~。

他社のEVは、EVでガソリン・エンジンに匹敵する能力をなんとか得ようと、大きなバッテリーを積むことになって、取りまわしのよくないものになっている。その呪縛から1回逃れて、都市部で使いやすい、未来の技術を詰め込んだ、スマートフォンのようなものを目指す。

かくして全長4mを切る、ヨーロッパでいうBセグメント、ホンダ車ではフィットぐらいのサイズで、一瀬氏はこのことばは使わなかったけれど、かつてのホンダのMM思想、メカ・ミニマム、マン・マキシマムを思わせるEVを生み出した。

リアエンジン・リアドライブの採用理由

当初、駆動方式はホンダが得意としてきたFWD(前輪駆動)だった。ところが、FWDの場合、どうしてもオーバーハングが長くなる。ボディの担当者が反乱を起こした。リア・アクスルの上にモーターを配置する、リア・モーター、リア駆動、RRにしようと言い出した。一瀬は提案を受け入れた。

♪~。もういい加減に、しておきます。

モーターは、コスト削減もあってアコードe:HEVの駆動モーターを流用。アコードのそれは、最高出力184ps /5000~6000rpm、最大トルク315NmNm/0~2000rpm。すでに発売されているUK仕様のホンダeは、トルクはおなじながら、航続距離を確保するためだろう、最高出力は154psに抑えられている。

それでも、315Nmという3.0リッターV6並みの大トルク。しかも、後輪駆動。「バビュンと走る」。一瀬氏はそう表現した。ホイールには16インチと17インチの設定があり、会場に置いてあった17インチのそれは前205/45、後ろ225/45の前後異サイズで、ZR17規格のミシュラン・パイロット・スポーツという高性能タイヤを履いていた。

まるでミドシップ、あるいはRRのスポーツカーである。ただし、この場合のZRには240km/h以上の走行を受け付けるという速度域保証にではなくて、パイロット・スポーツというハイ・パフォーマンス・タイヤであることに意味がある。

前後・左右の重量配分は50:50。ホイールベースのフロア下にリチウム・イオン電池を敷き詰めている。それゆえ低重心で、サスペンションは4輪ストラットの独立式なので、ホンダ車にあったリアが跳ねることもない。と一瀬氏は語っている。

モーターの制御にはノーマルとスポーツの2つのモードがある。アクセル・ペダルだけで加速から停止までをマネージするシングル・ペダル・コントロールのオン/オフや、ブレーキの減速度をステアリングのパドルで調節出来る。

RRの採用によって前輪の切れ角を大きくとることができ、4.3mという小さな回転半径を実現してもいる。これはホンダの軽自動車の4.6mより小まわりが効くということだ。

割り切った航続距離

航続距離は、WLTCモードで283km、JC08モードで308km。実際はその半分であると考えると、はっきり言って短い。

「走行距離については、いろいろ言われる。私たちは十分だと思っている。パナソニックと共同開発した新型バッテリーは30分の急速充電で、202km走ることができる」と、一瀬氏。

ちなみに日産リーフの62kWhバッテリー搭載車はWLTCモードで458km、40kWhバッテリー搭載車は、同322kmである。この差はどこから生まれているのか。バッテリーの性能の差ですか? と、筆者は一瀬氏に質問したところ、そうではなくて、「ホンダeはシティ・カーとして割り切ったから」。

普段は長距離走らない。だとすると、使わない重い電池をいっぱい背負ってウロウロしていることになる。リーフのバッテリー容量は62kWh、ホンダeは35.5kWh。2台弱分の電池を1台に積むより、2台つくったほうがいい、と、ホンダは考えた。なるほど、これは合理的で、そもそもホンダeはCAFE対策としてスタートしたわけだし、電池は高価だから、コストを抑えることにもなる。

それと、バッテリー容量を増やすと、急速充電に時間がかかる。たとえば、リーフが急速充電で80%充電するのに要する時間は62kWh版が約60分、40kWh版が約40 分。ホンダeは約30分である。

10分の差をどう考えるか。早いから○というわけではない。短いけど回数は多いのと、長いけど回数は少ない。これは好みと用途の問題である。

しかして、もっとも肝心なその味を知らずして結論は出せない。この秋に発売になるホンダe。○か×か、乗ってから決めたいですね。

文・今尾直樹 写真・角田修一

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みんなのコメント

7件
  • ホンダらしいクルマだよね。

    早く街で見たいね!
  • 私は今のこの時代にEVはあまり受け入れられない
    と言うかどの国も火力発電が主力電源で有るのにEVの様な外部電源に頼る車は環境に良いとは言えない
    正直言ってユーザーの自己満のの何者でも無い…
    っと言いたいが このホンダe 良いよね
    欲しいかも (多分買えないけど)
    どうせホンダの事だから本気で作らないなっと思ってたら どうして どうして
    結構気合が入ってるなこりゃ
    後続距離は割りきって283km は実にホンダらしい
    こりゃリーフより付加価値高いよな
    お金に余裕がある人は買うと思うけどなるべく太陽光とセットで運用して欲しいね
    で有れば正にエコでキュートなスポーツになるね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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