ホンダのベストセラー原付二種スクーター「PCX」がフルモデルチェンジを果たした。欧州で11月10日に発表され、2021年に日本でも発売される予定だ。新型はトラクションコントロールの装備など充実の進化を遂げている。新たなPCXが目指す目的とはいったい? 月刊『オートバイ』のメインテスター太田安治氏が考察します!
新型PCXは排ガス規制の変わり目でクラス最高峰モデルとしての価値を高めた
原付二種に区分される小型スクーターの開発は、「近所への足代わり」が大きな前提条件だ。現実的な走行距離は最寄りの駅や商店までなら数キロ、通勤通学でも片道10km以下がほとんどだろう。乗車時間が短かければ、取り回しやすさや低価格という要素が優先されて快適さや高級感は二の次。スクーターとはそういうものだと思っていただけに、2010年にPCXが登場したときは驚いた。
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ゆったりしたライディングポジションにスムーズそのものの加速特性、所有感を満たしてくれる装備で、クラスを越えた上質な仕上がり。「おお、ゴージャス!」などと口走ってしまったほど(笑)。
とはいえ価格もゴージャスだったので売れ行きは限定的と思われたが、250ccスクーターに比べれば半値に近く、高速道路に乗る必要がない近距離移動中心のユーザーにお買い得感を与え、今に至るまでセールスは好調に推移している。
2014年、2018年とモデルチェンジを行って完成度を高めたにも関わらず2年でモデルチェンジとなったのは、排ガス規制EURO5対応という大きな壁を越えるためだ。新開発エンジンは現行モデルに対して約0.5馬力アップで、ピークパワーの差は体感できないだろう。
しかしわざわざホンダがエンジンを新設計したのだから、発進加速のフィーリングは向上していると見る。燃料噴射や点火タイミングといった電子制御技術は日進月歩。そしてホンダはAT変速のセッティングが実に巧みだ。
やや意外だったのはトラクションコントロールの装備。このパワー、キャラクターなら必須ではないだろうが、AT変速モデルはゼロ発進からスロットル全開で加速するケースが多いだけに、濡れた路面、道路表示ペイント、砂の浮いた部分で威力を発揮するはず。ABSを装備していれば、トラコン機能を追加しても大幅なコストアップにならないことも採用した理由の一つと推察する。
納得しやすい改良がリアタイヤの小径化。これまでの14インチから13インチに変更することでタイヤ外径が小さくなり、車体との隙間が広がる。そのスペースを使ってシート下のラゲッジ容積を大きくできたというわけだ。
小型スクーターの需要はヨーロッパから日本、そして現在はアジア全体へと広がり、ユーザー層も多様化している。「同じクラスの中で一番高級なやつ」を求めるユーザーに訴求するモデルとして、PCXの存在感がさらに高まったことは間違いない。
文:太田安治
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みんなのコメント
マンホールや横断歩道など峠道なんかよりよっぽど危険な個所があるし人の飛び出しなどの遭遇も多い。
多少高くなるのは安全を買うんだと思えば安いもんだ