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マツダ3 SKYACTIV Gen2画期的進化の本質とは何か?

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マツダ3 SKYACTIV Gen2画期的進化の本質とは何か?

アクセラの後継モデル マツダ3の本質は何か。その片鱗が見えた試乗会が3月上旬、北海道の雪上テストコースで体験できた。このマツダ3から第2世代にシフトすることになるスカイアクティブは、注目度が高いスカイアクティブXエンジンがついに搭載されるのか?という話題が多い。だが、もっと本質的なところで大きな進化を遂げていることがわかったのだ。

ハードとソフトの同時開発

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SKYACTIV Generation2に位置付けられるマツダ3は新世代車両構造技術と新世代車両運動制御がポイントになる。マツダでは「スカイアクティブ ヴィークルアーキテクチャー」と「スカイアクティブ ヴィークルダイナミクス」という言い方をしている。つまりは車体構造と制御技術であり、人間中心の開発を掲げるマツダとしては車体構造を筋・骨格系、制御を神経系という例えで説明していた。

オートプルーブが注目したのは、その開発が同時に行なわれている、というポイントだ。一般的に車両開発は目標性能に対して車体構造技術があり、その車体構造が持つポテンシャルを発揮させるために、車両制御技術を駆使するというのがこれまでの車両開発だ。

しかしSKYACTIV Gen2は、サスペンションと操舵と制動・駆動を組み合わせたトータルでバランスするようにプラットフォーム開発をしているということが画期的な進化だと注目する。話はどんどん複雑になるが、結果的にマツダ3のリヤサスペンションがトーションビームであることの理由がそこにある、というポイントで読み解いていこう。

一般的にはFFのリヤサスペンションがマルチリンクだと高級だという定説があり、現行アクセラではそのマルチリンク構造をしている。だが次期マツダ3では、いわゆる廉価版のトーションビームになっているのだ。フォルクスワーゲンゴルフもトレンドラインなどエントリーグレードはトーションビームで、上級なハイラインはマルチリンクを採用していることからも使い分けがわかる。だがマツダ3がトーションビームを採用している狙いは単なるコストダウンが目的ではなく、Gen2の本質からトーションビームを採用しているということなのだ。

ちなみに、マツダ3に使われるトーションビームも今回オリジナルに開発されたもので、リヤサスペンションは、従来のE型マルチリンクから新構造のトーションビームを採用している。特徴としてはリヤの横剛性を75%向上させることで、横力のトー変化を減らすことができたため、制御しやすくなったということだ。

深化するi-ACTIV AWD

マツダはエンジンによる荷重コントール技術G-ベクタリクングコントロールがあるが、AWD技術を組み合わせた技術も進化させている。

おさらいするが、ドライバーの安心感はピッチ角の変化による影響が大きいことがわかっており、そのコントロールとして、Gの旋回姿勢をつくっているのがGVCだ。ターンインで、ハンドルを切り足している時だけトルクを抑えてフロント荷重にする。接地荷重があがったこととピッチ角があることで安心感につながっているというのがGVCだ。

そして2018年夏に発表したGVC+という技術は、定常旋回からターンアウトする時、つまり、切り戻しの時に転舵抵抗が減ってピッチが一気に後ろ下がりになる時に、フロントの外輪にわずかにブレーキをかける。そうすることで、サスのアンチダイブ効果を活用して逆方向のピッチモーメントを与えて急激なピッチ変化を抑制する。同時に、ヨー方向にも復元モーメントを与え、直進状態に戻ることを促進するというのがGVC+だ。

体感的にはノーズが入りやすくターンインするが、大きな横Gを感じることなく旋回し、出口では安心してアクセルが踏めるという、当たり前の動きになる。そのためGVCに関しては感じられない人も多いが、そのメリットは運転が楽になるとか、長時間ドライブで疲れにくいといったことで実感できる。

さて、AWDの制御では、その旋回時を例に、GVC、GVC+でピッチコントロールしている中で、前後の駆動輪にかかるトルク配分もコントロールすることで、より接地荷重があがり、安定したコーナリングになる制御を搭載しているのだ。

ジャッキアップ効果

その理屈は、マツダのAWDはFFベースの電子制御AWDなので、前後のトルク配分を数ミリ秒単位でコントロールできるわけだが、ターンインでGVC制御によりフロント荷重になり旋回が始まる。この時ピッチはノーズダウンの方向で働く。定常旋回になると、AWD制御でリヤにトルクを流す。するとフロントの駆動力は減る。つまり、減速するとサスのアンチダイブ特性によってフロントが持ち上がる効果が出る。一方でリヤに駆動がかかると同じようにアンチスカット特性によってリヤも持ち上がる力が働く。これをジャッキアップ効果といい、前後で同時に発生することでピッチモーメントが打ち消しあってバランスするため、安定した姿勢が維持できることになる。これが深化のポイントだ。

この定常旋回中、路面のアンジュレーションの影響を受けクルマはピッチングするが、上記の効果によってピッチ剛性があがるため、車両はまるでピッチングしていないかのように安定する。そしてターンアウトするときにはAWDはフロント駆動を強めるが、GVC+によって後ろに出るピッチを抑制しながら脱出することになる。

ポイントはココ 新アクティブサスペンション

複雑な制御の話ではあるが、サスペンションのジオメトリーと駆動力を合わせた設計としており、制動力と駆動力を活用したバネ上の姿勢制御ということができる。これまではタイヤの摩擦円の中で考え制御してきたが、バネ上を制御する発想はまさに、人間中心の開発と言える。それは人が感じる「乗り心地」を大切にしているということで、つまり、新しい考え方のアクティブサスペンションというわけだ。

実際に雪上の低ミュー路でスラロームや8の字旋回を試すと、ターンインでは特に変化はなく、従来のマツダらしい回頭性でターンインが始まり、定常旋回になるとグッと接地感が高まる。そしてステアを戻しながらアクセルを開けていくと、4輪の接地感がしっかりと伝わり安心してアクセルが踏み込めるという感触を味わうのだ。

このジャッキアップ効果による4輪接地荷重向上がi-ACTIV AWDのポイントにもなるのだが、定常旋回中にリヤへトルクを流した時に、リヤのサスペンションのジオメトリー変化が小さくないとリヤへ流すトルクコントロールが複雑になってしまう。言い換えれば、リヤのジャッキアップ効果となるピボットが動けば動くほど制御ロジックが複雑怪奇になるわけで、そのため、勝手にトーインへと変化するマルチリンクのジオメトリーよりトーションビームの構造のほうがi-ACTIV AWDの効果を出しやすいということになるわけだ。

冒頭、マツダ3のリヤサスペンション構造で高価なシステム、廉価なシステムというポイントでの採用ではなく、本質的な要件でトーションビームを選択しているといった理由がここにあるわけだ。

このことは言い換えれば、マルチリンクはよくできたシステムではあるが、クルマ側が勝手に入力に対して安定方向の姿勢を作っているという言い方ができる。だが、はたしてドライバーが意図した姿勢制御なのかといえば、クルマに乗らされていると言ってもいいだろう。マツダの人間中心の開発とは、そこも踏まえドライバーがいつでもアクセル、ブレーキ、ハンドルで姿勢をコントロールできることを目指しているわけで、ドライバーの操作に忠実に反応するための制御ということなのだ。

それはたとえアンジュレーションであっても、ドライバーは安定した姿勢が欲しいわけで、それをクルマ側が勝手に姿勢制御するか、ドライバーの操作に委ねるのかの違いになる。しかし、ここで気になるのは、一般ドライバーのように、コーナーであってもアクセルを踏んだり緩めたりした場合、果たして安定した姿勢を維持できるのか?という疑問はある。マルチリンクのほうが有利ではないか?という疑問だ。このあたりは、次のテストの機会にお伝えしよう。

どういうシステム構成なのか

従来のAWDは駆動制御をする専用のコントローラーがあったが、Gen2ではエンジンコントロールユニットの中に入れたというのがキーになる。マツダのAWDはJTEKTのITCカップリングであるが、その制御はマツダ仕様というのが従来のi-ACTIV AWDだった。が、今回ECUの中でエンジンコントロールと同時に制御するため、完全にマツダオリジナルの制御になっている。

ECUをひとつにまとめることで、あるひとつの車両運動モデルをベースにGVCの減速度、GVC+のヨーモーメント、AWDの前後配分の計算式ができ、一つのユニットから指令をだすことができる。そのため、絶対に矛盾が起きないということや、一つのユニットからの指示なので周波数が同じであり、指示タイミングにズレが生じないというメリットがある。さらに、モジュール数を減らすことができハーネスなども減らせ軽量化、コスト削減などにもつながっている。

つまり、ECUでエンジントルクの指令と、同時にブレーキへの指令とAWDユニットへの指令が時間的な遅れがなく、数ミリ秒単位でコントロールしているところに大きな進化が見られるわけだ。

燃費もいい?

マツダは予てから2WDをも凌ぐ燃費の良さをAWDで実現するという目標を掲げ、リヤデフのベアリング化などを行なっている。今回の進化したAWD制御では滑りやすい路面では特に、タイヤのスリップを最小化し伝達効率を上げることで2WDを上回る実用燃費を目指している。

前述のように、4輪の接地荷重をコントロールすることで、滑りをなくし伝達効率の改善による実用燃費向上という狙いになるわけだ。また機械部品にも変更を行なっている。例えばプロペラシャフトの振動を抑えるためにPTO(パワーテイクオフ内)にラバー製ダンパーを挿入している。これによりトルク変化にともなう振動を抑えることができるという。従来、この振動を抑えるために無駄なトルクをかけて抑えていたというが、こうしたダンパーにより、無駄なトルクをなくすことで実用燃費向上になるという。

もちろん、ユニットの機械摩擦抵抗の低減やボールベアリングをさらに追加していること、そして低粘土オイルの採用、オイルの攪拌抵抗をさげるなどで数%程度改善できているという。

まとめ

SKYACTIV Gen2となるマツダ3は、車体構造というハード部品と制御ソフトを同時に開発。人間の意のままに動かすためには制御ソフトは必須であり、その制御で動かすためのプラットフォームづくりをしたというのが、マツダ3のポイントになるだろう。

その人間中心の車両づくりという点では、骨盤を立てて、人間が持つバランス保持能力を活かすことや、運転姿勢を正しくとることで、思った通りに動かすことができることなどの体験試乗もあったが、今回はポイントを開発に絞りお伝えしてみた。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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