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まさにリアル「教場」!? 警視庁伝説の白バイ隊員が振り返る懐かしき昭和 警察学校の日々

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まさにリアル「教場」!? 警視庁伝説の白バイ隊員が振り返る懐かしき昭和 警察学校の日々

 警視庁に在籍した33年間中、実に22年間もの日々を白バイに人生を捧げた元警察官の洋吾(ようご)氏。取り締まり件数において3年連続で警視庁トップに輝き、警視総監じきじきの表彰も受けた伝説の白バイ隊員だ。洋吾氏の警察時代の悲喜こもごも、厳しくも「とほほ」な日常を綴った著書『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』も上梓(小社刊)。

 そんな氏のエピソードの数々から、今回は「白バイ隊員エピソード0」ともいうべき警察学校の日々をお届けしてみたい。今年4月クールで放送され大きな話題を集めたフジテレビ系列ドラマ「教場 0」の主人公・風間公親(演:木村拓哉)も真っ青(!?)の、「とほほ」な日々をご紹介。

まさにリアル「教場」!? 警視庁伝説の白バイ隊員が振り返る懐かしき昭和 警察学校の日々

文/洋吾、写真/Adobestock(メイン写真=akiyoko@Adobestock)、ベストカー編集部

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■警察官の道へ……きっかけは1枚のポスター

 私が警察官を選んだ理由は、単純明快だ。白バイに乗りたい、ただそれだけだった。

 1977年(昭和52年)の春、三流大学の受験にことごとく失敗した私が、「これからどうすっぺっかなぁ……」なんて具合にのんびりしていたところ、街角で目にしたのが警察官採用試験のポスターだった。

こちらは今現在の募集ポスター(警視庁ホームーページより・2023年7月)

 そこにはカッコいい白バイ隊員と美しすぎる女警さん*(モデル起用)の写真が……。その瞬間、「これだ!」と思った。ビビッときたのは、女警さんに……ではない。白バイのほうだ。バイク好きの私にピッタリではないか! 即座に採用試験を受けることに決めたのだった。

 当時の警視庁は、今では考えられないぐらいの広き門だったのだ。年間を通じて毎月毎月、採用試験が予定されていたぐらい。人員確保にとても力を入れていたので、合格率はかなり高かった。他の道府県警は別として、警視庁はバカでも入れたと言っても過言ではなかった。そう、健康な日本人で、「私は○△□党が大好きです!」なんて言わない限りだ。

 受験生も長髪、ひげ面、ジーパン姿は珍しくなかったし、それが不思議と違和感がなかった。日本が元気いっぱいの時代で、今じゃ考えられないことだけど、元祖3Kとも言える警察官の仕事は、超不人気だったのだ。当然、私も合格! 受かって当たり前、もしも不合格だったら、人間失格ぐらいに思っていたほどだった。

 さて、採用試験合格後は、1年間の警察学校生活が待っている。白バイに乗るための、最初の試練である。当時の警察学校といえば、次から次へと新入りが入校してきて、かなりの学生飽和状態だった。

 警察学校の同期生は1クラスで、30人くらいだった。年齢層は、私のような高卒後すぐに受験した未成年者が最も多く、中には受験会場で見かけた顔もいた。その他は大学中退や短大卒や有職者など……、すでに二十歳を過ぎたお兄ちゃんたちで、最も年上は26歳だった。

 同期生の中で白バイに憧れて警視庁に入ったのは、私の他に1名だった。また白バイではなくフェアレディZの交パに憧れてというのが1名いた。あと剣道の先生志望が2名、そのほかの多くは刑事に憧れて……というのを憶えている。昭和時代、警察の中で人気の希望係と言えば、刑事か白バイ乗りかというのが定番だった。

 なお、同期生で唯一、私と同じバイク好きで白バイの夢を抱き、よくバイクの話をしていたやつは卒業後、半年も経たないうちに女でドジって辞めていった。早かったなぁ。フェアレディZの交パに憧れていたやつは、他の分野へ進んだようだった。そのほか、課長クラス以上まで上り詰めた者もいた。有職者から警視庁入りした方だった。また交番一筋、最後にお情けの推薦部長で定年を迎えたやつもいた。警察人生もいろいろである。

 ところで、警視庁への就職が難しくなった昨今、若手警察官は、上を目指す(階級を上げること)のに熱心な者が多い。そんななかで、あえて白バイ乗りになりたいと交機(編集部註:交通機動隊)へ入ってくる若者たちを見ていると、昔よりも本当にバイクが好きで志望してきているように感じた。なかでも独身者は、プライベートでも大型バイクを楽しんでいる者が多く、休日には私も若い白バイ乗りたちとツーリングを楽しんだものだ。

やはり白バイはかっこいい。今では女性の白バイ隊員も現場で活躍している

■ああ、警察学校

 警察学校は、1年間の全寮制生活である。想像するだけで憂鬱な気分になったが、白バイ乗りになるため、いや、それ以前に警察官になるためにも、嫌でも絶対に通らなければならない道だった。

 1978年、入校当時の私は弱冠19歳。当時の警視庁警察学校は中野区(2001年からは調布市)にあり、下町の私の実家からは地下鉄で1時間以内の距離だったが、一歩、校内に入ればまったくの別世界に感じられた。

 警察学校はまず仮入校から始まる。入校初日から1週間は、体験入校みたいなもので、ここで新入りはふるいにかけられる。プライバシーのない集団生活になじめない何人かは、あっという間に辞めてしまう。辞める時は自己申告で、すぐに辞めさせてくれた。仮入校期間が過ぎ、入校式を終えると、正式に警察学校の学生になる。しかし、卒業までに何人も辞めていった。なかには脱走する者もいたし、寮内で盗みを働いて退学する者も珍しくはなかった。辞めていく者は、いつの間にかクラスメートの前からいなくなった。

 学校内では、入校した期ごとにクラス(教場という)分けされる。

 教場が一つだけしかない期もあれば、複数の教場になる期など、時期によってさまざまだった。一つの教場に学生は30名ぐらい。教官(警部補)と補佐役の助教(巡査部長)が、担任に当たる役割だ。また教場内では、学級委員長に当たる場長が一人、副委員長に当たる副場長が二人選ばれた。教官の名前が教場名となり、学校内では何かとこの教場同士の競争が繰り広げられる。

 そして生活の場となるのが、寮である。

 各部屋(居室という)は、8人部屋だった。板張りの床、カーテンの仕切りがついた二段ベッド。その脇に個人用の縦長の木製ロッカーがあった。ベッド上だけが各自のプライベート空間である。

 ちなみに寮内は禁酒だったけど、喫煙は居室外の指定場所ならOKだった。

 居室内は常に清掃し、特に床はピカピカが厳守であった。また寝具は決められたとおりのたたみ方で整理整頓せねばならず、自己流は許されなかった。どれか一つでも怠ったりしようものなら、教官様からのお叱りだ。学生たちが授業で出払っている間に見回りをし、ダメな箇所があろうものなら、居室中の寝具や下駄箱内をめちゃくちゃにしていく。しかも全員ぶんだ。警察学校名物の指導、いや、教官様方のストレス発散か。

 授業は、学科と術科(おもに教練、柔剣道、逮捕術、拳銃等)があった。術科のなかでも、特に教練は警察人生を通してずっと関わる基本動作を身につけるもので、徹底的に身体に覚え込ませるべく、年間を通じてかなりの時間が費やされていた。そのほか、たいていの警察官が大嫌いな柔剣道の訓練時間もかなりの量だった。日々筋肉痛だったという思い出ばかりだ。

 警察学校の日々は、早朝6時の「起床、起床、起床~」の一斉放送から始まる。すぐさま校庭に全学生が集合する。教場ごとに整列、点呼だ(雨天時は居室前で整列)。そして各担当箇所の清掃、朝食となる。その後の朝礼は、あったり、なかったりだった。

 授業は午前9時からスタート、昼休みをはさんで、午後は16時まで実施された。授業中は何かと大なり小なりテストがあった。

 午後の授業が終わっても、自由というわけではない。駆け足など、何かしらやらされた。夕食、入浴後ものんびりなんてしていられない。全員、教場で自習である。おもに月に1度ある漢字テストの予習や日記作成を行った。自習時間が終わると、最後にまた全学生が校庭に整列、点呼。そして23時消灯となる。

 なお、朝と夜の校庭での点呼は、休日も欠かさず行われる。とにかく行動はてきぱき、シャキッと5分前という毎日だった。

■中野ブロードウェイに出没!?、厳しい日々の楽しみ

 学生たちの楽しみといえば、休日の外出だった。

 1978年当時はまだ社会全体が週休2日制になる前だったので、土曜日は半ドン、完全な休みは日曜日と祭日だった。しかし、警察学校では、休日だからといって、自由に過ごせたり、外出できたりというわけではなかった。まず、土曜日の午後は、教官と一緒に運動タイムということが多かった。また祭日は教官の引率で、教場全員でレクリエーションということで、都内のあちこちへお出かけというスケジュールだった。一度だが、教官が幼い息子を連れてきて、教場全員で多摩動物園という日もあった。教官の家族サービスにつきあわされた格好だ。

 とはいえ、教官も日曜日は休みたいのか、学校には来ず、学生も安心して外出できた。実家が近い者は迷うことなく実家へ、行く当てのない地方出身者は、学校の近くにある商店街の中野ブロードウェイをぶらついた。たまに足を延ばして新宿や渋谷へ行くことも。みな、気分転換のため、少しでも学校の外の空気を吸いに出ていったものだ。

中野駅北口を出てすぐのところにある中野ブロードウェイ。「サブカルの聖地」としても知られる(竹澤宏@Adobe Astock)

 ちなみに外出時は背広とネクタイ(夏場はノーネクタイ可)着用が必須だった。たとえ学校の目の前にある店へ行く場合でもだ。当時、中野ブロードウェイで、刈上げ頭に背広姿でうろついている若者は、だいたい警察学校の学生だった。

 ところで、学生たちの最高の楽しみを奪う罰ゲームもあった。「外出禁止」である。学生が風邪をひいたり、授業中、特に術科授業中に体調不良を訴えたりしようものなら、週末は外出禁止令であった。「居室でゆっくりしていなさい」というはめになる。また、漢字テストで学校平均以下の点数の者もこれまたアウトとなる。私もやらかしたクチだ。

 警察学校生活では、厳しい授業ばかりではなく、楽しい行事もあった。月1の映画会、1日旅行(遠足)、富士山方面でのキャンプファイヤー、文化祭、帰省休暇、卒業旅行などなどだ。

 今思い返せば、二度とゴメンだと思う警察学校の生活も、古き良き思い出である。

●洋吾(ようご):元警視庁の警察官。交通機動隊や警察署の白バイ隊員を長く務める。運転技術はいまいち、ドジでオッチョコチョイだが、3 年連続で取り締まり件数トップの実績もあり。ブログ「脱公務員の部屋・元白バイ乗り親父の話」を公開中。2022年10月『白バイ隊員 交通取り締まり とほほ日記』を上梓。同書のイラストは同ブログのマスコットキャラクター「ニャンコ白バイ隊」。

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みんなのコメント

7件
  • ドラマだからでしょうけど、優しすぎます。
    あんなもんではない。
  • ちょっと思ったけど白バイ隊員は拳銃を所持してないのかな?
    白バイで追いかけながら、逃げる車両に発泡すれば捕まえられるのでは?
    悪は処刑だ!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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