ハミルトン、ウルフ夫妻に対するFIAの”受け入れがたい”対応を批判「僕たちの足を引っ張ろうとしている人がいる」

　ルイス・ハミルトン（メルセデス）は、メルセデスのトト・ウルフ代表とその妻であるスージー・ウルフに疑いをかけ、それを不誠実な形で終わらせたFIAの対応は受け入れられないと批判した。

　FIAは機密情報がFOM（F1マネジメント）のスタッフからあるチーム代表に渡ったという疑惑について、コンプライアンス部門が調査を実施していることを示す声明を12月5日に発表した。

　これは、ウルフ夫妻の疑惑について言及し、ライバルチームが苦情を申し立てたとする報道を受けたものであることは明らかだった。

　しかしその後、メルセデス以外の9チームが足並みを揃え、そうした苦情はなかったとする声明を発表。FIAは12月7日に2度目の声明を発表し、現在進行中の調査はないと説明した。

　FIAが実質的に”前言撤回”をした形だが、F1アカデミー（F1によって設立された女性によるシングルシーター選手権）のマネージングディレクターを務めるスージー・ウルフはFIAの対応に疑問を呈し、「今週起きたことは単純に十分なものではない」と指摘した。

　また、トト・ウルフはメルセデスが 「FIAと積極的に法的なやり取りをしている」ことを認めた。

　バクーで開催されたFIA表彰式での記者会見で、ハミルトンはウルフ夫妻を擁護し、FIAの対応を批判した。

「チャレンジングな1週間だった。このスポーツの統括団体（FIA）が、スージー・ウルフというこのスポーツで最も素晴らしい女性指導者の一人の誠実さに疑問を投げかけ、質問をするでもなく、何の証拠も示さず、そして最後に『申し訳ない』と言ったんだ」

「それは受け入れがたい。このスポーツには、素晴らしい仕事をしている素晴らしい人々がたくさんいる。この業界には、多様性と包括性を改善するための絶え間ない戦いがある」

「だけどFIAには、リーダーシップを発揮するような層の中に、僕たちが一歩前進しようとするたびに引き戻そうとしているような人物がいる。それを変えなければならない」

　ハミルトンはまた、モータースポーツ全体が多様性の問題に取り組まなければならないと強調した。

「これはグローバルなスポーツだと思う。僕たちには信じられないようなチャンスと、変革のリーダーとなる責任が当然ある」

「世界中の国々を旅している僕たちには、正しい方向に進むようにする責任があるんだ」

「だから、素晴らしい仕事をしている人たちがたくさんいることは認めたい。でも、僕たち全員が正しい方向に突き進むために、何らかの変化を起こす必要がある」

　またハミルトンは、10年間にわたってメルセデスのチーム代表を務めてきたトト・ウルフについても称賛した。

「トトは素晴らしいリーダーだ。彼とは長い付き合いだ。僕たちは同じ時期にチームに加わったんだ」

「チームとともに成長し、チームの構造の中で彼のビジョンが成長し、進歩するのを見るのは、僕たち2人にとって興味深い旅だった。彼は競争心のかけらも失っていない」

「彼がガレージの小さなデスクに座っているときでさえ、みんなテレビでそれを見ることができる。仕事と家庭のバランスを取ろうとしている彼は、本当に素晴らしい仕事をしていると思う」

「昨日もチームのみんなと話をしたんだ。彼はとても親しみやすいリーダーで、みんな彼の感情や思いやり、意欲に共感していると思う」

「彼はとても理解がある。何かに向かって努力していても、なかなか思い通りにいかないとき、チームの誰にとっても簡単ではなかったと思う。多くの教訓があったと思うし、彼が個人として、そして人間としても成長しているのを見るのは、本当に誇らしいことだ」