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MotoGP分析|2022開幕直前、チャンピオン争いの主役はどのメーカーに? 2回のテストから勢力図を読み解く

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MotoGP分析|2022開幕直前、チャンピオン争いの主役はどのメーカーに? 2回のテストから勢力図を読み解く

 2022年2月、ロードレース世界選手権の最高峰であるMotoGPクラスの参戦メーカー・ライダー達は、新シーズンに向けた活動を開始。マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキット、インドネシアのマンダリカ・インターナショナル・サーキットでそれぞれ2日間、3日間のテストを行なった。

 シーズン開幕前に行なわれるテストはこの2回のみ。各メーカーとライダーは2回のテストで得られたデータをもとに、開幕へ向けた準備を整えていくことになる。

■路面に不満続出のMotoGPインドネシアGP、3月の開催前までに再舗装実施が決定

 開幕戦は3月6日のカタールGP……まだもう少しだけ時間は残されている。そこで今回は、プレシーズンテストを経て得られた各種情報やデータから、2022年シーズンに向けてどのメーカー・ライダーが先頭に立っているのかを読み解いてみよう。

 なお2022年は、この2年間続いていた新型コロナ対策の一環としての開発規制が終了。使い回されていたエンジンも、新型を投入できるなど、各メーカーにとって開かれたシーズンとなっている。

■2022年型マシンの開発、ホンダが一歩リード?

【各メーカー別・ベストタイム一覧(マンダリカ)】

1. Honda ポル・エスパルガロ 1m31.060s
2. Yamaha ファビオ・クアルタラロ 1m31.074s (+0.014s)
3. Ducati ルカ・マリーニ 1m31.289s (+0.229s)
4. Aprilia アレイシ・エスパルガロ 1m31.385s (+0.325s)
5. Suzuki アレックス・リンス 1m31.477s (+0.417s)
6. KTM ブラッド・ビンダー 1m31.574s (+0.514s)

 まずそれぞれのテストで最速タイムを記録したライダーは、セパンではエネア・バスティアニーニ(グレシーニ)、マンダリカではポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ)となった。バスティアニーニは2021年型のドゥカティ・デスモセディチGPに乗っており、かたやポル・エスパルガロは最新のRC213Vでのタイムだ。

 マンダリカテストを最速で終えたエスパルガロだが、どうやらホンダは2022年に向けてかなりマシンを仕上げてきている様子だ。

 新型RC213Vは外観からしても前年までとの違いがハッキリと見て取れる。フロント側はヤマハ系のスタイル、リヤはドゥカティ系のスタイルとなっている。この新型マシンはマルク・マルケス以外のライダーでも競争力を発揮できるバイクを作るというホンダの試みが現れている。

 マシンの改善という面で、新型RC213Vが目指していたのはリヤのトラクション改善だ。そして、過去数年悩まされてきたこの問題は、実際に改善に向かっているようで、ライダーからは評価する声があがっている。

 ただ全てが順風満帆なわけではない。リヤエンドが改善される一方で、フロントエンドへの影響が出ているためだ。マルケスはセパンテストの段階では新型マシンでは理解が進んでいないこともあり、ブレーキングの強みを犠牲にしてしまっているとも語っていた。

 ただそれでもマンダリカテストに入ると、マルケスはパフォーマンスを改善。最終日には”何か”がまだ足りていないと認めつつも、速さがあったと語っている。

「ペースは良かった。うまく乗ることもできた。別のセットアップを試しても、良いペースで走ることができた。様々な空力パーツも試してみたけど、ラップタイムは近かった。ミディアムタイヤでも、ソフトタイヤでも、良いタイムが出せた」

「もっと必要なことがあるのは確かだ。まだ、このバイクにはスペシャルなフィーリングがない。でも、満足はしている」

 ラップタイムを楽に出せるというのは、全てのホンダライダーから聞かれている言葉だ。さらにエスパルガロは昨年11月の段階から新型が”より安全になった”と述べており、実際に路面コンディションの良くなかったマンダリカでも転倒は避けられた。

 マルケスは自身が2021年により多く勝利していた場合、2022年型の開発にホンダがこうした努力を注ぐことはなかっただろうとすら認めている。

 そうすればホンダは、これまでのようにひとりのスターライダーに頼る構図となるリスクを抱えることになっていたはずだ。今回ホンダはマシンに抜本的な改善を施すことを選んだが、そこにはマルケスが乗りこなせなくなる、というリスクも確かにあった。しかしどうやらホンダは、2022年型マシン開発においてそうしたリスクを回避することに成功したように思える。

 それはマンダリカ・インターナショナル・サーキットでのロングランにおける平均タイムにも現れている。マルケスが6メーカーでも最速の平均タイムを記録しているのだ。

【各メーカーのロングランにおける平均ペース順(マンダリカ)】

1.Honda 1m32.806s 10周平均(マルケス)
2. Suzuki 1m32.871s 10周平均(アレックス・リンス)
3. Yamaha 1m33.102s 16周平均(クアルタラロ)/ミディアムタイヤ
4. KTM 1m33.202s 16周平均(ミゲル・オリベイラ)/ミディアムタイヤ
5. Ducati 1m33.615s 17周平均(ジャック・ミラー)
6. Aprilia 1m33.468s 17周平均(マーベリック・ビニャーレス)

 もっともロングランにおける使用タイヤが全て判明しているわけではないため、状況はもう少し複雑ではある。

 クアルタラロとバニャイヤはミディアムタイヤのタイムとなっているが、クアルタラロはロングランは“悪夢“だったと話し、バニャイヤもベストな選択ではなかったと認めている。

■ヤマハの不安要素

 こうしたテストを通じて明らかになったことは、チャンピオン防衛のかかるヤマハがホンダの後塵を拝している、という点だ。言い換えると、ヤマハは“クアルタラロのみ”が速く走れるマシンを作っているということでもある。

 タイトル防衛に臨むクアルタラロは、これまでのところヤマハに対する不満を隠していない。特に以前から不満を表明していたエンジンに関しては、明らかに満足しておらず、ヤマハでの将来についてもオープンだと語るほどだ。

「正直に言って残念なのは、これだけエンジンを進化させる時間がありながら、何もないことだ」と、クアルタラロは言う。

「僕が理解できないのは、どのコースでも時速10kmは遅いことだ。ストレートが100mだろうと1kmであろうと最低時速10km遅く、時にはそれ以上なんだ。それが僕が満足できていない理由だ。僕が何度も繰り返していて、彼らもそれはよく分かっているはずだ」

 MotoGPは開幕戦を前にエンジンのホモロゲーションを受けると、そこで封印を受け、以後シーズン中の変更は行なえない。そのためクアルタラロは不満を感じているエンジンのままシーズンを通じて戦っていくことになる。

 さらにクアルタラロは予選を想定したアタックにも”限界”を感じていたとマンダリカテストでは言及。最終的に改善の糸口をつかみタイムも向上したが、タイトルを争いを目指す上では、非常に重要な点だろう。

 ヤマハにとって痛いのは、クアルタラロが孤軍奮闘している状況だ。チームメイトのフランコ・モルビデリは昨年まで乗っていた2019年型からの乗り換えで、まだ最適化できていない部分がある。さらにRNFヤマハのアンドレア・ドヴィツィオーゾもM1で速く走れるのは「クアルタラロだけ」とコメントするシーンもあり、現在もまだタイムを失っている部分があると言う。ルーキーのダリン・ビンダーはいわずもがなだ。

 つまりクアルタラロはヤマハの”ワンマン・アーミー”としてシーズンをスタートさせねばならないようなものだ。

■全員”速い”ドゥカティ。本命バニャイヤの存在に注目

 クアルタラロと対象的なのはドゥカティだ。2022年にドゥカティは計8台を送り込むことになっている。そして旧型マシンを使用するサテライトチームを含めた、多くのライダーが速さを発揮してきている。

 昨年ランキング2位となったフランチェスコ・バニャイヤは、タイトル有力候補のひとりと目されている。彼は2022年型のマシンについて”80%”の準備ができており、テストを通じて予選アタック向けの作業も進んだと語っている。

「エンジンも(2021年とは)違っている。それでここ数日はライディングスタイルの変更にも取り組む必要があった」

「最終的にはどうすればいいかを理解できたよ。テストでは走り込んで、210周もこなしたことですべてを理解することができた」

「それで1周を速く走る方法が理解できた。(ロングランの)ペースもOKだったんだけど、タイムアタックでは苦戦していたんだ。でも今日はすべてがクリアになって満足している」

「このマシンは昨年のモノよりもポテンシャルが高いと思っている。(テストで)旧型に乗ったわけじゃないけど、もっとポテンシャルがあると思うよ」

■2020年王者ジョアン・ミルを擁するスズキの状況は?

 これまでのところ、クアルタラロ/マルケス/バニャイヤの三つ巴のタイトル争いが実現しそうな感が漂っている。ただここに2020年に頂点に立ったスズキが加わってくるチャンスは十分にありそうだ。

 2022年シーズンに向けスズキもエンジンをアップデート。ジョアン・ミルもアレックス・リンスも、エンジンのパワーアップを認めており、ハンドリングも損なっていないとコメントしている。

「バイクは少し速くなったね。でもそれ以上に印象的だったのが、エンジンそのものだ」

「馬力をさらに引き出すのは簡単なことじゃない。そしてこのエンジンは、(スロットルにおいて)変わりないんだ。スロットルの開け始めのフィーリング調整には時間がかかることもあるけど、マレーシアとここでのテストでは本当に優れていたんだ」

 ミルはテスト最終日を食あたりで欠席するというアクシデントこそあったが、これまでスズキとしてタイムの上がり幅の小さかったソフトタイヤでの改善があったとも語るなど、全体的にかなり自信を持っている様子だった。

■KTMとアプリリア、それぞれの状況

 アプリリアは2022年に優遇措置の適用を受ける唯一のメーカーだ。昨年はアレイシ・エスパルガロがチームに初の表彰台をもたらすなど競争力をあげているだけに、今シーズンのパフォーマンスも気になるところだろう。

 アレイシ・エスパルガロは2022年にグランプリ優勝という夢を叶えることは、まだ”難しい”と認めている。ただ「これまで以上に近づいている」とも感じているようだ。曰く、マシンの変化は革命的なモノではないが、スリムになった車体はコーナーリングにおいて「信じられないほど良くなった」のだという。また、チャタリングの問題もマンダリカテストでは顕在化しなかった様子だ。

 彼らにとっての悩みはコーナーを思い通りに走れない状況……ヤマハも苦手としている集団下でのレースということになってくるだろう。

 一方でKTMも、2021年の不調からは脱したように見える。

 2021年シーズンは一貫性に欠ける面があったKTM。セパンテストはリヤのトラクションに課題が残り厳しいモノとなっていたが、マンダリカテストでは大きな改善が見られた。

 ブラッド・ビンダー(KTM )は11番手タイムだったものの、「昨年よりずっといい状態だ」と、自信ありげに語っている。

 なおKTMはスズキと同様に、予選での速さという点で課題を抱えている仲間でもあった。昨シーズン、ビンダーはQ1止まりのレースが10回もあったのだ。

 彼は新型RC16で、新品タイヤの利点をより使っていけるようになったことも指摘しており、チームメイトのオリベイラもKTM・RC16でのアタック方法を理解したと前向きに感じられるコメントを残している。

 ここまで各メーカーのプレシーズンテストにおけるマシンの開発具合を見てきたが、誰が“勝者“なのか?

 一見、ホンダは現段階でひとつ抜け出しているようにも見える。ヤマハはYZR-M1の短所をカバーするために、クアルタラロの才能に頼らざるを得ないだろう。ドゥカティとスズキはそれぞれまだ完全に手の内を見せておらず、KTMとアプリリアも再び上位に食い込んできてもおかしくない。

 6メーカーそれぞれの力が、どの程度このテストに反映されていたか……それは11月になればおのずと分かることだ。しかしMotoGPの2022年シーズンは、これまでで最も競争の激しいシーズンになってくるだろうという点は、確かだと言えそうだ。

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みんなのコメント

1件
  • まだまだテストだからね。
    普通に考えて ドゥカティ ペッコが本命。
    まぁ本番まで 手の内を見せないのは
    F1のメルセデス ルイスと同じ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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