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ほどよくイタリアン──新型マセラティ・グレカーレ・モデナ試乗記

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ほどよくイタリアン──新型マセラティ・グレカーレ・モデナ試乗記

新しいマセラティ「グレカーレ」は、日本にピッタリなプレミアムSUVだった! 鮮やかなカラーリングが目をひく、魅惑の1台に小川フミオが乗った。

イタリアの出自を大事に

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ドライビングが楽しめるSUVで、しかも、他人とはちょっと違う個性が欲しいなら、マセラティの新型グレカーレがイイ。全長4.9mのサイズは絶妙で、かつ走りがいい。2024年7月に乗ったグレカーレ・モデナは魅力的な1台だった。

マセラティがラインナップするSUVは、「レヴァンテ」(2016年)と、22年に登場した今回のグレカーレ。まだ現役のレヴァンテは、全長が5.0m少々とやや長く、ホイールベースも105mmほど長い。

操縦感覚もふたつのモデルでは結構異なっていて、グレカーレのほうがロールは抑えめ。誰が操縦しても“楽しい”と、思える操縦性をもっている。ただし個人的にはレヴァンテも捨てがたい。

グレカーレは、2.0リッターエンジンの「GT」と試乗したモデナ、そして3.0リッター6気筒の「トロフェオ」が日本で販売されている。GTが300psであるのに対して、モデナは少しパワーがあがり330ps(242kW)になる。450Nmの最大トルクは同一だ。

マセラティは、スポーツカーやスポーティなモデルづくりを身上としてきているだけあって、グレカーレ・モデナのエンジンも、凝っている。

発進時にはマイルドハイブリッドシステムのモーターでトルクを上乗せ。エンジン回転が上がるとターボが動くのだけれど、その前に電動でターボとおなじ働きをする「eブースター」が動く。つまり発進直後から高速まで、パワーが途切れないような仕掛けがしっかり盛り込まれているのだ。

実際、モデナを運転すると、「これが2.0リッターエンジンなのか!?」と、驚くほどのパワー感。“ドッカン”とパワーが出るのでなく、先述のとおり、アクセルを踏み始めたときから、いっきにトルクが出てきて、レッドゾーン近くまでそれが続く。

ちょっとない気持ちよさで、これをSUVで実現しているのだから、マセラティは本当におもしろいメーカーであると感心する。そういえば、マイケル・マン監督の映画『フェラーリ』(23年)でも、アダム・ドライバー演じるエンツォ御大が常に気にしているのはマセラティだ。

今はまったく違うベクトルを向いている2社だけれど、グレカーレ(トロフェオを含めて)を運転すると、オーナーシップは変わっても、周囲がマセラティの持つべき価値を強く意識しているからだろう。

足まわりの設定も、硬すぎずソフトすぎず。高速を走っていると、どっしりと安定したステアリングの感覚とともに、モデナへの信頼感が醸成されてくる。ドライブしている私がもつ期待に応えてくれる走りがとても嬉しく感じられる。

多くの操作がダッシュボードに上下2枚に並べられたモニター内に入ってしまっているのに、当初はとまどうけれど、使い勝手に応じてうまく分けてあるので、すぐ慣れる。

タッチボタン式のギヤセレクターは、後退と前進を繰り返さなくてはいけないようなシチュエーションを除けば、使い勝手は悪くない。その一番右側の「D」モードのボタンをもう一度押すと「M(マニュアル)」モードに入る。モデナは先に触れたとおり、高回転で最高に気持ちのよいエンジンを載せているので、Mモードはイイ。

Mモードに入れ、ステアリングコラムのパドルを操作してシフトアップを抑え、グーっと高めの回転域まで引っ張って走るのが、とりわけ私の好みにぴったりだった。ま、そういう楽しみかたもできるのが、大きな魅力である。

試乗したクルマは、「ローズゴールド・リキッドメタル」なる、なんだか“マセラティっぽいな”と、感じさせる明るい雰囲気の車体色。かつ、イタリア国旗の3色を使ったストライプがボンネットからルーフにかけて斜めに入れられていた。

マセラティではその3色のストライプを「トリコローレ・ファシア・リバリ」と、呼ぶ。リバリとは、軍服(ユニフォーム)に対する、より一般的な制服を意味したりするし、レースカーのチームカラーの意味でも使われる。

やっぱりマセラティは、イタリアの出自を大事にしたいということなんだろう。戦前からレースを続けてきたスポーツカーブランドが、今、最新技術でもって作りあげるグレカーレにも、同社のクルマづくりの伝統が根付いている。それは運転席に座って、1分もドライブするとすぐわかる。最高のモノづくりだからだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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