スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションは第2戦決勝日の5月4日に富士スピードウェイで定例記者会見を開いた。このなかでGTAの坂東正明代表が、EV(電気自動車)、水素燃料、水素エンジンなどの環境技術について、将来のスーパーGTにおける採用の可能性などについて語る場面があった。
記者からの質問は、「先日、FIAから新たな電動のGTカテゴリーが発表された。将来的なカーボンニュートラルを目指し、量産だけでなくGTカーでも電動化の動きが出てきているが、これに対してGTAはどう考えているか、ガイドラインのようなものはあるのか」というもの。
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これに対し坂東代表は、「参戦する3メーカー、トヨタ、ホンダ、ニッサンのなかでも、GT500に対するカーボンニュートラル化、そしてそのコストについては考えています」と現状を説明する。
坂東代表はEVや燃料電池車、そしてトヨタ自動車が開発しORC ROOKIE Racingを通じてスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookに参戦するカローラ・スポーツに搭載される水素エンジンなども例に出しながら、将来のスーパーGTが採るさまざまな可能性を説明したが、この先に日本の環境技術がどんな方向性に向かうのかを見極めながら、マニュファクチャラーとともに未来のGT像を作り上げていきたいとする意向を語った。
「この島国・日本が、国としてこれからどういうインフラ整備をしていくのか、その方向性も大事だと思っています。その方針に従う選択肢を、レースのなかでも見つけてやっていければと考えている」
坂東代表は、GT500の車両規則が概ね3年周期で改めるのが慣例となっていることから、まずは2024年に第一歩を踏み出し、前述の国の方向性を注視しつつマニュファクチャラーと協議を重ね、2027年に次のステップへ、そして2030年には「カーボンニュートラルに対してきちっと対応できるレースにしていきたい」という。
ただし、スーパーGTを構成するのはGT500に参戦する3メーカーだけではなく、FIA GT3規定のマシンを含むGT300クラスも無視できない存在となる。「GT500の15台についてはマニュファクチャラーのなかで話しがつくと思うが、GT300のGT3のことを考えると、ヨーロッパとの歩調を考えるといきなりEVというわけにはいかない」(坂東代表)からだ。
そのため、第一歩となる2024年については「まずはe-fuel、これから入っていきたい」とし、具体的にはエタノール配合のE10、E20といった燃料の採用を示唆した。
e-fuelとは二酸化炭素と水素の合成液体燃料をガソリン燃料やディーゼル燃料に混合して使用する新たな燃料。バイオ燃料としてエタノールを混合した液体燃料と機構は同じで、カーボンニュートラルが期待できる。
e-fuelが優れているのは工場で排出される二酸化炭素や再生可能エネルギーの水素を使用できること。二酸化炭素の排出と吸収が同じになるカーボンニュートラルが実現しやすく、現在の内燃機関を流用しやすいことから、次世代の燃料として各自動車メーカーが本格的に研究開発を進めている。
「いま、300kmレースの場合は2万5000リットル程度の燃料を使用している。これを、(2024年にはe-fuelとして)1社供給というところからスタートしたい」と展望を語る坂東代表。
その先については、前述のとおり国の方針を見守りながらさまざまな可能性を残している状態だが、コストの面の高騰を防ぐために、カーボンニュートラル化を目指す技術については「共通パーツのようなものとして扱う」可能性についても坂東代表は言及している。
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