ありふれた? 幻の1台がついに
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】ディテールも「ディフェンダー流」【もっとみる】 全167枚
text:Sho Tamura(田村 翔)
「ディフェンダーなら昔ウチにもあったよ。ありふれたワークホースだ。モデルチェンジしたの? あのままで良かったと思うけど」とイギリス人の知り合いは言う。
だが日本人の視点からから見ると、このランドローバーの「原種」はありふれた存在ではない。
ランクルやゲレンデでは満足できないマニア御用達の本格派。熱狂的なファンが一定数いる反面、販売台数は大して期待できず、正規輸入は様子見程度におこなわれてきただけ。
並行輸入されると即完売というマニアック、もしくは幻の1台だった。
ディフェンダーの72年ぶりの刷新はだからこそ、日英どちらの視点からも注目されている。
ちなみに72年というのは原初のランドローバーである1948年のシリーズIから数えてのこと。ずっとラダーフレームの上にアルミの箱(ボディ)を載せていたシリーズI~III、90&110、そして初代ディフェンダーという一連の流れは一括りにされている。
メルセデスGクラスやジープ・ラングラー、そして日本代表のジムニーが今なお頑なに守っている本格オフローダーの矜持であるラダーフレームを、新型ディフェンダーは捨てたのだ。
そこにはどんな意味があるのか?
ラダーなしも本気、転がっても平気?
新型ディフェンダーはモノコックボディを採用、しかもアルミ製、と聞いたとき「既存のプラットフォームの流用では?」と直感した。
ランドローバーのラインナップは、新型ディフェンダーを加えると実に7モデルにもなる。流用の精神なくして成立するはずがない。
ところがD7xという新型ディフェンダーの骨格は完全な専用設計だという。しかも一族の中では最も泥っぽい使われ方をすると想定し、これまでになく強度を高めているという。
ラダーを捨ててもなお、新型は本気のオフローダーとして作り込まれている?
その本気度を示すかのように、試乗会の冒頭で見せられたショートムービーでは007シリーズのBGMとともに現れた新型ディフェンダーが荒れ地で飛びまくる。
先方の担当者は飛んで着地しても壊れない点に感心したと言っていたが、それは映像屋の仕事だから裏で何しているかわかったもんじゃないだろう。
僕が驚いたのは、トップギアよろしく真横にグルンと一回転してしまうシーンだった。かつて転がってしまうCMでデビューした新型車があっただろうか?
「ディフェンダーとはこんなタフなヤツです」という作り手からのメッセージはなかなか強烈だった。
見た目はDNA検査不要 走りは?
先代ディフェンダーは5ドアの110と3ドアの90の2車種がメインだった。新型でもホイールベースのインチに由来する車名と車種構成は踏襲される。実際には新型のホイールベースは数字よりも長くなっているのだが。
日本市場に最初に導入されるのは110で、縦置きされるエンジンはインジニウム・ガソリンの2L 4気筒のみ。これまでのディフェンダーも4発(ディーゼル)が大多数だったので、イメージ的にはちょうどいいと思う。
スタイリングは一目でディフェンダーの子孫だとわかるものになっている。
絞られたキャビンと若干ふくよかな腰下。先代のボディは単なるアルミ板とリベットで補修できるくらいシンプルだったが、新型は現代的な色気が漂う。
近未来的だが、ちゃんと伝統に根ざしている。
これは傑作の匂いがする。
ひと目でシンプルだとわかるコクピットに乗り込み、ダッシュパネルから生えたシフトレバーを操作して走り出してみた。
想像していたよりはるかに静かで、操作系の感触も滑らか。まるで2トン・トラックのようだった先代とは雲泥の差がある。
それでも路面に対する軽快なタッチは先代とよく似ている。新型ディフェンダー、これはいいかも!
(後編につづく)
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みんなのコメント
これがおおむねディフェンダーファンの総意ですよね。
この新車は名前だけがディフェンダーで、過去の歴史ある当該車とは全くの別物ですよ。
それならいっそ新しく違う名前でこれを作って欲しかった…いや、作るべきでした。