驚くべき速さと、目を見張る美しさ。スーパースポーツカーは、このふたつの要素を兼ね備えた特別な存在だ。『オートスポーツweb 最新スーパースポーツカー試乗レポート』では、クルマ好きなら誰もが憧れる数々の至高のマシンの中から注目の1台をピックアップして、その走りの印象を伝えていきます。
ハンドルを握るのは、モータージャーナリストの吉田拓生さん。第7回目は、BMW新型8シリーズ グランクーペのトップグレード『BMW M850i xDrive グランクーペ』を取り上げます。
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「ムエタイの一撃キックを味わえる」見た目も走りもスーパーな傑作。マクラーレン720S/最新スーパースポーツカー試乗レポート
■セダンやSUVにはない、グランクーペ独特の色気とM8未満の過激さ
BMWの“M”といえばM Power、といえばM12エンジン、といえばケン・マツウラ? F2! orグランチャン! という連想をしてしまうモータースポーツファンも多いはず(?)。でも、本稿のMは現代のそれなのです。
車名がとっても長い。ビーエムダブリュー・エムハチゴーマルアイ・ エックスドライブ・グランクーペです。BMWはご存じの通り。『エム』がかつてのBMWモータースポーツ社で、現在のBMW M Gmbhが関わった証。
『850』は8シリーズの最高レベルのエンジンを搭載を表しています。1990年代の850や750は、5.0リッターのV12を搭載してました。
『i』は、かつてインジェクションをいち早く投入したことに因む伝統の一文字。『エックスドライブ』は4駆、『グランクーペ』は4ドアクーペシリーズの呼称となるわけです。
とはいえ、BMW M Gmbhが本気で手掛けたモデルはM3やM5といった手短な呼称となるので、今回取り上げるM850iはそこまでガッツリではない……というあたりがややこしい。
すでに、最上級のBMW M8グランクーペも2020年1月に日本デビューしています。
さて、M8といえば、モータースポーツファンにとっては現行8シリーズがデビューする前の2018年にFIA世界耐久選手権にデビューしたM8 GTEのベースとなったモデルと言ったほうがわかりやすいかも。
あちらは2ドアでしたが、グランクーペは2ドア比でホイールベースが205mm長い4ドアボディという違いがあります。
このクルマの特徴は、何といってもそのスタイリングにあります。低く伸びやかで、攻撃的。
これからはSUVの時代! もう4ドアセダンなんて時代遅れ! と言っていたオトナがオッと振り向く。しかもプレミアムでカッコイイ内外装なのに、とてもゆったりしたリヤシートがあり、極めつけはめっぽう速いこと。
4.4リッターV8ツインターボ・エンジンの最高出力は530psもあり、最大トルクは750Nm。これはスーパースポーツ並みのスペックであり、0-100km/h加速3.9秒というのはフェラーリF40と一緒です!
例えが古いけど、まあ超一流なわけです。しかも4駆なので少し路面が濡れていても、“その気があれば”バンバン踏める。
かつてスーパーカーに憧れた世代がそれなりにお歳を召して、スポーツカーは乗り心地も含めてちと辛い。SUVはフォーマルじゃないし、EVはまだ……。なーんてことを考えだしたら、もはや選択肢はお洒落な4ドアクーペしかない。
ちなみに最新のBMW自慢の装備であるハンズオフのACCもちゃんと付いています。すべてのいいとこ取り、こういうクルマあるんです。
■BMW M850i xDrive グランクーペ諸元
車体全長×全幅×全高5085mm×1930mm×1405mmホイールベース3025mm車両重量2090kg駆動方式AWDトランスミッション8速ATサスペンション前/後ダブルウイッシュボーン/マルチリンクブレーキ 前/後ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスクタイヤサイズ 前:後前:245/35R20 後:275/30R 20エンジン種類V型8気筒DOHCツインターボ総排気量4394cc最高出力390kW(530ps)/5500rpm最大トルク750Nm(76.5kgm)/1800ー4600rpm車両本体価格1715万円
■Profile 吉田拓生 Takuo Yoshida
自動車雑誌の編集部を経て、2005年からフリーのモータージャーナリストとして活動をスタート。自動車、ヨット、英国製品に関する文章を執筆。現代のスポーツカーをはじめ、1970年以前のヒストリックカー、ヴィンテージ、そしてレーシングカーの試乗レポートを得意としている。
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