ついに日本の国民車、「カローラ、お前もかっ」とSUV化された話題のカローラクロスに試乗した。試乗車は1.8Lエンジン+モーターのHVとともに用意される1.8Lガソリン車の最上級グレードとなるZの2WDである。
最初に、カローラクロスの価格の話をしてしまうと、カタログ的には199.9万円からとあるのだが、実際に一般ユーザーが手にいれるべきグレードはGからで、ガソリン車は224万円から、HVは259万円からと考えたい。ガソリン車の最廉価モデルのG /Xは装備、オプションの選択が制限され、一般ユーザー向けとは言いにくいからだ。
2022年末、南房総に開業するアジア初の会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」の気になる中身
しかし、トヨタのSUVは国内ではランドクルーザー、プラドから、RAV4、ハリアー、C-HR、ライズ、ヤリスクロスと多彩な品揃えに思えるが、RAV4やハリアーと、ライズ、ヤリスクロスのあいだの、日本の道にジャストなサイズかつ車格感あるモデルは、実はスタイリッシュクロスオーバーのC-HRだけと、そのモデルレンジだけ、手薄だったとも言える。よって、クラス的にC-HRに近い新型カローラクロスが、そこをしっかりと補充したことになる。
ここでほぼ同クラスのカローラクロスとC-HRのボディサイズを比較してみると、カローラクロスは全長4490×全幅1825×全高1620mm、ホイールベース2640mm。対してC-HRは全長4390×全幅1795×全高1550mm、ホイールベース2640mmと、ややカローラクロスが大きいものの、ホイールベースはまったく同じなのである。後席重視の場合は、C-HRにない後席エアコン吹き出し口を完備する点にも注目である(C-HRは外観から想像するより後席居住空間は広い)。
また、立体駐車場に入庫できるのは全高が1550mmに抑えられたデザインコンシャスかつ低全高パッケージが特徴のC-HRとなる。パワーユニットに関しては、ガソリン車の場合、カローラクロスが1.8LのNA、C-HRは1.2Lターボという大きな違いがある。6MTが用意されるのはC-HRのほうだけである。
C-HR
どちらもアクティブなライフスタイルに合うクロスオーバーSUVということで、気になる人は気になる最低地上高はカローラクロスが160mm、C-HRは一般的な乗用車と変わらない140mm。走破性という意味では、よりSUVテイストの強いカローラクロスが上回る(と言っても本格SUVは200mm前後なのだが)。尚、Uターンや幅寄せ時に威力を発揮する最小回転半径は両車ともに小回り性に優れる5.2mとなっている(SUVとしては)。
さて、大径18インチタイヤを奢るガソリン車のZグレード、2WDの走りはどうか。結論から述べれば、想定外にいいのである。出足から濃厚かつスムーズでトルキーなエンジンフィールを味わえ、乗り心地はちょっと前のトヨタの高級車並みの上質でしなやかなでおおらかなタッチを示すのだ。意地悪く段差や、わざわざ荒れた路面、ゼブラゾーンを走らせても、高いボディ&足回り剛性としなやかな足回りが見事にいなし、フラットな快適感を保ったまま走破してしまうのだから、驚くしかない。特に低中速域で、そうした印象が強い。
しかも、1.8L NAのガソリン車にして、車内の静かさも絶品である。アクセルの踏み初めなど、エンジンの鼓動がやや目立ち、こもる場面もあるにはあるが、いったん、スピードに乗り、巡航状態に入れば(市街地走行でも)実に静か。それはもう、1クラス上のクロスオーバーSUVに乗っているかのような気分さえ味わせてくれるのだ。ちなみに80km/hでのエンジン回転数は約1400回転と低く、それもまたエンジン主体のノイズの発生低減に貢献しているはずである。高速道路で試したACC(アダプティブクルーズコントロール)の作動も文句なしだった。
動力性能的にはZグレードで1560kgという車重に140ps、17.3kg-mというごく普通のスペックとなるパワーユニットの組み合わせだから、格別に速いはずもないのだが、一般道、高速道路ともに、必要十分以上の加速力をスムーズに示してくれるから、まったく問題なしだ。もしパワー不足を感じれば、メーターリングがレッドに変わるパワーモードをONにすればいい。低いギヤを保ったままのようなアクセルレスポンスとより強い加速力が得られるという具合である。
それはそうと、カローラにして、装備も素晴らしく、もはや上級車並みである。先進運転支援機能のトヨタセーフティセンスに含まれるACCは全車速追従型で渋滞追従機能、停止保持機能を備えているし、電子パーキングブレーキはギヤをPレンジに入れればセットされ、アクセルを踏めば解除される全自動タイプ。さらに、信号待ちや渋滞時、スーパーマーケットの駐車場ゲートなどでうれしいオートブレーキホールド機能、そして車線変更時の安心・安全に直結するブラインドスポットモニターまで用意しているのだから最高である。これで、オートブレーキホールド機能にエンジンを切っても機能が維持されるメモリー機能がついていれば完璧なのだが・・・。
ちょっと気になったのは、前方視界である。斜め前方視界は三角窓とドア付けドアミラーの位置関係が絶妙で、極めて良好。右左折も安心だ。が、カローラクロスをSUVとして見ると、身長172cmの筆者が運転席を最下端にセットした時に、前方視界はボンネット右側の膨らみが見える程度で、ボンネット全体が視野に入らないのは残念。運転視界にボンネットが入ることは、ギリギリの悪路を走る際に威力を発揮する車両感覚のつかみやすさという意味で、本格SUVのお約束でもあるからだ。とはいえ、サイドガーニッシュがドア付けのため、雨の中や悪路を走ったあとも、サイドシルが汚れにくく、乗降時に衣服を汚してしまうこともない点は、SUVとして合格である。
また、十分な容量を確保しているラゲッジルームの開口部に約130mmの段差があるのも、重い荷物の出し入れ(持ち上げ量)には不利。大型犬などのペットを乗降させるにも、足を引っかけかねないので適さない。さらに後席を格納した時に、約180mmの大きい段差ができるのも、シートアレンジ性、大きな荷物の積載性として不満が残る。
とはいえ、そうした事項を上回る魅力が、200万円台前半から手に入るコンパクトクラスのクロスオーバーSUVとは思えないほどの上質極まる乗り心地や車内の高級車並みの静かさであり、ミニRAV4を思わせる堂々感あるエクステリアデザインだったりする。
なお、首都高速60%、一般道40%を走行した際の実燃費はまずまずの10.8km/Lであった。距離を走れば走るほど、それ以上に伸びそうな気もする・・・。
最後にお薦めグレードだが、買い得感が強いのはS。装備的に十分であり、Zの18インチタイヤに対して17インチタイヤとなり、タイヤの迫力はやや後退するものの、乗り心地面でさらに有利になるからだ。
価格はガソリン車で240万円、HVで275万円となる(いずれも2WD)。キャラクターとしては悪路をガンガン走るようなクルマではないから、駆動方式は2WDでいいと思える。
トヨタ・カローラクロス
https://toyota.jp/corollacross/
写真・文/青山尚暉
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