日本グランプリを2度制覇した伝説のレーシングドライバー、ガンさんこと黒沢元治。当代随一のドライビングテクニックと分析能力を誇るガンさんが世界中のクルマを評価する! ガンさんがクルマに求める「ドライビングプレジャー」は備わっているのか? BMW M4に乗ってもらった!
試乗車:BMW M4カブリオレ
日常ユースは優れるがスポーティに走らせると課題多し! 【黒沢元治のドライビングプレジャークエスト:アウトランダーPHEV編】
縦に長いキドニーグリルを採用したことでも話題の4シリーズ。そのハイパフォーマンスモデルがM4シリーズだ。480馬力/550N・mを発生する直6を採用したM4クーペのほか、今回の試乗車が積む510馬力/650N・mを発生するエンジンのCompetitionグレードをラインアップ。また、Competitionには2WDと4WDがあり、カブリオレは4WDのみ。ただし、DSCオフでは2WDモードも選択可能。
1500万円近い価格が安く感じられるほどの走り
今回試乗するクルマはBMW M4のオープンモデルだ。Mのシリーズであり、さらにグレード名にコンペティションと付いていことからも、ハイパフォーマンスであることは疑いようがない。
それでいてカブリオレとは、じつに個性的なモデルである。
まずはドライブモードをコンフォートにしてスタート。カブリオレゆえにどこまで剛性が出せているのか、注目しつつ走り出す。駐車スペースから荒れたサーフェスのアクセス路を軽く流すと、軽く衝撃を受けた。明らかに素晴らしく高いボディ剛性を持っていて、じつに質感が高いのだ。そのままワインディング本線へと入り、本格的なインプレッションへと移る。この日は雨こそ上がっていたものの、路面の6割はウエットで霧も出ている条件であったことを付け加えておく。
加速した瞬間に驚かされたのはエンジンのトルクとパワーだ。4WDのカブリオレがゆえに重く、のちに聞いた1930kgの車体を軽々と加速させていく。3リッターの直6ターボで、パワーが510馬力、トルクが650N・mというスペックだが、これはボクが1969年に日本グランプリで乗ったレーシングカー、日産R382の6リッターV12に匹敵する数値であり、技術の進歩を実感した。
直6ゆえにBMW伝統のシルキー6、と言いたいところだが、流石にこれだけの出力を得るためには1気筒あたりの爆発エネルギーも相当であり、そこまでのスムースな回転ではなかった。ただし、それは過去のシルキー6と比較した話であり、荒っぽさや不快な回転振動があった訳ではない。
サスペンションは下りコーナーへの進入で減速しても、体感としてはノーズダイブがゼロのようなイメージで反力が発生し、シッカリと4輪に荷重が乗った状態で非常に安定したコーナリング姿勢を保つ。ドライブモードもあれこれと変更したが、ハイパフォーマンスカーと考えればコンフォート性も高く、ダンパーも含めて最高の完成度であり、正直サスにこれ以上、手を加える余地はない。
ここまで走行し、これだけのエンジントルクをかけ、アップダウンの激しいタイトなコーナーが続く上に路面の荒れたワインディングを走行しても、タイヤの接地性や車体の動きに気になる点が出ないことからも、やはりボディ剛性が素晴らしく高いことがわかる。確かに1930kgというかなりの車重にはなっているが、それが十分に剛性に寄与しており、よくぞカブリオレでここまで作り上げたと開発陣を素直に褒めたい。
ブレーキについても触れておこう。タッチもよく、踏力に対する減速度はリニアで、また、少なくとも今回のワインディング走行においては温度に対するブレーキ性能の変化も見られなかった。これはブレーキ自体の性能も優れているのだが、先に述べた反力の発生するサスペンション、およびそれをシッカリと働かせることができる高いボディ剛性により、4輪に十分荷重が乗った状態で減速できることも理由である。
こうしたパフォーマンスを誰がオープンボディのリヤシートで楽しむのかという、4座やカブリオレという、商品企画に対する疑問はあるが、少なくとも走りは素晴らしい完成度であった。
この内容で1400万円台は間違いなくバーゲンプライスだといえよう。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております ※価格は掲載当時のものとなり、現在は1500万円~となります
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