現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ

ここから本文です

最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ

掲載
最高峰の「エンターテイナー」 アストン マーティン・ヴァンテージへ試乗 大アップデートで665psへ

AMG由来の4.0L V8ツインターボは665psへ

最新のアストン マーティン・ヴァンテージは、510psから665psへ増強。包括的なアップデートを受け、大幅に能力が引き上げられた。英国価格は16万5000ポンド(約3168万円)から。納車は、2024年5月に始まっている。

【画像】最高峰のエンターテイナー アストン マーティン・ヴァンテージ 競合のクーペと比較 DB12も 全144枚

スタイリングは、僅かに勢いを増した。2005年に発売された、V8ヴァンテージのDNAも受け継いでいる。同じ家系にあることは、誰の目にも明らかだ。

全幅は1981mmとワイド。アルミニウムの押出材と鋳造材を用いたシャシーは、最新のDB12とベースを共有する。グランドツアラーではなくスポーツカーとして、ホイールベースは2692mmへ短縮され、2シーターで全長も4496mmと短い。

現在のアストン マーティンの量産車では、最も走りを追求したモデルといえる。だが、
動的能力の開発を率いたサイモン・ニュートン氏は、サーキットカーではなく、ロードカーだと強調する。つまり、ハードコア仕様の登場も考えられる。

シャシーは、ねじり剛性が高められた。フロントの縦方向の部材は強固に接合され、前後に薄いパネルを装備。フロントサスペンション上部のブレースは、軽量・高剛性化。リアにも、荷室を横断する形でブレースバーが追加された。

エンジンは、メルセデスAMG由来の4.0L V8ツインターボ。ZF社製の8速ATが組まれ、ファイナルレシオは5%ショートに。後輪駆動で、電子制御のリミテッドスリップ・デフを備える。

パワーステアリングは電動。精度を高めるため、ステアリングコラムの固定部分は、振動やノイズを吸収するカップリングが省かれた。

ドライバーの心を聴覚的にも深く刺激

ダブルウィッシュボーン・サスペンションは、コイルスプリングにビルシュタイン社製アダプティブダンパーの組み合わせ。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツS5で、サイズは前が275/35 R21、後ろが325/30 R21と太い。

インテリアは一新。DB12にも実装される、タッチモニターとソフトウエアが備わる。とはいえエアコンやオーディオには、実際に押せるハードボタンを維持。メーター用モニターには、高精細なグラフィックが描かれる。

シフトインジケーターが小さすぎると指摘したら、間もなく修正予定だという。既知の課題として、理解しているそうだ。

内装素材は高品質。ステッチも美しい。ドアハンドルが少し変形するようだったが、これもいずれ改善されるだろう。

運転姿勢は適正。シートは快適でサポート性が高い。着座位置は低いものの、ウインドウの下端が高く、車幅感覚は掴みにくい。少し高めに、座面を調整するのが良いようだ。ペダルの間隔は広く、ステアリングホイールの調整域は大きい。

665psを公道で解き放つことは難しい。V8ツインターボは7000rpmまで回転し、6000rpmで最高出力を生み出す。2000rpmから81.4kg-mの最大トルクが放たれ、圧巻の中間加速を披露する。

サウンドも、従来以上に勇ましく聞き惚れる。量産車の中で、最も美しい咆哮を奏でる1台だといっていい。近年では数少ない、ドライバーの心を聴覚的にも深く刺激するロードカーだ。ちなみに、燃費は8.2km/Lがうたわれる。

しなやかな乗り心地 秀抜な高速域での安定感

サーキットでは、7000rpmという低めのレブリミットで、小まめな変速が必要。ファイナル比が短く、レッドゾーンで頭打ちにもなりがち。1L当たり166psの高出力ユニットだから、低回転域にはターボラグもある。

それでも適度に積極的に、滑らかに疾走できるスタイルが好ましかった。1段上のギアを選び、回転を引っ張りすぎず、豊かなトルクを活かしながら。

ブレーキは標準がスチール製ディスクで、直径は前が400mm、後ろが360mm。ペダルの踏み応えはリニアで、制動力と同時に抵抗感も増していく。

オプションのカーボンセラミック製ディスクを選ぶと、4枚で27kgも軽量化できる。ニュートンの話では、乗り心地やブレーキの感触は同等ながら、路面温度への適応力が広がるそうだ。

乗り心地は、全般的にしなやか。平滑な路面では、若干シリアスさが足りないかもしれない。スポーツ・モードは特に、未舗装路も許容するだろう。

そのかわり、細かな入力も大きめのうねりも巧みに吸収し、非常に快適。敏捷性は高く、落ち着いた姿勢制御で、乱れ気味の舗装でも不安なくコーナリングできる。

アストン マーティンは後輪操舵システムを試したそうだが、期待通りの結果を得られないと判断。そのかわり、ロックトゥロック2.27回転のクイックなレシオを与えた。

直接比較してみたいところながら、フェラーリ・ローマより切り始めの反応はややスロー。前後の重量配分は50:50で、フロントエンジン・リアドライブのレイアウトと相乗し、高速域での安定感は秀抜だ。

予想しやすい積極性 公道との相性が優れる

ダンパーのモードを問わず、操縦性は自然。ステアリングホイールには、望まないキックバックが排除されつつ、少量ながら確かなフィードバックが伝わってくる。

ドライブモードは、ウェットからトラック(サーキット)までの5段階。ステアリングは2段階、ダンパーは3段階から切り替わる。試乗したスペインのモンテブランコ・サーキットは、アスファルトが平滑とはいえずスポーツ+が適していた。

スタビリティ・コントロールは、ボタンの長押しでオフに。トラクション・コントロールは9段階で、1はほぼスリップなし。8は、スモークたっぷりのドリフトを許容する。9では完全にオフになる。

ある程度のアクセルオンまでは、定常的なアンダーステア。侵入時にブレーキを引きずりながら、フロントノーズをラインに乗せていくのが望ましい。ステアリングは負荷に応じて重みが増し、リアの流動性が高まる。

正しく扱えば、イン側の縁石の衝撃をなだめながらスムーズに旋回。コーナー途中からテールスライドさせて脱出できる、予想しやすい積極性を備える。

ただし、ニュートンのロードカーだという主張どおり、公道との相性の方が優れる。充足感も高い。恐らく、サーキットをホームとするヴァンテージも追加されるはず。

最高峰のエンターテイナー・スポーツクーペ

大幅なアップデートを受けたヴァンテージ。トヨタGR86やフォード・マスタングのように、ドラマチックで情感豊かな運転体験を享受できる、現代ではレアな1台だ。

メルセデスAMGに在籍していた、トビアス・ムアース氏がCEOのままであれば、一層ハードコアに仕上がっていた可能性はある。このヴァンテージは、彼の退任後に仕上げられた。その結果、公道向きの滑沢なシャシーを獲得できたのではないだろうか。

「アストン マーティンは、常に呼吸しているべきです」。とニュートンは話す。実際、ドライバーが息を合わせたいと思える、一体感の高いモデルが導かれた。

快適なシートへ座って、シャシーの一挙手一投足を、エンジンのパワーとトルクの放出を、堪能するのが良いだろう。2024年最高峰の、エンターテイナー・スポーツクーペが誕生した。

◯:圧巻のパワーとサウンド オールドスクールなFRのバランス 力強く魅惑的なスタイリング
△:低回転域での僅かなターボラグ

アストン マーティン・ヴァンテージ(欧州仕様)のスペック

英国価格:16万5000ポンド(約3168万円)
全長:4495mm
全幅:1980mm
全高:1275mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:8.2km/L
CO2排出量:274g/km
乾燥重量:1605kg
パワートレイン:V型8気筒3892cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:665ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2000-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

こんな記事も読まれています

レクサスLBX 詳細データテスト インテリアの質感は高い 意外に硬い乗り心地 モアパワーがほしい
レクサスLBX 詳細データテスト インテリアの質感は高い 意外に硬い乗り心地 モアパワーがほしい
AUTOCAR JAPAN
【アルピナGTファミリーの最新モデル】 2024年末に導入予定 BMWアルピナ B3/B4GT
【アルピナGTファミリーの最新モデル】 2024年末に導入予定 BMWアルピナ B3/B4GT
AUTOCAR JAPAN
F1エンジン搭載ポルシェ 「1万rpm」まで回る軽量911ターボ 公道OKな最新レストモッド
F1エンジン搭載ポルシェ 「1万rpm」まで回る軽量911ターボ 公道OKな最新レストモッド
AUTOCAR JAPAN
フェラーリ製V8をお手頃価格で! マセラティ・グランスポーツ UK中古車ガイド お安いだけの「理由」アリ?
フェラーリ製V8をお手頃価格で! マセラティ・グランスポーツ UK中古車ガイド お安いだけの「理由」アリ?
AUTOCAR JAPAN
アメリカンな魅力 × ドイツ勢に並ぶ洗練性 7代目 フォード・マスタングへ試乗 ハイテクなマッスルカー
アメリカンな魅力 × ドイツ勢に並ぶ洗練性 7代目 フォード・マスタングへ試乗 ハイテクなマッスルカー
AUTOCAR JAPAN
フェラーリの全ては12気筒から始まった 「12チリンドリ」日本初披露
フェラーリの全ては12気筒から始まった 「12チリンドリ」日本初披露
AUTOCAR JAPAN
メルセデス・ベンツが快適でBMWがスポーティ? 最新 Eクラス vs 5シリーズ プラグインHVを比較試乗(2)
メルセデス・ベンツが快適でBMWがスポーティ? 最新 Eクラス vs 5シリーズ プラグインHVを比較試乗(2)
AUTOCAR JAPAN
「高級小型スポーツ」がパワーアップ! 直6ターボで480馬力 新型BMW M2クーペ、8月生産開始
「高級小型スポーツ」がパワーアップ! 直6ターボで480馬力 新型BMW M2クーペ、8月生産開始
AUTOCAR JAPAN
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
いよいよステーションワゴン登場! BMW i5 ツーリングへ試乗 万能道具感は先代を超えず?
AUTOCAR JAPAN
まるで「One-77」の弟分! アストンマーティン「ヴァンテージ」は155馬力もアップするマイナーチェンジで「汗臭さ」がなくなった!?
まるで「One-77」の弟分! アストンマーティン「ヴァンテージ」は155馬力もアップするマイナーチェンジで「汗臭さ」がなくなった!?
Auto Messe Web
何を積む?「荷台」が広げる可能性 イネオス・グレナディア・クォーターマスターへ試乗 エンジンはBMWの直6
何を積む?「荷台」が広げる可能性 イネオス・グレナディア・クォーターマスターへ試乗 エンジンはBMWの直6
AUTOCAR JAPAN
最新 Eクラス vs 5シリーズ 「半世紀」続くメルセデス・ベンツとBMWのライバル関係 プラグインHVを比較試乗(1)
最新 Eクラス vs 5シリーズ 「半世紀」続くメルセデス・ベンツとBMWのライバル関係 プラグインHVを比較試乗(1)
AUTOCAR JAPAN
ポルシェを超えた? 10分で310km分を充電 英ロータス、新型EVで市販最速に
ポルシェを超えた? 10分で310km分を充電 英ロータス、新型EVで市販最速に
AUTOCAR JAPAN
BYDはEVだけじゃない! シールU PHEVへ試乗 ライバルはティグアンやRAV4 サスが柔らかすぎる・・
BYDはEVだけじゃない! シールU PHEVへ試乗 ライバルはティグアンやRAV4 サスが柔らかすぎる・・
AUTOCAR JAPAN
コルベット C1の翌年に生まれた異端車 カイザー・ダーリン 161(1) フェンダーへ滑り込むドアは唯一?
コルベット C1の翌年に生まれた異端車 カイザー・ダーリン 161(1) フェンダーへ滑り込むドアは唯一?
AUTOCAR JAPAN
ガソリン車と同等のお値段で! シトロエンe-C3へ試乗 「ぴったり充分」長く使えるイイモノ感
ガソリン車と同等のお値段で! シトロエンe-C3へ試乗 「ぴったり充分」長く使えるイイモノ感
AUTOCAR JAPAN
ポルシェ928似のヘッドライト 知られざるフィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(2) シャシー技術の高さへ驚く
ポルシェ928似のヘッドライト 知られざるフィアット125 ヴィニャーレ・サマンサ(2) シャシー技術の高さへ驚く
AUTOCAR JAPAN
【FFと4WDの比率は8:2】 好調な台数推移の都会派SUV ホンダ新型ヴェゼル試乗
【FFと4WDの比率は8:2】 好調な台数推移の都会派SUV ホンダ新型ヴェゼル試乗
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2999.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
DB12の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2999.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村