2016年5月28~29日、ドイツのニュルブルクリンクのグランプリコースとオールドコースを合わせた25kmのコースで、GT、ツーリングカーが参加する伝統の24時間耐久レース「ADACチューリッヒ24時間耐久レース」が開催された。
■出場チームと公式予選
今回は158台が出場し、57台がリタイヤ。完走できたのは101台と過酷なレースだった。総合優勝を争うSP9(FIA GT3)クラスでは、新開発のメルセデスAMG GT3勢、同じく新開発のBMW M6 GT3を準備したセミワークスチーム勢、そしてセミワークス・チームと、カスタマーチーム混成のアウディR8 LSMなど37台が顔を揃え三つ巴の戦いを展開した。
アウディR8 LMSはディフェンディング・チャンピオン。BMWは創立100周年という記念すべき年にあたるため、車番100、22番、23番を始めとする強力なM6 GT3を送り出した。しかし数の上ではメルセデスAMG GT3が圧倒している。ポルシェは、多くのクラスに出場するカスタマーチーム以外に、ワークスチームとしてチーム・マンタイ・レーシングが投入した911 GT3 Rをサポートしている。
これらドイツ勢以外に、イギリスからベントレーGT3、アストンマーティン・バンテージV8(SP8クラス)のワークス勢、ザクスピード・チームとニッサンGTアカデミーチームのニッサンGT-R GT3、SP-PROクラスのトヨタGAZOO・トムスのレクサスRC F GT3などが加わっている。
日本勢では、トヨタGAZOOチームが大部隊を編成し、SP-PROクラスのRC F(V8エンジン)と、2.0Lの8ARーFTSエンジンを搭載したRCで参戦。SP2Tクラスには未発売のクロスオーバーSUV、C-HRレーシングを送り込んでいる。ただ、RC、C-HRは市販モデル・ベースで、チーム監督は市販モデルの開発責任者、メカニックは社員テストドライバーが担当するなど、あくまでもクルマと人を鍛えることが目的だ。またクルマの準備も遅れ、十分な耐久テストができないまま決勝レースに臨んでいた。
また、C-HRの出場するSP2Tクラスには韓国車のヒュンダイi3がワークス参戦し注目される。またアジア勢としてはトヨタ・タイランドのカローラ・アルティス(東南アジア市場専用車)も出場していた。
トヨタGAZOOチームと同様にニュルブルクリンク24時間レースの常連となったスバル・STIチームはWRX STIでSP3Tクラス優勝を狙う必勝体制だが、今回のプロジェクトは準備段階で大きく躓いている。というのは、車両規則の変更によりエンジンパワーを20psダウンさせる必要があり、チームは軽量化、重量バランス、空力性能の改善で前年を上回るタイムをたたき出そうと目論んでいた。だが、開発中のシェイクダウンテストで2回も大クラッシュし、ドイツに向けてマシンを輸送する直前まで事実上の新たなクルマの作り直しが強いられていた。従って当初予定の事前実戦テストとなるVLNレースを見送り、決勝レース直前のVLNレースに参戦しただけで、十分なテスト走行ができないままだった。
さて、公式予選では、トップグループは予想通りメルセデスAMG、BMW、アウディが入り混じった結果となったが、M6 GT3がポールポジションを獲得した。日本勢ではニッサンGT-R GT3のアカデミーチームが10番手、レクサスRC Fは25番手だった。
またスバルWRX STIは、目標であったラップタイム9分切りは達成できず、地元のアウディTT RS2に0.8秒遅れの2番手となった。今回はSP3Tクラスは6台の出場でWRX STIのライバルはこのLMSエンジニアリングのTT RS2のみだが、実力ではこのアウディがやや上回っている。ただ、このチームは今回ロシア人、アメリカ人のゲストドライバーを起用しており、このあたりが弱みとなっている。
■決勝レース
5月28日、20万人をはるかに超える大観衆の見つめる中、曇り空の下で決勝レースの火蓋が切られた。まずポルシェのマンタイ・チームの1台は2周目にクラッシュ。トップを争うM6 GT3とメルセデスAMG GT3の激しい鍔迫り合いでレースは始まったが、それもつかの間。レース開始後、40分ほどで空が黒くなり、激しい雨と雹(ひょう)がコースのあちこちを襲った。
コーナーの入り口でいきなり激しい雹に打たれたクルマは次々にコースアウト。スバルのカルロ・バンダム選手が操るWRX STIはコースアウトしたクルマとガードレールのぎりぎり1台分のスペースをかろうじてすり抜けたのは奇跡的だった。
他のコーナーでも大量の雹が降り、スリックタイヤの各車両はつぎつぎにコース上にストップしてしまった。このため主催者はレースを中断し、コース各所で身動きが取れない多くの車両をジープで牽引したり、コース上に積もった氷の塊を清掃するなどの事態となった。天候が変わりやすいことで有名なニュルブルクリンクでもこのような大量の雹が降るのは異例の事態で、大混乱を招いた。
レースは約3時間中断し、夜7時20分に再開された。この時点では激しい雨が降っている状態でのレース再開となった。しかし日が暮れると雨は止み、コースはドライに。夜半から明け方にかけて、各車に次々とトラブルが発生する。トヨタGAZOOではRC-Fは異常振動が発生し、修理のために時間を費やした。またRCはトランスミッションのトラブルでその後は長時間の修理作業を強いられ、結果的にはRCはリタイヤ、RC Fは何とか完走した。C-HRはレース途中でガス欠を起こし、トレーラーに牽引されてピットに戻るという事件もあったがメカトラブルは発生せず、クラス3位でレースを終えている。
またアウディのセミワークス・チームは、上位を争うはずのR8 LMSがクラッシュに巻き込まれるなどしてリタイヤ。かろうじて2台が最終的に8位に滑り込むのがやっとで、失望すべき結果に終わっている。一方、1台生き残っていたマンタイ・レーシングのポルシェ911 GT3Rは19時間を経過した時点でメカトラブルのためにリタイヤした。
BMW M6 GT3の1台はターボ・トラブルで大きく遅れ、期待の100号車は他社との接触により大破してリタイヤ。当初の目論見ははずれ、上位入賞の望みは絶たれてしまった。最終的に唯一生き残った23号車が1周遅れの5位となっている。
その結果、メルセデスAMG GT3勢が上位を独占し、チーム同士の激戦を展開した。上位2チームは23時間を過ぎて最後の燃料給油のタイミングによる勝負となり、給油を遅らせた29号車が最終ラップまでトップを守ったが、2番手の4号車が僅差で追走。なんと最終ラップで勝負をしかけて逆転。総合優勝を果たした。24時間レースで、1位と2位の差は5.7秒という激戦であった。最終的には1~4位をメルセデスAMG GT3が独占するという予想だにできない結果に終わっている。
■気になるスバルWRX STIは?
スバルWRX STIは、ウエットコンディションの第2スティントでクラストップのアウディTTRS2を抜いたが、その後は逆に追撃を受ける形になり、一時は差を詰められる場面もあった。しかし安定したラップタイムを刻んだWRX STIが抜かれることはなかった。さらに終盤になってアウディTT RS2は他車と接触してコースアウトし、そのままリタイアした。
WRX STIはレース終盤にアンダーカバーがはずれ、ガムテープで修理するという想定外のアクシデントはあったものの、終盤に追撃されるプレッシャーはなく、2年連続のSP3Tクラスの優勝を遂げることができた。今回のレース前には性能目標が達成できず、いささか消化不良の面もあるが、SP3Tクラス連覇を達成できたことは幸いであった。
日本勢では、GTアカデミーチームのニッサンGT-R GT3が総合11位となり、日本車のトップ。スバルWRX STIは総合20位で2番手という結果だ。そしてトヨタGAZOOチームのRC F GT3が24番手となっている。
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