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【なぜ?】ノート・クロスオーバー登場 日産がまたも「ノート」に頼ったワケ

掲載 更新 74
【なぜ?】ノート・クロスオーバー登場 日産がまたも「ノート」に頼ったワケ

SUV キックスだけでは戦力不足

執筆:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)

【画像】どんなモデルをラインナップ?【5種の日産ノートを比べる】 全201枚

編集:Taro Ueno(上野太朗)

ノートがSUV風のオーテック・クロスオーバーを設定した。

この背景には3つの理由がある。

まずはこの数年間で、SUVの人気が急上昇したことだ。

15年ほど前までは、国内の小型/普通乗用車の新車販売台数に占めるSUVの割合が10%以下だった。それが現在は25%前後まで上昇している。

SUVの中でもとくに高い人気を得ているのはコンパクトな車種だ。

トヨタ・ヤリス・クロス、ホンダ・ヴェゼル、トヨタ・ライズなど、1.5L以下のエンジンを搭載するSUVの販売が急増している。

日産もコンパクトSUVとしてキックスを用意するが、2021年上半期(4月から9月)の登録台数は、1か月平均にすると約2500台だ。

中堅水準だが、ヴェゼルの4900台、ヤリス・クロス(ヤリスとGRヤリスを除く)の9000台に比べると大幅に少ない。

そこで日産としては、コンパクトSUVの戦力を強化する必要があり、ノート・オーテック・クロスオーバーを開発した。

なぜ「ノート」ベースで登場?

ノート・オーテック・クロスオーバーが開発された2つ目の理由は、SUVの多様性だ。

新型車を開発する場合、通常ではボディを新たにつくる必要がある。例えばノートのクーペやセダンを開発するには、大幅な設計変更が求められる。

ところがSUVのカテゴリーになると、いろいろなクルマづくりが可能だ。

キックスのような4WDを用意しないシティ派から、ランドクルーザーやジムニーのような悪路向けの車種まで、SUVの性格は多岐にわたる。

そしてメーカーにとってとくにメリットが大きいのは、既存の車種をベースに、最小限度の変更でSUVを開発できることだ。

最も分かりやすい車種として、レガシィ・アウトバックがある。

1995年に2代目レガシィ・ツーリングワゴンをベースに、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を200mmに高めて、ワイドなフェンダーなどを装着した。

日本ではレガシィ・グランドワゴンの名称で販売されて、ヒット作になっている。

今はレガシィ・ツーリングワゴンが廃止され、レガシィ・アウトバックは独立した車種になったが、コンパクトSUVのXVはインプレッサスポーツをベースに開発されている。

外装パーツを加えて最低地上高を200mmに高めただけで、販売は堅調だ。

1か月平均で約1500台が登録され、インプレッサ(スポーツ+G4)の1100台を上まわる。

昨今の自動車メーカーは、電動化を始めとする環境技術、自動運転や安全装備に対する投資が大幅に増えた。

車両の開発費用は縮小を迫られ、日産も既存のノートを有効活用できるノート・オーテック・クロスオーバーを開発した。

エース「ノート」頼みになるワケ

ノート・オーテック・クロスオーバーが開発された3つ目の理由は、日産がホームグラウンドとされる国内よりも海外市場に重点を置いた結果、国内の売れ筋車種が減り、開発費用も掛けられない状態になったことだ。

日産の国内における新車販売状況を見ると、軽自動車が約40%を占める。

そこにノート(オーラを含む)とセレナの登録台数を加えると、国内で売られる日産車の70%に達する。

つまり今の日産の国内販売は、デイズ+ルークス+ノート+セレナの4車種だけで支えているわけだ。

ほかのエクストレイル、リーフ、スカイライン、エルグランドなどは、すべて「残りの30%」に片付けられてしまう。

そうなると、売れる見込みのあるデイズ、ルークス、ノート、セレナをいかに活用するがが重要になる。

スカイラインやエルグランドは、もはや手を加えても、売れ行きを伸ばすのが困難な状況にあるからだ。

ただしデイズとルークスは軽自動車だから、メーカーや販売会社の得られる1台当たりの粗利も少ない。

売れ行きをさらに増やしても、儲けはあまり伸びない。

その点でノートは、軽自動車に比べると、販売の増加がもたらす経済的な効果が大きい。

しかも現行ノートは国内専用に開発され、なおかつノーマルエンジンは廃止した。

国内市場において、高価格のeパワー(ハイブリッド)だけで相当に売れ行きを伸ばさないと収支があわない。

そして価格が高いから、好調に売れると儲けも効率良く増やせる。

そこでノートは、ノート・オーラ、ノート・オーラ・ニスモ、ノート・オーテック・クロスオーバーという具合に「ノート・シリーズ」を矢継ぎ早に充実させている。

表現を変えるとノート・オーテック・クロスオーバーの投入は、日産の国内販売状況を反映したものといえそうだ。

「シーギア」の二の舞にはならない

以上のようにノート・オーテック・クロスオーバーが登場した背景には、SUV市場の急速な拡大、開発や製造面におけるSUVの高効率、効率を追求せざるを得ない日産の事情がある。

ただし、ノート・オーテック・クロスオーバーが好調に売れるか否かは分からない。

先代ノートも2017年にSUV風のシーギアを設定しながら、売れ行きが伸び悩んだからだ。

もっとも先代ノートは2016年にeパワーを追加しながら、2017年に登場したシーギアは、当初eパワー搭載車を用意しなかった。

2018年に加えたが、ノート自体の発売から6年を経過しており、開発や売り方の失敗もあった。

また先代ノート・シーギアは、最低地上高を拡大したものの、外観のカッコ良さはいま一歩だった。

その点で新しいノート・オーテック・クロスオーバーは、2WDの最低地上高が145mm、4WDでも150mmにとどめながら、外観はノート・シーギアよりもバランスが良くSUVらしさも濃厚だ。

ちなみに最低地上高を200mm前後まで高めると、悪路のデコボコを乗り越えやすくなるから、本格的な悪路に入り込むことも可能になる。

そのためにはシャシーや足まわりの本格的な強化も必要になるから、ノート・オーテック・クロスオーバーは145-150mmに抑えた事情もある。

価格は理にかなっているワケ

ノート・オーテック・クロスオーバーの価格は、2WDが253万7700円、4WDは279万6200円とされ、ベース車のノートXに比べて35万900円高い。

それでもノート・オーテック・クロスオーバーには、ノートXが9万9000円でメーカーオプションに設定するアダプティブ機能を備えたLEDヘッドライトやLEDフォグランプも標準装着され、実質差額は約25万円に縮まる。

この金額で外観がSUV風にドレスアップされ、タイヤ、ショックアブソーバー、スプリング、電動パワーステアリングの設定なども変更されるから、割安とはいえないが納得できる価格設定だろう。

ノート・シリーズを急速に充実させるのは、日産が以前に比べて国内市場へ真剣に取り組むようになった証ともいえる。

ただし魅力的な仕様を次々に投入されると、既に購入したユーザーとしては「もっと早く教えてくれれば良かったのに……」という気分にもなる。

とくに今は半導体やワイヤーハーネスなどの不足により、納期が伸びている。

納車直後に追加されると満足感も下がるので、なるべく早めに案内すると親切だ。

そしてこれからも日産は、既存の車種や仕様を有効に活用する。

もしかするとセレナ・クロスオーバー、次期エクストレイル・ハイウェイスターなどが登場する可能性もあるだろう。

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みんなのコメント

74件
  • キューブ、ティーダ、マーチなどのコンパクトカーだけでなくラティオなどの小型セダンや更にはSUVまでノート頼りか…

    何でもかんでもノートで補完できると思ってる日産のマーケティング部隊は一度全員クビにした方が良い。
  • 海外モデルにはベースになりそうな車種が沢山あるのに国内モデルにはチカラが入りませんね日産。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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