日産フーガといえばトヨタクラウンと並んで国産高級セダンを代表する車種でした。しかし登場からはや11年が経過した現行型は、パワートレインや先進運転支援装備などに古さを隠し切れないのが現状です。果たして次期型は登場するのか?今回はそんな日産フーガを徹底レビューしましょう。
セドリック・グロリアから引き継いだ高級セダンの看板
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ミニバンやSUVの台頭により、シェアが減少しているセダン。かつては各自動車メーカーの高級車の代名詞といわれていましたが、現在ではそのポジションすらもミニバンに譲っています。
日産フーガは日産の高級セダンとして君臨したセドリック/グロリアに代わる存在として2004年に初代モデルが登場しました。最高出力333psを発生する4.5L V型8気筒エンジンを搭載し、タイプSと呼ばれるスポーティーモデルには高級セダンながら19インチの大径タイヤを装着するなど、従来モデルよりスポーティーな面を強調した新感覚のセダンであることをアピールしました。
そして2代目となる現行型フーガは2009年に登場、すでに11年も販売されているロングセラーモデルとなっています。ここでは、日産フーガはいったいどのようなモデルなのか徹底解説します。
ロングノーズで古典的な美しさを持つFRセダン
2009年に登場した現行型フーガは多くの新技術を採用しつつ、セダンの本質的な魅力である「走・美・快」の最高レベルを実現する、日産のフラッグシップとなる高級セダンとして開発されました。
外観デザインは、ロングノーズでFR(後輪駆動)車ならではの美しいプロポーションを採用。低いノーズや張り出したフェンダーに合わせた20インチという大径タイヤによってしっかりと地面をとらえた安定感のある姿勢が特徴です。
触り心地にもこだわった豪華な室内空間
インテリアは、人が感じる触り心地の良さを解析し、従来の自動車素材を超える触り心地を実現しました。また、形状や装飾、操作感まで吟味し、統一感と高級感を高めたパワーウィンドウやインパネスイッチ、そして新デザインのアナログ時計を採用しています。
最上級グレードの370VIPに標準装備されたプレミアムインテリアは、やわらかい触感と自然な風合いを実現したセミアリニン本革や、人が心地良いと感じるやわらかさと滑らかさを追求したソフィレスなど、専用の素材を多く使用し、見た目の華やかさと五感で感じる質の高さを追求しています。さらに職人が純銀粉を手ですり込む特殊加工で、木目を華やかに際立たせた銀粉本木目フィニッシャーを採用するなど、豪華な室内空間が自慢です。
高剛性・低振動ボディによる優れた走り
現行型フーガは、進化した高剛性・低振動ボディにより、世界トップレベルの操縦安定性、乗り心地、静粛性を目指しました。新開発のリアサスペンションは、インシュレーターの剛性を低くすることでロードノイズを大幅に軽減。また、リンク配置の最適化により、荒れた路面での突き上げ感を大幅に改善するとともに全車速域で高い操縦安定性を実現しています。
発売当初、搭載されていたエンジンは2種類。まずは最高出力333ps、最大トルク363Nmという高出力、高トルクを両立した3.7L V型6気筒エンジン。VVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)を採用し、ドライバーの意のままの加速性能と優れた実用燃費、さらに排出ガスのクリーン化も実現しています。そしてもう1つが最高出力225ps、最大トルク258Nmを発生する2.5L V型6気筒エンジンです。
組み合わされるトランスミッションはマニュアルモード付7速ATです。2速以上のすべてのギアでロックアップ領域を大幅に拡大、燃費の向上とダイレクトな加速感を実現。さらにナビゲーションやレーダーからの情報をもとに、カーブ、交差点、前車との距離など、走行環境に応じて変速タイミングとロックアップ領域を最適化、燃料カット頻度を増加させることでエコドライブをアシストする「ナビ・レーダー協調制御」を新採用しています。また、アクセルペダルの操作に応じてペダルの反力を強めることで、必要以上にアクセルペダルを踏みすぎたときに生じるエンジン回転数の上昇と燃費の悪化をドライバーへ事前に知らせて抑制するシステムも採用。ECOモードを選択時に作動し、多くの運転シーンにおいて5~10%程度の燃費を改善するとしています。
すぐに追加された日産独自のハイブリッド搭載モデル
2010年10月には、日産独自の1モーター2クラッチ方式のハイブリッドシステム「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」を採用し、19.0km/L(10・15モード)というコンパクトカー並みの低燃費とダイレクト感のある爽快な走りを実現したフーガハイブリッドを追加しました。
ハイブリッド用に効率を高めた3.5LV型6気筒エンジンに組み合わされるハイブリッドシステムは、駆動と発電を1つのモーターで行い、エンジンとモーターはトルクコンバーターを介さずにトランスミッションに直接接続する、軽量で高効率なハイブリッドシステムです。2つあるクラッチの1つでモーターとエンジンを完全に切り離して、エンジンを停止させた静かで効率の良いモーター走行(EVモード)を可能としました。このEVモードでの走行を、高速走行を含む運転領域まで拡大し、かつモーター走行を積極的に行うことで、クラストップの低燃費を達成しています。
ハイブリッドに組み合わされるマニュアルモード付電子制御7速ハイブリッドトランスミッションは、エンジンとモーター出力特性にあわせて変速特性を最適化し、息の長い伸びやかな加速フィーリングも実現しています。
2015年のマイナーチェンジでインフィニティバッチを付ける
2015年2月にフーガ/フーガハイブリッドはビッグマイナーチェンジを行います。内外装の変更に加えて、世界最高レベルの安全性能を実現するなど、装備面も強化し、歴代の中で最もラグジュアリーでダイナミックなモデルに進化しています。
フーガに採用されているデザインや先進技術などは日産が世界に誇る高級車「インフィニティ」の開発で培われたものです。海外ではインフィニティとして販売されているフーガは、このタイミングで日産マークに代えてインフィニティバッチを装着しました。そして2017年の一部改良では、遮音ガラスをフロントウィンドウガラス、フロントドアガラス、リアドアガラスに採用することで、静粛性を向上させています。
2019年に一転して日産マークに回帰
しかし、2019年の一部改良で再びフーガは日産マークを取り戻します。この一部改良では、走行中に前方の車両や障害物、さらに静止した歩行者も検知し、衝突被害の「軽減」や、追突の「回避支援」を行う「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」を全車標準装備するなど運転支援システムをアップデートしています。「ニッサン インテリジェント モビリティ」を具現化する先進安全技術のさらなる進化に伴い、ブランドバッジをインフィニティから日産へ戻したというのが日産の主張ですが、スカイライン同様に国内ユーザーからのインフィニティバッチへの反発もあったのではないでしょうか。
やや時代に取り残された感の強いフーガ、次期モデルは登場するのか?
今や欧州や北米の自動車メーカーが発売している高級セダンですら、2L直列4気筒ターボエンジンが主流となっています。そんな中で大排気量の3.7L V6エンジンを搭載ということだけでも、フーガはやや時代に取り残されている感があります。
運転支援システムにおいても、車両本体価格が500万円以上という高価格車ながら、日産の最先端の自動運転技術「プロパイロット」が搭載されていないことなどは、モデルライフが長いからという言い訳は通用しないでしょう。
搭載するパワートレインや運転支援システムを中心に、時代に取り残された感のあるフーガは、現状ではなかなか積極的におすすめできるモデルとはいいづらい状況です。2021年6月に行われた記者発表ではフーガの弟分にあたるスカイラインの次期モデル凍結という報道を日産は否定しました。果たしてフーガもスカイラインのように次期モデルが用意されるのでしょうか。
■フーガ価格表
グレード
駆動方式
WLTCモード燃費(km/L)
車両本体価格
250GT
2WD
10.2
502万7000円
250VIP
545万5581円
370GT
9.2
534万6000円
4WD
8.3
556万6000円
370GTタイプS
2WD
8.7
595万5400円
370VIP
9.2
639万4981円
ハイブリッド
12.8
654万9400円
ハイブリッドVIP
723万981円
※記事の内容は2021年7月時点の情報で制作しています。
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