タント改良新型に ファンクロスを新設定
執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
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10月3日、ダイハツは軽乗用車の「タント」および「タント・カスタム」を改良、また新たに「タント・ファンクロス」を設定して発売した。
タントは、いわゆる「スーパーハイト系」ワゴンのルーツ的存在のモデルだ。
初代は2003年に発表され、その後もフルモデルチェンジのたびに軽自動車初となるピラーインドア「ミラクルオープンドア」や、両側パワースライドドアを採用するなど、多くのユーザーから好評を集めている、ダイハツの基幹モデルだ。
現行型は2019年に発表された4代目で、ダイハツの新世代クルマづくり「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」の第1弾として、良品廉価な商品として発売された。
前述のように、タントの登場以降、スズキからはパレット(その後、スペーシアに世代交代)、ホンダからはNボックス、三菱からはeKスペース(およびeKクロススペース)、そして日産からはデイズ・ルークス(現行型はルークス)と、現在、軽自動車を生産しているメーカーは、すべてスーパーハイト系のワゴンを設定し、そのほとんどが各社で最も売れている軽自動車となっている。
しかも、ここ数年は登録車も含めた販売ランキングでトップに座り続けているのは、ホンダNボックスだ。
その牙城に迫るべく、ダイハツはタントの改良をおこない、新たなバリエーションとなるタント・ファンクロス(以下、ファンクロス)を導入した。
では、ファンクロスを中心に、改良されたタントの概要を紹介していこう。
個性際立つ外観 ファンクロスとカスタム
ファンクロスの「クロス」は、クロスオーバーに由来している。
したがって、そのエクステリアは、アウトドアシーンに調和する、アクティブ感とタフさを表現したスタイルとされている。
具体的には、ユニークな形状のヘッドランプ、タフさを表現したフロントグリルやバンパーは専用のデザインだ。
とくに前後のバンパーは、ボディカラーだけでなくブラックも用いて力強さも感じさせ、また下部はアンダーガード風のデザインとされて、クロスオーバーSUV的なテイストを強めている。
ボディサイドには幅広のブラックモールも装着され、バンパー下部のアンダーガード風部分とデザインが揃えられている。
また、レジャーシーンで活躍しそうなルーフレールも装備されており、エクステリアはきわめてアクティブ感にあふれている。
タント・カスタムも、上質で迫力あるスタイルに進化した。
エンジンフード、フロントフェンダー、ヘッドランプ、フロントバンパーなどのフロントまわりを中心に、立体感と車両のワイド感を強調したエクステリアとされている。
ボディカラーには、新色が追加された。
タントでは、サンドベージュメタリック、2トーンカラーのホワイト×アイスグリーンとホワイト×サンドベージュメタリックを新設定し、ライトカラーで親しいイメージを強化した。
タント・カスタムでは、クールバイオレットクリスタルシャインとクロムグレーメタリックを新設定し、上質な印象を強化している(一部オプション)。
内装 「ファンクロス」はアウトドア志向
ファンクロスでは、インテリアの基本デザインはノーマルのタントと変わらないが、エアコンの吹き出し口やドアトリムなどにオレンジの刺し色が入れられており、なかなか良いアクセントになっている。
シートはタフトに採用されているようなカモフラージュ柄で、タフさを表現している。
ミラクルオープンドアなどタントの利便性を継承しながら、アウトドアでのさまざまなシーンで活躍できるよう専用の装備を採用している。
たとえば、シートの表皮は撥水加工のフルファブリックを採用し、リアシートバックには防水加工を施して、キャンプや釣りなどで汚れた荷物や濡れた道具を置いても手入れをしやすくしている。
ラゲッジルームには夜間の荷物積みおろしに役立つランプをデッキサイド右側と天井に標準装備。
また利便性の高いUSBソケットをリアシートの右側に1口標準装備して、ラゲッジルーム側からも使いやすくしている。
タント・カスタムでは、ブラック基調の室内に深みのあるブルーをアクセントカラーとして配色し、レザーの面積を増やしたシート表皮やメッキの加飾により、シャープで緻密な印象をインテリアで演出している。
パワートレイン 燃費はライバルより優位
シャシーやパワートレインに関しては、基本的に大きく変わってはいないが、4代目となる現行型タントから展開されているDNGAの高い基本性能と安全性能をを継承している。
パワートレインのラインナップは従来どおり。
0.66L(正確には658cc)の直3 DOHCの自然吸気エンジンとターボ付きエンジンを設定し、最高出力と最大トルクは前者が52psと6.1kg-m、後者が64psと10.2kg-mを発生する。
組み合わされるトランスミッションはCVTのみで、駆動方式は2WD(FF)と4WDが全グレードで用意されている。
また、エンジン制御の最適化により燃費性能を向上させた。
FFの自然吸気エンジン搭載車は、WLTCモード燃費で22.7km/Lを実現している。
同クラスのライバルでは、スペーシアが22.2km/L、N-BOXが21.2km/L、eKスペースとルークスが20.8km/Lだから、その燃費の良さが分かるだろう。
安全性能においては、ダイハツの予防安全・運転支援機能である「スマートアシスト」を全グレードに標準装備。
「もしも」の事故を防ぎ、「いつも」の運転を安心サポートする。
ユニーク装備 ラゲッジルームや使い勝手
ユニークな装備としては、(ノーマルの)タントもファンクロスも共通のものだが、上下2段式のデッキボードがあげられる。
これは、脚を立ててラゲッジルームにセットすれば、荷物を床下と上の二段で積むことができ、日常の買い物からアウトドアのレジャーまで、幅広いシーンで活躍しそうだ。なお、上段の耐荷重は20kgとなっている。
デッキボードを上段の状態でリアシートバックを前に倒せば、フラットで広いラゲッジスペースを実現できる。
さらに、このデッキボードは取り外してテーブルとしても使用可能だから、キャンプなどのアウトドアレジャーでけっこう役に立ちそうだ。
また、ラゲッジルーム側からもリアシートのスライドが可能なレバーを新設し、ラゲッジルームの使い勝手を向上している。
さらに、メーカーオプションとなるが、進化した9インチ・スマホ連携ディスプレイオーディオを採用。
エアコンやマルチメディアなどの操作ができる音声認識機能を搭載し、利便性を向上している。
アップル・カープレイでワイヤレス接続にも対応し、HDMIソケットも追加設定しているので、再生できる映像の種類を拡大している。
福祉車両も人気 フレンドシップシリーズ
タントには、福祉車両のフレンドシップシリーズも設定されている。
これは、国内の福祉車両(車いす移動車・昇降シート車・回転シート車・運転補助装置付き車・送迎車)において、タント・ウエルカムターンシート/ウエルカムシートリフト/スローパーの合計が2021年暦年の車名別新車販売台数で第1位に輝いているほどの人気モデルなのだ(ダイハツ調べ)。
そんなフレンドシップシリーズも今回、同時に一部改良が施された。
スローパーのXグレード以上にはフロントベンチシートを採用し、フロントセンターアームレスト(ボックス付き)を標準装備して使い勝手の良さを向上させた。
ウエルカムシートリフトの前後2モード昇降機能で、従来の昇降位置切替えスイッチをなくし、ドアの開口に合わせて前後昇降位置が自動で切り替わることで利便性を向上させた。
また、ウエルカムシートリフトの助手席にラクスマグリップをオプション設定し、ユーザーの選択の幅を拡大している。
気になる価格は? 138万6000円から設定
主なグレードと消費税込みの車両価格は、タントはL(FF/ノンターボ)の138万6000円からXターボ(4WD/ターボ)の177万1000円。
タント・カスタムはX(FF/ノンターボ)の178万2000円からRS(4WD/ターボ)の199万1000円。
タント・ファンクロスは、ファンクロス(FF/ノンターボ)の172万1500円からファンクロス・ターボ(4WD/ターボ)の193万500円となっている。
フレンドシップシリーズは消費税非課税となるが、ウエルカムターンシートL(FF/ノンターボ)の144万5000円からウエルカムシートリフト・カスタムRS(4WD/ターボ)の215万円となっている。
月間販売目標台数は、1万2500台。
2022年1月から8月の販売台数は5万5732台。
改良前とはいえ1か月平均は6967台だったから、今回の改良とファンクロスの追加で、タントは販売台数の大幅なアップを目論んでいる。
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